パナソニックの品田正弘専務執行役員
一人ひとりに寄り添うくらし。みんなの白物家電が〝あなたの個電〟へと進化
「多様化する価値観に寄り添い、社会とくらしの変化に応じて、家電が進化し続ける。一人ひとりに、ちょうどいい、くらしへ」――。パナソニックは9月21日、そんなテーマを掲げて家電の新製品・新サービスの発表会を行った。そこでは、ルームエアコン「エオリアLX」シリーズやレイアウトフリーテレビ、IoT家電による「音声プッシュ通知」サービス、有料のサポート「パナソニック ケア」などが紹介された。(経済ジャーナリスト・山田清志)
QRコードで家電のネット接続を簡単に
「新型コロナウイルスの感染拡大によって、ビジネススタイルも、人々のくらしも大きく変わった。新しい生活様式の中で、くらしの中心となる『家』は、プライベートな生活空間から、仕事、学び、趣味など、あらゆる活動の中心へと役割を変えた。今や『家』は、安心で快適な空間、そして自分らしいライフスタイルを実現する場所として、求められる要素も多様化している。これからの家電は、一人ひとりが実現したいライフスタイルを後押しする役割が求められている」
パナソニック専務執行役員の品田正弘氏(アプライアンス社社長)は冒頭の挨拶でこう話し、それに応える家電を生み出していくことが重要だと訴えた。さらに、インターネットにつながるIoT家電によって、新しい体験を可能にする環境を実現したが、一方でデータのアクセスに困難な人のデジタルデバイドを生み出してしまったという。
「家電はこれまで、誰もが簡単に安心して使える身近なものとして、テクノロジーを浸透させ、くらしの進化を支えてきた。IoT家電にも圧倒的な簡単接続、簡単操作が求められる」と品田氏は強調する。
そこで、パナソニックでは2021年6月から一部のIoT家電でQRコードをスキャンするだけで、商品情報の読み取りやインターネット接続を補助できるようにした。それまでは、IoT家電を購入しても、設定の煩わしさからネット接続をする人が少なく、最も接続率が高いロボット掃除機でも約5割程度だったそうだ。QRコードの導入はユーザーに好評とのことだ。
新エアコンはシーン推定自動運転機能を搭載
パナソニックは2018年に「くらしアップデート業」を宣言し、家電のIoT化に力を入れ始めた。現在、IoT家電はエアコン、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、炊飯器、テレビなど12カテゴリー、50機種にのぼり、家電販売のうち約3割を占めるという。アプライアンス社副社長の河野明氏によれば、18年から毎年2ケタ成長を続けているそうだ。
パナソニック アプライアンス社の河野明副社長
そのうえ、家電がインターネットにつながったことで、ユーザーの使い方や困りごとが細かく把握することが可能になり、「一人ひとりのくらしにもっと寄り添うことができる新しい家電やサービスができるようになった」と河野氏。
今回発表した新製品はそんなIoT家電と言っていいだろう。例えば、11月中旬に発売予定のエアコン「エオリアLX」シリーズは、ユーザーの状況に合わせて製品を運転する「シーン推定自動運転機能」を新たに搭載した。ユーザーがスマートフォンに「エオリア アプリ」をダウンロードすると、GPSでユーザーの位置情報を把握し、帰宅前に室内を適度な状態に整えることができるなど、それぞれのシーンに合わせた最適な運転を自動で行う。
また、業界で初めて室外機に水分を吸湿させる素材として高分子吸着材を採用。高分子吸着材は高い吸湿力を持ち、暖房時には外気の水分を取り込み室内へ送ることで、給水の手間なく部屋を素早く加湿し、暖房時の最大の不満点である乾燥を防ぐ。除湿時には乾燥させた外気を室内に送るドライ給気制御で、寒くなりにくい快適な除湿を実現した。換気機能も搭載しているので、温度・湿度をコントロールしながら、新鮮な空気を部屋の中に取り込むことができるのだ。
エアコン「エオリアLX」シリーズ
そのほか、ナノイー史上最速で部屋の有害物質を抑制する新ナノイーXを搭載した。なんでもOHラジカル量が従来品の100倍で、花粉や脱臭の抑制時間が約4分の1、カビ菌の抑制時間が約3分の1になったという。
テレビについても、今回の新製品では業界初のものが盛り込まれた。「レイアウトフリーテレビ」と名づけられた新製品は、モニターとチューナー部を分離し、4K画質にも対応した無線接続をすることでモニターのアンテナ線接続を不要とし、電源コート1本のみで視聴場所を選ぶことができるレイアウトフリーを実現した。
これは、「アンテナ線やレコーダーなどの機器のケーブルが届く範囲でしか設置できない」「テレビの位置によって家具のレイアウトが制限させる」といった不満に応えたものだ。しかも、モニターにキャスター付きスタンドを採用することで、壁に寄せたり、部屋の中央に設置したりと、好きな場所に簡単に動かせるのだ。
レイアウトフリーテレビ
家電がユーザーに音声で通知
また、新サービスとしてIoT家電を利用した「音声プッシュ通知」を10月から開始する。これはクラウドを介して各IoT対応家電をお互いに連携させ、洗濯の終了やエアコンが設定されている部屋の温度上昇など気がつきにくいことをタイムリーに家電が音声で知らせるというものだ。
そのほか、「ゴミの日」や「薬に時間」といったことも登録が可能で、うっかり忘れがちなことを音声で知らせることができる。さらに、くらしに役立つ他社のサービスとも連携させ、天気予報や宅配便の配送予定のお知らせも展開していくそうだ。事実、22年春にはヤマト運輸と協力し、「宅配便に関する通知」を行う予定だ。
「これからは家電を購入していただくだけでなく、購入した後のサービスも充実していく」(河野氏)方針で、「音声プッシュ通知」サービスのほかに、有料サービス「パナソニック ケア」を今秋発売のエアコン、洗濯機からスタートし、対象商品を順次拡大していく。
音声プッシュ通知
このサービスは、IoT家電の使用状況に応じてお手入れのタイミングを通知し、お手入れ部品や消耗品を届けるプランと、それに加えて修理保証がついてプランの2プランを提供する。エアコンはお知らせプランが7000円、メンテナンスプランが1万円。洗濯機は6000円と1万5000円となっている。修理保証付きプランでは、購入から最大5年間、故障の際には追加料金なしで修理対応を行うそうだ。
「家電領域でIoT技術の開発に力を注いでいき、2024年度の目標として、家電製品の中でIoT家電が構成比で6割になるようにする。さらに1000万人のユーザーとつながりを持っていきたい」と河野氏は強調する。今回発表した家電とサービスは、ニューノーマル時代に向けたパナソニックの新たな挑戦と言えよう。