ランチアを傘下に抱えるステランティスが、国際ラリーの歴史上でも最も成功したクルマのひとつだと謳うストラトス。同社は2023年9月25日、かつてサーキットとヒルクライムを公道で結んで開かれた国際長距離レース〝ツール・ド・フランス・オートモビル〟(Tour de France Automobile/1973年大会)で、ランチア・ストラトスが首位でゴールラインを潜ってから50年を迎えることを祝った。( 坂上 賢治 )
祝賀の舞台は、フランス南西部シャラント県アングレームにある〝サーキット・デ・ランパール(Circuit des Remparts)〟。ランチア・ストラトスのステアリングを握りヨーロッパ・ラリー選手権で2度優勝したベルナール・ダルニシュ(Bernard Darniche)氏を筆頭に、旧市街の古代道を転用したこの旧レースコースに多くのゲストを招いて祝賀イベントを実施した。
この席上で、ランチア・ブランドのCEOを務めるルカ ナポリターノ氏は、「今日、私たちは〝la bête à gagner〟として知られる史上最も成功したラリーカー、ランチア・ストラトスの初勝利50周年を祝います。
ランチア・ストラトスは、今や037やデルタと共にラリー界の伝説となっているクルマです。しかし、歴史に記された偉業は、それだけではありません。
ランチア・ブランドのCEOを務めるルカ ナポリターノ氏
ランチア・ストラトスは、ランチアブランドの歴史上に於いても象徴的なクルマのひとつです。それはモータースポーツシーンでの名声を獲得するために生まれたパーパスビルトマシンというだけでなく、丸いヘッドライトとリアランプ、空気力学的に考え抜かれたボディフォルム、個性的なインテリアなど、ランチアの未来を示す重要なデザイン要素が備わっているからです。
ちょうど50年前の1973年、当時はまだプロトタイプ車であった同車のステアリングをレーシングドライバーのサンドロ・ムナーリ(Sandro Munari)と、ナビゲーター役のマリオ・マヌッチ(Mario Mannucci)のデュオが運転して4月のファイアストーン・ラリーでトップを快走。これが今日へと続く物語の第一章となりました。
そして同じ年に当時国際格式であったツール・ド・フランス・オートモビールで初優勝を果たし、それが以降の快進撃の皮切りとなったのです。実際、ランチア ストラトスは、次々と勝利を重ね、正真正銘のラリーシーンの征服者となりました。
モンテカルロラリーで3回連続優勝し、市販車としてストラトス・ストラダーレが発売された1974年に世界コンストラクターズ・チャンピオンシップで優勝。
1975年のレースシーズンからは、スポンサーであるアリタリア航空の白と緑の色を採用し、航空会社のトリコロールロゴを二重にして、くさびの形で調和させ、モータースポーツ史上最も美しいカラーリングのひとつを生み出しました。
1976年には、3年連続を記した世界コンストラクターズ・チャンピオンシップを獲得。1977年のFIAラリー・ドライバーズ・カップでも優勝しました。
この祝賀会に出席したバーナード・ダルニッシュ(Bernard Darniche)氏は、1976、1977年のヨーロッパ ラリー選手権で連続優勝し、世界ラリー選手権のキャリアの中でも勝利。7ラウンドのうち4回以上で栄冠に酔いしれました。
そんな同車は、1970年秋開催のトリノショーでの〝ストラトス ゼロ〟プロトタイプからインスピレーションを受け、後のランチア・ストラトスへと繫がるストラトスHFプロトティーポが翌年発表されました。
この未来的なくさび形の車は、国際的なラリー・シーンでの勝利を目指すために設計され、そのフォルムのフロントエンドはホイールアーチと調和しており、傾斜したフロントガラスはフロントピラーを取り囲み、サイドウィンドウまで続いていました。
ルーフは小さなリアウィンドウの上に垂直に下がり、大きなボンネットに包まれ、2つの軽量シェルで構成されたボンネットとトランクには、それぞれにフェンダーが含まれているもので、レース サポート中に素早い行動ができるように広い開口部が設けられていました。
エンジンはフェラーリ・ディーノの246をベースにしたV6エンジンで、ドライバリティー重視の2座席インテリアも革新的でした。そんなランチア・ストラトスが、未来のランチアへインスピレーションを与えたクルマとなったのは偶然ではありません。
そんなストラトス、037、デルタなどのヴィンテージランチアと、過去と未来を繋ぐ対話は、今後10年間のブランド・マニフェストである〝Lancia Pu+Ra HPE〟にも見られます。
100%電気自動車の同コンセプトカーは、エクステリア並びインテリアデザイン、電動化などモビリティとしての持続可能性、エフォートレスなスタイルという点で、我々のブランドが目指すべきビジョンを体現しています」と語っている。