シェフラーとVDLが共同開発・生産を計画する自動運転シャトルの車両イメージ
独・シェフラーと蘭・VDLグループは9月6日(ドイツ・ミュンヘン時間)、両社のシステムエンジニアリング・公共交通に係る専門技術を結集。公共交通機関向けの次世代自動運転シャトルの開発と生産を共同で検討していることを明らかにした。( 坂上 賢治 )
併せて伝統的な同族所有による企業の2社は、ドイツ・ミュンヘンで開催の国際モーターショー〝IAAモビリティ2023〟の開催に先立ちデモ車両を初公開。加えてショーに於いては関連する全ての自動車に係る自動化・電動化技術を展示した。
その具体的な展示内容で先の2社は、今回の公共向け自動運転車による実証開始に向け、ソフトウエアを含む自動運転ソリューションで強みを持つモービルアイと提携したことも公表。同社を含む3社は、現在、欧州各国の公共交通当局とパイロット・プロジェクトの始動に向けた事前交渉の最中にあるという。
モータ、ギアボックス、ワーエレクトロニクスをコンパクトに統合したシェフラーの3in1電動アクスル
ちなみに、この3社のなかでシェフラーは、ステア・バイ・ワイヤシステム、電動パワートレイン用のシステムコンポーネントにバッテリーモジュールを組み合わせた〝ローリングシャシー〟を開発・提供に邁進するティアワン・サプライヤーであり、VDLグループは大型バスの電動化で欧州の輸送業界をリードする存在として著名だ。
またモービルアイは、自動運転車専用のEyeQプロセッサをベースに、サラウンドビューカメラ、LiDAR(ライダー)、レーダーセンサ、マッピング技術を融合させた自動運転車に搭載する専用ソリューションを開発している。
そんな3社のうち、モービルアイのヨハン・ユンクヴィルト自動運転車両部門担当上級副社長は、「自動運転車を介して、より良い社会を実現させるためには、自動運転に係る技術自体が拡張性を備え、かつ利用し易いものであり、また何よりも安全でなければなりません。
今回、シェフラー・VDLグループ・モービルアイの3社による連携で、我々はMaaS(Mobility as a Service/モビリティ・アズ・ア・サービス)を実現するための欧州最強のチームになります。
シェフラーは、ロードホイールアクチュエーター(RWA)などステア・バイ・ワイヤシステムの主要コンポーネントを開発している
そこで、まずは欧州で初めてSAEレベル4を公道で走行することを承認した国であるドイツ国内に於いて、自動運転車による定時運行を実現。これによりドイツが、自動運転シャトルの運行が世界で初めて日常化した国であることを示す所存です」と述べた。
またシェフラーAGのクラウス・ローゼンフェルドCEOは、「そのために我々3社は、既に自動運転シャトルを使ったパイロットプロジェクトの実現に向け、欧州各国の複数事業者と運用交渉を重ねています。
そんな自動運転シャトルは、人々を地点Aから地点Bへと迅速かつ安全に運び、シャトルが羞じる地域に住む全ての人々に対し移動の自由を提供するものとなります。それにより早晩、自動運転シャトルカーは、現代の移動に係るエコシステムにとして必要不可欠な存在になるでしょう。
そのなかでシェフラーは、過去から積み重ねてきた自動車サプライの技術により、持続可能な自動車運転ソリューションの成長をサポートしていきたいと考えています。またそのためには強力なパートナーとの提携が何よりも重要です。それゆえVDLグループ並びにモービルアイと共に取り組めることを、この上なく光栄に思います」と語った。
また最後にVDLグループ のウィレム・ファン・デア・レーフテ社長兼CEOは、「自動運転シャトルは、未来に於いて重要な役割を果たすことになるでしょう。
そんなソリョーションの構築にあたっては、クルマづくりのコンセプトワークに始まり、車両設計、電動化技術の高度化、更にコネクティビティ機能の充実だけでなく、利用者をシステムの中核に据えたサービス品質に至るまで、3社の協業によって様々な技術を磨く素晴らしい経験となるでしょう。
ちなみに車両の目標生産台数は、個々のプロジェクトが目指すべき事業規模により異なりますが、まずは製造に係る目標では2030年を皮切りに年間数千台の生産規模を想定しています。
車両生産自体はオランダ・ボルンのVDLモビリティ・イノベーションセンターで行う計画です。加えて当該プロジェクトの当初のロードマップによると、路上でのテスト走行は2025年頃に開始したい意向です」とその進捗予定を説明していた。
シェフラーとVDLグループによる自動運転シャトルのハードウエア概要
• 座席数:9席(固定6席、格納可能3席)
• 最大積載量:約1,000kg
• 寸法:全長5m、車幅2.2m、車高2.8m、車両総重量約5,000kg
• 遠隔監視室に直結した車内監視システム
• 2つの独立したセンサシステムを高度に統合
1つは車載カメラ、もう1つはレーダー(またはLiDAR)を使用
• 広い開口幅と低床な乗降口、車椅子の利便性を考慮
• 最高速度:時速70km
• 航続距離:1日350km以上、1回の充電で100km以上