ルノー、日産の資本提携を対等に、相互に15%ずつ保有へ
仏ルノーグループ、日産自動車、三菱自動車の3社首脳が2月6日、英ロンドンで共同記者会見を開き、新たなアライアンスの枠組みに合意したと正式に発表した。合意した内容は、ルノーが日産への出資比率を15%に引き下げて両社の資本提携を対等にし、3社は電動化やソフトウェアなどの新たな領域で協業の取り組みのレベルアップを目指すと表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)
共同記者会見にはアライアンス会長のジャンドミニク・スナール氏、ルノーグループのルカ・デメオCEO、日産自動車の内田誠社長兼CEO、三菱自動車の加藤隆雄社長兼CEOが登壇。
各首脳は今回の合意について、100年に一度の自動車産業の「劇的な変化の対応するため」と口を揃え、新たな協業により「次のステップに向け一歩踏み出す」と強調した。
ルノー、日産の資本提携見直しは、ルノーが保有する日産の株式28・4%を仏信託会社に移管し、議決権を「中立化」させるもの。日産もルノー株15%を保有していることから、両社の出資比率が揃う。
ルノーのEV事業会社アンペアに日産、三菱が出資を検討
ルノー、日産の両社はそれぞれ取締役会で新たな枠組みを承認。それぞれ合意した内容をもとに、2023年第1四半期末までに最終契約を結び、23年第4四半期に完了する予定だ。
また、従来はフランスの法制度の制約から日産にはルノーに対する議決権がなかったが、新たに合意した枠組みでは日産にもルノーに対する15%の議決権が復活。これに対する仏政府の承認も得ているとし、スナール会長は「新たな覚書が(これまでの覚書の)ラマに取って代わる」と話す。
新たな枠組みでは、ルノーグループが展開する電気自動車(EV)事業会社であるアンペアでの協業も始まる。日産は最大15%の出資を検討し、三菱自の加藤社長も「資本参加を検討する」と表明した。
アンペアについはルノーの将来の行方を左右する重要な戦略事業体となる可能性意を秘めており、近く上場を目指す。これに対し、デメオCEOは同社の株式の「50%以上を保有する」と述べ、ルノー主導で欧州向けEVやソフトウェア開発を担う考えを示した。
ルノーは米グーグルと車載向け基盤ソフトの共同開発で提携するほか、アンペアには米半導体大手のクアルコムも出資する。これにより、次世代EVに不可欠なソフトウェア開発を加速させる考えで、デメオCEOはこれらのテクノロジーが最終的に「3社で共有できるだろう」との見方を示す。
三菱の加藤社長は欧州向けASX、コルトなどの車両をルノーからOEM調達するのに加え、次のステップとしてアンペアからEV調達する可能性も示唆した。
電動化やソフトウェアで新たな協業を目指す
3社のアライアンスの取り組みでは、地域ごとに新たなプロジェクトもスタートさせる。欧州、ラテンアメリカ、インドで車両の共同開発や相互の工場を活用した生産効率化、EVプロジェクトなどを推進する。
日産にとってはルノーとの資本提携見直しが長年の悲願だった。1990年に破産寸前だった日産がルノーの資本支援を受けてアライアンスをスタートさせて以降、ずーっと不平等な資本関係が続いた。
この間、ルノーから送り込まれてきたカルロス・ゴーン氏が日産を立て直し、車両販売台数で日産がルノーを大きく上回るようになり、いびつな資本関係を求める声が日産内部から強まっていた。
2005年にはゴーン氏がルノー、日産のトップを兼ね、ルノー、日産の経営統合も一時、持ち出された。
しかし、のちに三菱自を加えた3社の権力を集中することになったゴーン氏が不正問題で失脚すると、3社のアライアンスのバランスが崩れた。加えて、コロナ禍も重なり、それぞれの業績も悪化。
そこへカーボンニュートラルに対応した電動化や自動運転技術など100年に一度と言われる自動車産業の変革期にも直面し、これらを背景に、アライアンスのリバランスへと進むことになったといえよう。
新たな枠組みでは3社の独自性を尊重
ただし新たな枠組みに向けては、協議が難航し、議論を重ねたのも事実だ。これに対し、スナール氏は「急ぐ必要はなかった。ガバナンスが重要」と話し、内田社長も過去の延長線上でなく「次のレベルの変革が必要」と新たな同意を強調した。
課題は、合意した新たな枠組みを踏まえ、3社が次のステップに向けどう成長戦略を描くかだろう。それぞれ3社とも中長期計画を策定、または策定する計画を持っており、これら独自性を尊重しながら、アライアンスのメリットを引き出すことが求められる。
しかしながらEVをはじめとした自動車市場の変革は急ピッチであり、そこで存在感を示すには技術力や膨大な資金も必要。現実に、日産、三菱自はEV投入で先行したものの、継続できず、遅れをとっているのが実態。
これをどう取り戻すか。内田社長は「まず事業を成長させ、株価を上げる」ことが大切だと話し、それがルノーの事業資金として仏信託会社の日産株売却につながるとの考えを示した。新たなアライアンスの契約期間は当初15年間の予定で、3社の取り組みが注目される。