新型エコキュート
パナソニックは4月6日、東京・日本橋のコンファレンスプラザで電気式給湯器「エコキュート」の新機種を6月26日から販売を開始すると発表した。日射量予報をもとに、自宅に設置した太陽光発電システムと連動して効率的に湯を沸かす機能を業界で初めて搭載。従来機種に比べて、太陽光発電の余剰電力の自家消費が約30%増えるようにしたという。今回一気に52機種投入し、2023年度の販売台数を前年度比20万台超にする計画だ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
エコキュート市場は年間70万台超に拡大
「エコキュートの需要は東日本大震災後、オール電化による逆風を受けて総需要は減少していた。しかしながら、2015年度を底として、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の需要増加やカーボンニュートラルの追い風、そこにオール電化の初期ユーザーの買い替え需要が加わって、エコキュートの拡大傾向が続いている。2022年度は70万台超と業界として最高の出荷になる見通しだ」
松尾圭部長
パナソニック空質空調社日本マーケティングセンター電化マーケティング統括部の松尾圭部長は、エコキュートの現状についてこう話し、これからは太陽光発電の余剰電力を有効活用することが重要だという。
今回発売するエコキュートはまさしくそんな製品と言っていいだろう。その特長は大きく3つある。
一つ目が日射量予報と連携して自動で沸き上げる「スマートソーラーチャージ」の業界初搭載。従来の「ソーラーチャージ」がさらに賢くなり、エコキュート専用アプリで日射量予報から太陽光発電の出力を予測し、自動で沸き上げることができる「スマートソーラーチャージ」へと進化したのだ。
これによって、従来は翌日の天気予報が晴れの場合に行っていた昼間の沸き上げを、日射量予報に連携して行うため、余剰電力の自家消費率を約30%向上できるようになったわけだ。
二つ目が「ウルトラ高圧」でシャワー使用時の快適性を向上させたこと。実はシャワー圧について調査したところ、約28%の人が弱いと不満を持っていることがわかった。そこで、シャワー流量を「高圧タイプ」と比較して約1.4倍にした「ウルトラ高圧」で給湯圧力を大幅にアップ。これによって、1階だけでなく、2階、3階においても、シャワー使用時の快適性が高まったそうだ。
エコキュートの需要動向
うっかりアシスト機能でお湯のムダを節約
三つ目が浴槽栓の閉め忘れた際の通知機能「うっかりアシスト」により、ユーザーのストレスを軽減したこと。お湯はり時の栓の閉め忘れは約55%の人が経験しており、そのうち半数以上が2回以上経験、4回以上の人も9%に上っている。そのため、栓の閉め忘れを早く検知して停止できるようにしてほしいという声が出ていた。
その困りごとを軽減するために新たな機能として「うっかりアシスト」を搭載。通知時間を6分短縮したことで、従来モデルと比較してお湯のムダを約80リットル節約できるという。
価格はスタンダードクラス(Sシリーズ、NSシリーズ)がオープン価格で、プレミアムクラス(JPシリーズ)とミドルクラス(Jシリーズ、Nシリーズ、Cシリーズ)が89万8700円~129万3600円。工事費は含まれていない。
近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて再生可能エネルギーの利用が加速する中、エコキュートは電気と大気熱により効率的にお湯をつくり“蓄熱”することができるため、太陽光発電などの再生可能エネルギーの有効活用ができる機器として期待されている。
また、エネルギーコスト削減に向けた意識の高まりや、太陽光発電システムの固定価格買取制度(FTT)が終了する家庭もあることなどから、自家消費ニーズが高まっている。政府も2030年度累計普及台数目標として1590万台を掲げており、21年度には累計800万台を突破して順調に推移している。
「2025年度には年間80万台に拡大する」(松尾部長)と見ており、パナソニックはここで一気に攻勢に出ようというわけだ。まずは23年度年間20万台超の販売を達成し、確固たる地位を築こうとしている。