豊田中央研究所が開発した3件の技術が、米国の「R&D World Magazine」が主催する、世界的研究機関や企業が開発し過去1年に実用化された製品や技術のうち最も優れた100件を選出して表彰する「2020 R&D100 Award」を受賞した。
「2020 R&D100 Award」を受賞した3件の技術は、以下の通り。
① Liイオン電池監視IC用パワーデバイス(MOSFET/*)
– 受賞カテゴリー:IT/Electrical Category
– 受賞タイトル:
Deep Sub-Micron Process MOSFETs with Maximum Gate Voltage of 280 V for Li-ion Battery Management IC
<技術の概要>
少数のICチップで、電池の充放電状態を高精度に管理できるデバイス技術を開発(図1)。層間絶縁膜をゲートに拡張することで、監視ICにおいて世界初となるゲート耐圧280VのMOSFETを実現、サイズ1/3、監視電池セル容量1.2倍のICが可能とした。この技術は、2020年2月発売のトヨタ・ヤリスに搭載された。(デンソーと共同開発)
* MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field-effect Transistor
図1. 開発したLi電池監視IC用MOSFET
② HV用RC-IGBT(*)
– 受賞カテゴリー:IT/Electrical Category
– 受賞タイトル:Lower Power Loss RC-IGBT for Hybrid Electric Vehicles
<技術の概要>
ハイブリッド車のPCU小型化を実現するパワーデバイス低損失化技術を開発(図2)。3次元シミュレーションによるチップ構造最適化およびHe照射による欠陥導入を用いて、従来、車載用大容量チップでは困難であったRC-IGBTの低損失化を実現し、デバイスサイズの25%減を達成した。同技術は、2020年2月にトヨタ・ヤリスに採用された。(トヨタ自動車、デンソーと共同開発)
* Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor
図2. 開発した RC-IGBT
FWD(Free Wheeling Diode)は、IGBTのON/OFF切り替え時に逆電流をバイパスする役割。IGBTとFWDを一体化したデバイスがRC-IGBT。
③レーザクラッドバルブシート
– 受賞カテゴリー:Mechanical/Materials Category
– 受賞タイトル:Cobalt-free Laser-clad Valve Seat in Fuel-flexible Hybrid Electric Vehicles
<技術の概要>
量産可能なフレックス燃料対応レーザクラッドバルブシート技術を開発(図3) 。100%エタノールに対しても耐食性・耐摩耗性に優れる合金を設計したことに加え、製造工程での面欠陥計測技術を開発し、世界初の量産化を可能にした。同技術は、2019年9月発売のブラジル向け車両に採用された。(トヨタ自動車と共同開発)
図3. 開発したレーザクラッドバルブシート用合金
■R&D100 Award:https://www.rdworldonline.com/finalists-for-2020-rd-100-awards-are-unveiled/