日本自動車工業会の豊田章男会長は11月17日、オンラインで記者会見を開き、自動車を軸に経済活性化の輪を広げ、経済・社会の好循環に寄与出来るよう取り組んで行く考えを表明した。
特に雇用面に言及し、モビリティ産業関連の雇用者を現在の850万人から1千万に増やすよう呼びかけた。
会長会見には、片山正則いすゞ自動車社長、日髙祥博ヤマハ発動機社長、永塚誠一氏(自工会)の3副会長が参加した。
会見は次期の事業活動方針を決める理事会開催を踏まえて行ったもの。合わせて、4年ぶりに来年開催予定の東京モーターショー2023の名称を「ジャパンモビリティショー」に変更する事を正式に決定した。
豊田会長は衣替えするジャパンモビリティショーショーにはスタートアップを含め、多様な分野の企業・団体の参加を集う考えを示した。
自動車産業の現状について豊田会長は冒頭に、カーボンニュートラルが最大の関心事であるとした上で、敵は内燃機関でなく、「炭素だ」と強調。日本はエコカーの先進国であり、既に脱炭素への寄与度は高いとした。
片山、日高の両副会長もカーボンニュートラルの実現には合成燃料などを含め、多様な取り組みが必要と同調した。
これらの考えを、経団連のモビリティ委員会と岸田首相らとの懇談会でも説明したとし、来年、日本で開催するG7(先進7か国首脳会議)でも議題の一つに取り上げ、幅広く理解を求める方向という。
また、仲間づくりでも経団連モビリティ委員会の活動などを通じ、より広がりを見せていると話す。
豊田会長はこれまで「自動車産業550万人の仲間たち」が日本経済を支えてきたと表現していたが、それを移動関連の人を含めれば「モビリティ産業850万人」の雇用になると強調。
こうしたモビリティ産業をさらに進化させることにより「1000万人」を目指す活動に取り組みたいとした。豊田会長は日本経済の実態について長期停滞からの打破が必要とし、「自動車を軸に、日本を元気にしたい」と訴える。
物価の上昇にあわせ、大幅な賃上げが求められている来年の春闘については「自動車はこれまでも成長と分配に取り組んできた」としながらも、その恩恵が及んでいるのは「550万の3割に過ぎない」と説明。
残りの人たちは交渉の場がないなどを背景に掲げて、こうした「7、8割の人に届く」分配の必要性を訴え、日本経済にとっても「中間層を厚くする」取り組みを考えるべきと述べた。
政府税調などで検討が始まったと報じられている電気自動車(EV)の走行距離課税案については永塚副会長が「大変問題がある。
電動車の普及にブレーキを掛ける」と述べた。特にクルマが生活の足となっている地方の人にとって「移動ごとに負担が求められるのは不公平」であり、「断固反対だ」と強調した。
また、来年3月で期限切れとなるエコカー減税についても対象車両の絞り込みは「電動化の進展に反する。現状のまま延長すべき」と訴えた。
加えて、自動車業界では半導体不足の影響で納車が遅れており、「3月末で変更になれば、ユーザーの購入意欲に疎外する。販売現場も混乱する」と述べた。
豊田会長は日本の自動車関連課税は世界一高く、複雑と指摘し、長期的には税制を「抜本的な見直すべきだ」とした。