写真左から、日本ミシュランタイヤミシュランガイド事業部執行役員の三輪唆矢佳氏、ミシュランガイド・インターナショナル・ディレクターのグウェンダル・プレネック氏、ホテル評論家の瀧澤信秋氏、ミシュランホテルサービス ヴァイスプレジデントのルーシー・リバーマン氏
日本ミシュランタイヤは11月15日、ミシュランガイドについての記者会見を行い、ホテルセレクションにおける新たな評価「ミシュランキー」を設定し、優れたホテルに与えると発表した。ミシュランガイドのセレクションチームが一般の旅行者を装って宿泊し、対象ホテルを2024年に決定する。(経済ジャーナリスト・山田清志)
情報がありすぎてホテル選びが困難に
「ミシュランガイドのユーザーを調査したら、ホテルなどの宿泊施設を選び際、平均して10のプラットフォームで10時間以上もかけて決めているということが分かった。価格を比較し、写真やお客のレビューを見るなどを何度も繰り返して、ようやく予約している。それで、実際に泊まってみたら、がっかりしたことがあるでしょう。今ほど選択することが難しいことがないかもしれない。それは情報が足りないからではなく、たくさんの情報がありすぎるからだ。しかもどの情報源に頼っていいか分からない。そこで、123年にわたって優れたレストランを紹介してきたミシュランガイドのチームが、ホテルも選んでいこうと考えた」
ミシュランガイド・インターナショナル・ディレクターのグウェンダル・プレネック氏はこう話し、ホテルのセレクションでもレストラン同様に厳しい格付けをしていくという。
ミシュランガイドは1900年にフランスで初版が刊行されて以降、優れたレストランに星を与えてきた。「私たちは常にモビリティの喜び、新たな場所を発見する楽しさ、そして特別な体験を積んでもらいたいという思いと情熱に突き動かされ、ミシュランガイドを世界中に紹介してきた。ミシュランはタイヤ事業に留まらず、金属積層造形などさまざまな事業を手がけるまでになったが、その中でもミシュランガイドは、ミシュランの象徴的なサービスである」と日本ミシュランタイヤミシュランガイド事業部執行役員の三輪唆矢佳氏は説明する。
現在では、世界40エリアでレストランを紹介し、その数は1万6000軒にものぼる。うち星を獲得しているレストランは3500軒を数える。ちなみに東京がミシュランガイドでセレクションされたのが2007年だった。日本に住んだこともあるプレネック氏によると、それはまさにゲームチェンジャーのようだったそうだ。というのも、いきなり東京が星をもらったレストランの数が一番多い都市になったからだ。
5つの評価基準と7つのルール
そんなミシュランガイドが、今度はホテルをセレクションすることになった。すでにミシュランガイドでは、レストランと同様に独自の評価基準によって、4年間で世界120カ国5300軒のホテルや旅館を紹介してきた。今度はそれらのホテルや旅館を軸に「ミシュランキー」で格付けをしようというわけだ。
その評価基準は(1)ホテル自体が旅の目的地であり、その土地ならではの体験ができる(2)素晴らしい建築とインテリアデザイン(3)施設の個性やユニークな特徴を反映した独自性がある(4)サービスの質、快適性、メンテナンスが行き届いている(5)価格に見合った体験ができる、という5つである。
プレネック氏によると、特に5番目の価格に見合った体験ができるかどうかが重要とのことだが、具体的なホテルについては言及しなかった。「レストランの評価と同様に、独立したチームが評価を行っている。しかも、非常に厳しい評価方法を守っており、それによって独立性を担保している。そのために7つのゴールデンルールがある」という。現在、セレクションチームの調査員は、25の国籍のスタッフが所属して45カ国以上で活躍している。
7つルールとは次の通りだ。
1番目が「誠実」で、ホテルエキスパートは一般客と同じように過ごして、匿名で調査し、必ず支払いをする。
2番目が「独立性」で、セレクションチームに商業目的はなく、調査と営業の部署は厳密に分けられている。
3番目が「専門性」で、専門的な知識を有する調査員のみを採用し、ミシュランで2年間のトレーニングを受ける。
4番目が「チームによる評価」で、選考は常に複数のホテルエキスパートによって行われ、個人的な判断の隔たりを防ぐようにしている。
5番目が「専属性」で、ミシュランのホテルエキスパートは利益相反を避けるため、ミシュラン専属の正社員が務め、単発の仕事で採用することはない。
6番目が「公平性」で、すべての施設は特別な配慮がされることなく公平な立場で評価される。いかなるブランド、カテゴリー、団体への所属も判断に影響を与えることはない。
7番目が「最新情報」で、ホテルエキスパートによる評価は、おすすめの宿泊施設を最新のものとするのに必要な頻度で行われる。
文字通り“忖度”なしでセレクションされるため、プレネック氏でも、その評価は発表するまで分からないのだ。「ミシュランキーは、旅行者が信頼できる明確な評価である。素晴らしいレストランの象徴であるミシュランの星と同様に、ミシュランキーは世界中の卓越したホテルを象徴するものだ。真摯かつ情熱的に仕事をするホテルスタッフのチームワークを称える意味もある。ミシュランキーがこれから世界で優れたホテルを格付けすることになる」とプレネック氏は話す。
ミシュランキーを獲得する宿泊施設は何軒になるのか分からないが、世界各地で厳選された5000軒以上が紹介される見込みで、すべてミシュランガイドの公式ウェブサイトと公式アプリから予約できるようになるそうだ。