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2023年2月7日【イベント】

ルノー・日産・三菱自動車、新たなアライアンスをスタート

松下次男

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ルノー、日産の資本提携を対等に、相互に15%ずつ保有へ

 

仏ルノーグループ、日産自動車、三菱自動車の3社首脳が2月6日、英ロンドンで共同記者会見を開き、新たなアライアンスの枠組みに合意したと正式に発表した。合意した内容は、ルノーが日産への出資比率を15%に引き下げて両社の資本提携を対等にし、3社は電動化やソフトウェアなどの新たな領域で協業の取り組みのレベルアップを目指すと表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

共同記者会見にはアライアンス会長のジャンドミニク・スナール氏、ルノーグループのルカ・デメオCEO、日産自動車の内田誠社長兼CEO、三菱自動車の加藤隆雄社長兼CEOが登壇。

 

各首脳は今回の合意について、100年に一度の自動車産業の「劇的な変化の対応するため」と口を揃え、新たな協業により「次のステップに向け一歩踏み出す」と強調した。

 

 

ルノー、日産の資本提携見直しは、ルノーが保有する日産の株式28・4%を仏信託会社に移管し、議決権を「中立化」させるもの。日産もルノー株15%を保有していることから、両社の出資比率が揃う。

 

ルノーのEV事業会社アンペアに日産、三菱が出資を検討

 

ルノー、日産の両社はそれぞれ取締役会で新たな枠組みを承認。それぞれ合意した内容をもとに、2023年第1四半期末までに最終契約を結び、23年第4四半期に完了する予定だ。

 

また、従来はフランスの法制度の制約から日産にはルノーに対する議決権がなかったが、新たに合意した枠組みでは日産にもルノーに対する15%の議決権が復活。これに対する仏政府の承認も得ているとし、スナール会長は「新たな覚書が(これまでの覚書の)ラマに取って代わる」と話す。

 

 

新たな枠組みでは、ルノーグループが展開する電気自動車(EV)事業会社であるアンペアでの協業も始まる。日産は最大15%の出資を検討し、三菱自の加藤社長も「資本参加を検討する」と表明した。

 

アンペアについはルノーの将来の行方を左右する重要な戦略事業体となる可能性意を秘めており、近く上場を目指す。これに対し、デメオCEOは同社の株式の「50%以上を保有する」と述べ、ルノー主導で欧州向けEVやソフトウェア開発を担う考えを示した。

 

 

ルノーは米グーグルと車載向け基盤ソフトの共同開発で提携するほか、アンペアには米半導体大手のクアルコムも出資する。これにより、次世代EVに不可欠なソフトウェア開発を加速させる考えで、デメオCEOはこれらのテクノロジーが最終的に「3社で共有できるだろう」との見方を示す。

 

三菱の加藤社長は欧州向けASX、コルトなどの車両をルノーからOEM調達するのに加え、次のステップとしてアンペアからEV調達する可能性も示唆した。

 

電動化やソフトウェアで新たな協業を目指す

 

3社のアライアンスの取り組みでは、地域ごとに新たなプロジェクトもスタートさせる。欧州、ラテンアメリカ、インドで車両の共同開発や相互の工場を活用した生産効率化、EVプロジェクトなどを推進する。

 

 

日産にとってはルノーとの資本提携見直しが長年の悲願だった。1990年に破産寸前だった日産がルノーの資本支援を受けてアライアンスをスタートさせて以降、ずーっと不平等な資本関係が続いた。

 

この間、ルノーから送り込まれてきたカルロス・ゴーン氏が日産を立て直し、車両販売台数で日産がルノーを大きく上回るようになり、いびつな資本関係を求める声が日産内部から強まっていた。

 

2005年にはゴーン氏がルノー、日産のトップを兼ね、ルノー、日産の経営統合も一時、持ち出された。

 

 

しかし、のちに三菱自を加えた3社の権力を集中することになったゴーン氏が不正問題で失脚すると、3社のアライアンスのバランスが崩れた。加えて、コロナ禍も重なり、それぞれの業績も悪化。

 

そこへカーボンニュートラルに対応した電動化や自動運転技術など100年に一度と言われる自動車産業の変革期にも直面し、これらを背景に、アライアンスのリバランスへと進むことになったといえよう。

 

新たな枠組みでは3社の独自性を尊重

 

ただし新たな枠組みに向けては、協議が難航し、議論を重ねたのも事実だ。これに対し、スナール氏は「急ぐ必要はなかった。ガバナンスが重要」と話し、内田社長も過去の延長線上でなく「次のレベルの変革が必要」と新たな同意を強調した。

 

 

課題は、合意した新たな枠組みを踏まえ、3社が次のステップに向けどう成長戦略を描くかだろう。それぞれ3社とも中長期計画を策定、または策定する計画を持っており、これら独自性を尊重しながら、アライアンスのメリットを引き出すことが求められる。

 

しかしながらEVをはじめとした自動車市場の変革は急ピッチであり、そこで存在感を示すには技術力や膨大な資金も必要。現実に、日産、三菱自はEV投入で先行したものの、継続できず、遅れをとっているのが実態。

 

 

これをどう取り戻すか。内田社長は「まず事業を成長させ、株価を上げる」ことが大切だと話し、それがルノーの事業資金として仏信託会社の日産株売却につながるとの考えを示した。新たなアライアンスの契約期間は当初15年間の予定で、3社の取り組みが注目される。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。