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2023年7月5日【イベント】

三洋貿易、子供の車内置き去り実態調査2023結果を公表

松下次男

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車内に子供だけを残して送迎バスを離れた経験があるとの回答は大幅に減少するものの、実際に経験したケースも

 

三洋貿易は7月5日、オンラインで記者会見を開き、「子どもの車内置き去り実態調査 2023」の結果を公表した。それによると園児の車内置き去り死亡事故の報道が昨年も相次いだことから、意識の高まりが感じられるものの、危機感と当事者意識にギャップがあることなどが回答結果からわかった。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

調査は昨年に続いて実施。この間、今年4月から、幼児などの所在確認と送迎用バスへの安全装置の装備が義務化(1年間の経過措置あり)され、現状、置き去り防止用の安全装置が約55%の送迎バスに装着されている。

 

このような中、三洋貿易はIEE社製の車用子ども置き去り検知システム「ライダス」(送迎バス用)および「バイタセンス」(乗用車)を提供しており、ライダスは5月に国の送迎用バスの置き去り防止支援のガイドライン認証を取得。6月から実際に、装着を始めているという。

 

 

子どもの車内置き去り実態調査は「幼稚園・保育園の送迎バス編」と「子どもを乗せる乗用車運転者編」の2編を実施。

 

それぞれ2023年5月末~6月初めに、幼稚園・保育園で送迎を担当する267人と全国の小学生以下の子どもを乗せてクルマを運転するドライバー3377人を対象に車内置き去りの実態、危険性の認識、行動の変化などについてオンラインで調査した。

その結果、幼稚園・保育園の送迎バス編では幼稚園・保育園送迎担当の95・9%(前年は95・5%)が車内置き去りにより、毎年のように子どもの熱中症事故が発生していることを認識していると回答。

 

また、「1年以内に子どもだけを残して送迎バスを離れた経験がある」との回答は前年の5・6%から1・5%に減少し、施設側の意識の高まりが感じられる結果となった。ただ、離れた経験があるとの回答もゼロとはならなかった。

 

 

半数強が園児の置き去りが発生すると回答するものの、8割弱が自分の園では発生しないと危機感と当事者意識にギャップ

 

「今後も園児が取り残されることは発生すると思うか」の質問では54・3%が「今後も発生する」と回答。ただし、76・0%が「自分の園では発生しないと思う」と答え、危機感と当事者意識にギャップがあったと分析する。 

 

安全装置の設置義務化には「賛成」が 84・3にのぼり、「反対」の3・7%を大きく上回った。

子どもを乗せる乗用車運転者編では、ドライバーの91・6%(前年93・8%)が車内置き去りにより毎年のように子どもの熱中症事故が発生していることを認識していると回答。

 

また、「1 年以内に子どもを残したまま車を離れたことがある」とした人は20・4%で、うち5・1%は、めまい、顔のほてり、体温が高いなどの子どもの不調を経験したとしている。

 

 

さらに「今後も子どもの車内取り残しは発生する」との回答は80・8%にのぼり、最多理由は「保護者の意識が低いから」(60・5%)で、78・9%が「子どもを無意識に車内へ取り残してしまうことに対する対策を行ったことはない」と答えた。

 

車内置き去り検知システムへの認知は昨年より高まったものの、依然、45・8%が「知らない」と回答した。

安全装置義務化は送迎バスにとどまらず、乗用車も対象にと有識者は指摘

 

こうした調査結果から、三洋貿易では車内置き去りによる熱中症事故への認知度が高まっているものの、置き去りの経験が実際にあり、8割弱が無意識の置き去りを防止する対策をとったことがないなど、危険性の認識と実際の行動には大きな隔たりがあることが明らかになったと分析する。そのうえで置き去り防止手法の啓発と安全装置の重要性を訴えた。

加えて、米インディアナ州ではエンジン停止後にバス後部のボタンを押すシステムの新車への搭載が2015年から義務化されたが、年平均約20件のインシデント発生件数は減らず、ボタン式システムは効果に限界があるとの見解も示した。

 

送迎バスへの安全装置装着が約55%に達していることに対しては「順調に進んでいる」と判断し、残りの45%については「予算上」や経過措置のなかで「それぞれシステムの特色を見極めている」などと聞いているとした。

 

 

有識者として記者会見にゲスト登壇したNPO法人「Safe Kids Japan」の山中龍宏理事長は子どもの車内置き去り事故防止を啓発するうえで「このような調査は有意義だ」としてうえで、保護者や保育者の注意を促すのみでは子どもの事故を完全に無くせない」と指摘する。

これらを踏まえ、「人は誰でも間違う」という考えに基づいて「システムを活用する」ことの重要性を訴えた。それも子どもの車内置き去りによる熱中症に関しては圧倒的に乗用車の方が多く、送迎バスへの安全装置設置義務化に続き、「自家用車も検討すべきだ」と提言した。

新谷正伸社長はIEE製の子ども置き去り検知システムについてミリ波を使った完全な自動検知システムと特色を示すともに、送迎バス用に続きマイカー用も自動車メーカーと開発中と強調。

 

 

そのうえで、こうしたシステムを提供することにより、「社会課題への最適解を提供し、一人も取り残さない社会の創出に貢献したい」と語っていた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。