NEXT MOBILITY

MENU

2024年1月11日【IoT】

TIER IV、CESで新自動運転プラットフォームの提供開始を発表

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オープンソースの自動運転ソフトウェアを先導するTIER IV(ティアフォー)は1月11日、自動運転システム開発用のリファレンスプラットフォームとして「Edge.Auto」を新たに公開。個別のハードウェアコンポーネントから統合化された自動運転システムまで複数のソリューションの提供を開始する。また、これに併せてCES2024では、パートナー各社のソリューションと組み合わせた複数の実演展示を行う。

 

このEdge.Autoは、ティアフォーがこれまでに培ってきた自動運転技術を基に、利用実績のあるセンサやコンピュータと各種ソフトウェアツールを組み合わせることで、最短で自動運転システムの開発に取り組めるリファレンスプラットフォーム。

 

ティアフォーが提供する新製品「Edge.Auto」

 

各種ハードウェアコンポーネントはオープンソースで提供されるセンサドライバやAutowareに含まれるソフトウェアモジュールを介して動作。用途に応じて個別のハードウェアコンポーネントから、統合化された自動運転システムに至るまでの複数の単位構成を選択することができる。

 

また、Edge.Autoにて提供される各ソリューションは、ティアフォーの既製品であるPilot.Auto(自律系プラットフォーム)やWeb.Auto(開発運用系プラットフォーム)と組み合わせて利用することができる。

 

これによりユーザーは自動運転システムの開発に必要なソフトウェアやハードウェアの選定、評価、検証を効率化し、独自の自動運転ソリューションを速やかに構築することができるようになる。

 

Edge.Autoで提供されるソリューションの概念図

 

なおティアフォー代表取締役社長CEO兼CTOの加藤真平氏は、「Edge.Autoを新たに製品として追加することにより、個々のコンポーネントから統合化された自動運転システムまで、自動運転に資する様々なソリューションを提供できるようになります。

 

今後もお客様の課題に対して3つのプロダクト(Pilot.Auto、Web.Auto、Edge.Auto)を組み合わせたソリューションを提案し、自動運転の社会実装を一層加速させていきます。

 

また、Edge.Autoを活用して、共にティアフォーのお客様やAutowareユーザーにソリューションを提供するパートナー企業も継続して募集し、プラットフォームをさらに充実させていき、プラットフォームパートナー各社と連携し、サポート可能なデバイス製品の種類の拡充や、動作可能なアプリケーションの充実化を目指します」と述べている。

 

システムへの搭載ソリューション群は以下の通り

 

新たに開発した8.3MPの解像度をもつC3カメラ

 

車載カメラ
120dB相当のダイナミックレンジを有する車載品質のカメラ製品群となる。2024年中に発売予定のC3カメラを含め、2.5MPから8.3MPまでの解像度ラインナップを提供する。

 

複数のレンズオプションにより、先進運転支援システム(Advanced Driver-Assistance Systems:ADAS)や自動運転(Autonomous Driving:AD)などの車載用途だけでなく、監視やロボティクスを含む様々なアプリケーションに利用できる。

 

またUSB接続で車載カメラを利用するための変換キットや、認識アプリケーションの開発をすぐに開始できるエッジパーセプション開発キットも提供している。

 

センサフュージョンシステム
センサフュージョンを使って高度なパーセプションの開発をサポートするソリューション。オープンソースのツール群と導入ドキュメントにより、センサ間のキャリブレーションや同期など、多くのノウハウが必要となる開発項目を標準でサポートしている。センサやECU(Electronic Control Unit)は、複数のオプションから用途に応じて選択することができる。

 

GMSL2TM to 10 Gigabit Ethernet変換モジュール

 

GMSL2TM to 10 Gigabit Ethernet変換モジュール
ADIのGMSL2(Gigabit Multimedia Serial Link generation 2)は、自動車業界で実績のあるSerDesソリューションであり、様々な自動化アプリケーションに於いて信頼性、強固性、安全性を高く保つことが評価されている。

 

GMSL2を活用したインターフェース変換モジュールを使うことで、最大8台のカメラから映像データを取得し、これらのストリームを10ギガビット・イーサネットに変換することができる。

 

PTP(Perception Time Protocol)によるLiDARなどのデバイスとの同期機能のほか、画像データへのタイムスタンプ付与や、FPGA(Field Programmable Gate Array)によるタイミング・ユニットを介して制御される個々のシャッター・タイミングなどの機能があり、産業用ロボットなどのアプリケーションに必要な多くの認識技術に適している。

 

ユーザーフレンドリーな設計により、ブラウザのインターフェースから直感的に操作し、設定を管理することができ、高度な認識処理が必要とされる幅広い自動化エンド・アプリケーションのシステム価値を高めることを目指して2024年に発売を予定している。

 

ティアフォーが開発した電気電子アーキテクチャ(EEA)と自動運転システム

 

AI Pilot
ハードウェアとソフトウェアが統合化された自動運転システム。2023年10月にGLP ALFALINK相模原においてレベル4自動運転の認可を取得しており、ユーザーは同様のシステムを導入することで、レベル4水準の自動運転サービスを開発運用することができるようになる。

 

 

Edge.Autoプラットフォームパートナー各社からのコメントは以下の通り

 

Ability Enterprise President Frank Chang
ティアフォーの車載カメラ技術のパートナーとして、Edge.Autoプラットフォームが自動運転開発のための優れた最先端のソリューションとして発表されたことを祝福します。

 

ADLINK CEO Jim Liu
ティアフォーとのパートナーシップを通して、最先端の車両ハードウェアソリューションであるEdge.Autoプラットフォームを提供し、センサフュージョンとエッジパーセプションコンピューティングの最前線をリードしていけることを嬉しく思います。ティアフォーと協力し、自動運転技術の革新を推進していきます。

 

Analog Devices Automotive Cabin Experience Senior Director Mieu-Ngan Pang
GMSLTMは、リアルタイムでの認識、高度な分析、次世代の知的自動システムに不可欠な最適化を可能にするための高帯域幅、低遅延のビジョン・センサデータ転送のニーズに対応しています。ADIとティアフォーの技術を活用して共同開発された「GMSL2TM to 10 Gigabit Ethernet変換モジュール」は、高度な産業用自動プラットフォームの迅速かつ容易な開発を可能にします。

 

Connect Tech Chief Product Officer Rob Callaghan
先進的なAIハードウェアプロバイダーとして、Connect Techは常に自律性のための新しいソリューションを可能にすることを目指しています。Connect Techとティアフォーのパートナーシップは、このイニシアティブの素晴らしい例であり、両社で次世代の自動運転の定義化に共に取り組んでいます。Connect Techの認識ハードウェアとティアフォーの車載センサやEdge.Autoプラットフォームを組み合わせることで、開発者は最先端の技術にアクセスでき、車両の自律制御の開発を加速できます。この継続的なパートナーシップがエッジAIにもたらす機会に非常に期待しています。

 

Hailo VP of Automotive Yaniv Sulkes
Hailoはティアフォーと協力して、先進的な自動運転ソリューションを共同で推進することを誇りに思っています。Hailoの先進的なAIプロセッサーを使うことで、Edge.Autoプラットフォームのユーザーはインテリジェントビークルのための高性能かつ省エネルギーの認識ソリューションの開発ができるようになります。

 

Hesai Technology Vice President of APAC Business Wei Zhang
自動運転業界の最前線にいるティアフォーに、当社の高品質なLiDARセンサを提供できることを嬉しく思います。当社のセンサを使うことで、ティアフォーは自動運転車両の認識の精度と信頼性を高く保つことができ、安全でスマートな交通手段がある未来を可能にします。ティアフォーとHesai Technologyが協力することで、業界にさらなるイノベーションをもたらし、移動手段にさらなる変革をもたらすと信じています。

 

Innoviz CEO兼共同創業者 Omer Keilaf
OSSを活用した自動運転の分野での主要なグローバルプレーヤーであるティアフォーと密に協力できることを光栄に思います。当社のAutomotive-Grade InnovizTwo LiDARセンサがティアフォーの自動運転プラットフォームに統合されることを大変嬉しく思います。また、Innovizの革新的なソリューションとティアフォーの自動運転プラットフォームが、幅広いお客様に大きな利点をもたらすと確信しています。緊密な協力関係を継続し、共に成功を重ねていくことを楽しみにしています。

 

RoboSense Executive President Mark Qiu
RoboSenseとティアフォーとのパートナーシップは、自動運転業界における前進の一歩です。RoboSenseのMシリーズLiDARをティアフォーのEdge.Autoプラットフォームに統合することで、先進的な車両インテリジェンスを動力とする最先端のソリューションを共同で提供できます。自動車の安全性を向上させ、世界中の交通を改善する革新的な技術を開発するというRoboSenseのコミットメントに共感するティアフォーと協力できることを誇りに思います。

 

Seyond CEO Junwei Bao
先進的な自動運転ソリューションを提供するティアフォーとのパートナーシップを誇りに思います。Seyondの高性能なLiDARの技術とティアフォーのEdge.Autoプラットフォームの組み合わせにより、より安全で賢く、効率性の高い自動運転車両とロボットを開発できる未来を共に作っていくことを楽しみにしています。

 

Vecow CEO Eric Yu
車載コンピューティング分野の革新的な先駆者であり、ティアフォーのパートナーであるVecowは、Edge.Autoプラットフォームに貢献し、インテリジェントビークルを開発するために必要な先進的かつ信頼できるソリューションを提供できることにワクワクしています。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。