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2022年9月10日【イベント】

ポルシェ、レッドブルF1チームとの提携協議を解消

坂上 賢治

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パートナーシップはエンジンだけでなくチームも含まれる前提が瓦解したと主張

 

ポルシェAGは9月9日(欧州中央時)、フォーミュラ1レース参戦の可能性について、レッドブルF1チーム(レッドブル・レーシング)と数か月に亘って話し合いを続けて来た事実を明らかにした一方で、今後は、両社共に同協議を継続しない事をボルシェ側の公式プレスリリースを通じて明らかにした。( 坂上 賢治 )

 

ポルシェAGでは公式リリースで、「過去数か月の間に、Dr. Ing. hc F. ポルシェAGとレッドブルGmbH(レッドブル・レーシング及びチームを保有)は、ポルシェのフォーミュラ1への参入の可能性について協議を行いました。しかし両社は、これらの協議を今後継続しないという結論に達しました。

 

 

今回のパートナーシップ協議は、対等な立場に基づくものであり、それにはエンジンのパートナーシップだけでなく、チームも含まれるという前提が常にありました。

 

しかし両社共に、これを達成出来ませんでした。但しFIAによる2026年からのルール変更に伴い、F1レーシング・シリーズは、我々ポルシェにとって魅力的な環境であり、引き続き注視していきます」と話している。

 

双方の正式なパートナーシップ締結前の段階で協議は空中分解に

 

ポルシェAGとレッドブル陣営は、新しいパワーユニット規則が導入される2026年から(ホンダのパワーユニット搭載は2025年まで)の提携体制について、ポルシェ側がレッドブル・テクノロジーの株式の50%を取得するとした計画が今シーズン消化中の途中段階でリークされた事が発端となり、いよいよ正式なパートナーシップが結ばれるものとF1パドック内で誰もが想定していた。

 

しかしここ数日に於いて、レッドブル・レーシングのチーム代表であるクリスチャン・ホーナー氏と、同チームのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコ氏が、チーム管理の管轄範囲を踏まえて、ポルシェとの契約交渉に反対しているとの報道が流れていた。

 

そもそもレッドブル・レーシングチームとしては、既に独自のエンジン開発を担う部門を立ちあげて、フェラーリF1チームと同じく、エンジン開発を筆頭に独立したチーム経営(他社からエンジン供給を受ける必要が無い)を行えると宣言していた。

 

 

包括運営に期待したポルシェと、独自の道を歩みたいレッドブル

 

もはや、今となっては双方の提携協議の内容は知る由も無いが、一般的にF1チームの運営にあたっては、アストンマーティン・フォーミュラ1チームのように、パワーユニット自体はメルセデスからパワーユニット供給を受けつつ、レーシングチーム運営としては他のブランド企業(飲料やアパレルなども含む)からのスポンサードを受けて独自ブランドの看板を掲げるスタイル。

 

一方でフェラーリ・フォーミュラ1チーム(スクーデリア・フェラーリS.p.A.)のように、自らの事業収益と外部からのスポンサードを組み合わせて、独自のエンジン、独自シャーシ、独自のチーム運営を行うところまで様々だ。

 

現在、レッドブル陣営はホンダからの技術供与を受けつつ、この2022年から独自のエンジン開発に着手。来たる2026年からは自らの名前で設計した独自エンジンを搭載し、〝空力の鬼才〟と呼ばれるイングランド出身の自動車技術者エイドリアン・ニューウェイ氏が設計するオリジナルシャーシとを組み合わせた、よりオリジナル性の高いF1マシーンを以て、レースに挑み続ける構えを見せている。

 

そうしたレッドブル陣営に於けるチームの想いと、ポルシェの思惑に異差が生まれたものとF1バトックでは考えられているようだ。いずれにしてもレッドブルとしては、2025年で終焉するホンダとの技術供与を前に、新たなパートナーを探し続ける事になる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。