日本は高電圧充電ができず、規制緩和およびインフラ網の拡充を要望
日本自動車輸入組合(JAIA)の上野金太郎理事長(メルセデス・ベンツ日本社長兼CEO)は1月29日、理事長新年記者会見を東京都内で開き、「外国車メーカーの10台に1台がEV(電気自動車)になる日も間近だ」と述べ、日本のEV市場をけん引する輸入車をアピールした。(佃モビリティ総研・松下次男)
輸入EVは2023年、前年比1・6倍の2万2890台に達した。昨年夏の記者会見で上野理事長は「年間2万台の大台が見えている」と述べていたが、年間実績は「期待以上」だった。
それも急速に伸びており、2019年の約1400台から5年間で約15倍に拡大。この結果、外国メーカー車に占める割合は2023年9・2%にまで拡大した。
一方で、日本国内全体のEV比率は依然として低く、2023年をみても2・2%にとどまる。こうした中で、日本のEV市場で輸入EVは5割を超え、日本のEV普及に大きく貢献していると訴えた。
輸入EVが伸びている要因は、多種多様なモデルが揃っていること。輸入EVのラインナップは2020年の10ブランド20モデルから2023年末には商用車も含め17ブランド118モデルに拡大。
大型車から小型車、さらにSUV、ラグジュアリーモデル、スポーツタイプなど多様な種類のモデルを揃え、ユーザーの選択肢が広がった。実際、JAIAが行うプレス向け試乗会でも今年はEVとPHVを合わせて半分を超えるという。
このように2024年もインポーター各社は積極的に新型EVを投入する構えを見せており、上野理事長は引き続き成長が期待できるだろうとの見通しを示す。
ちなみに外国メーカー車全体の販売についても半導体の供給不足に伴う車両供給遅れから回復基調に転じつつあり、2023年対前年比2・5%増の24万8329台に達し、2年振りに前年を上回った。
2024年見通しでもJAIA会員各社の積極的な新型車投入が予定されていることから「堅調な推移」を予想。中でも、EVが「より一層強力に輸入車市場をけん引していく存在になる」とアピールした。
半面で、欧米や中国と比べると、電動車の普及比率はまだまだ低く、課題も多い。その一つとして、上野理事長は充電インフラの整備を掲げ、「現在、日本の電圧規制によって、欧米並みの高電圧充電ができない状況」を訴えた。
電動車の普及のためには「誰にでも使いやすい充電インフラの充足が必要」と述べ、急速充電の高電圧化、普通充電の高出力化などの規制緩和を要望した。
現実に、欧州で開発された車両の中には、低い充電電圧を車両の高電圧バッテリーに合わせるため、日本市場のためだけに電圧変圧器を開発して搭載しなければならないものがあるとした。
また、充電インフラの整備では、充電事業者の負担が少なる方法で高速道路からの一時退出の制度化や東京都の事例にみられるような公共駐車場や集合住宅への充電器設置促進を要望した。
これらに対し、JAIA自体も横断的なチームを立ち上げ課題解決に向けて努力を進めているほか、輸入電動車促進イベントを開催し、輸入電動車のプレゼンス向上を進める。
さらに税制面でもカーボンニュートラル実現に貢献する電動車の普及を加速する必要がある中、ユーザーの負担増につながる税制改正は避けるべきとし、EV、PHV、FCV(燃料電池車)などの電動車の普及を促進する税制改正の検討を政府に要望していく方針だ。
輸入二輪車販売も好調で、2023年は2万7008台と前年比2・8%増加した。好調な要因について上野理事長はコロナ禍以降「密を避け一人で楽しめるツーリングキャンプが定着した」ことや多種多様かつ個性的な輸入二輪車にユーザーが目を向けるようになったことを掲げた。
なお、JAIAの四輪車会員数はEVインポーターのBYDオート・ジャパンなどが加入し、28社となった。