マクラーレン・オートモーティブはこのほど、バーチャルレースのコンセプトカーを現実のものとした、サーキット専用モデル「ソーラスGT」を発表した。同車はゲームソフト「グランツーリスモSPORT」に登場する、マクラーレンの未来的なコンセプトカーに命を吹き込むため、同社の幅広い経験と専門性をフルに生かして製造したという。生産はわずか25台で、すべて売却済みだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
最高出力が840PSで最高速は320km/h以上
「まさにマクラーレンの開拓者精神を象徴している」とミハエル・ライタースCEO話すソーラスGTは、5.2リッターの自然吸気V10エンジンを搭載し、最高出力840PS、最大トルク650Nmを誇るモンスターマシン。しかも車重は1000kg以下で、発生するダウンフォースは1200kg以上である。
シングルシーターのレーシングカーを除けば、どのマクラーレンモデルよりも速いラップタイムをたたき出す能力を備え、そのドライビング・エクスペリエンスはF1カーで走る一体感と衝撃に近いものだという。もちろん加速性は抜群で、0~100km/h加速の目標タイムが2.5秒、最高速は320km/h以上とのことだ。
エクステリアで特に目を引くのは中央のシングルシートを覆うスライド式のキャノピーだ。前方にスライドし、現れた開口部から乗り込む。まるでジェット戦闘機に搭乗する感覚だという。
タイヤは空力的な形状のポッドで覆われ、サスペンション・アームの先に位置する。大きなフロント・スプリッターで取り込んだ空気は、グラウンド・エフェクト・トンネルを通過して、フルワイルドのディフューザーから排出される。インテークはコックピット上に配置し、ロールフープのカバーと一体化。冷たい空気をエンジンに供給するとともに、魅力的な吸気音を発するそうだ。
クルマの総重量を超えるダウンフォース量の鍵となっているのが、ツイン・エレメントの固定式リアウィングだ。ダウンフォースとドラッグの比率も最適化され、直線でのパフォーマンスが押し上げられるとともに、コーナーリング性能も高まった。
シートは各オーナーに合わせて型取り
ステアリング・ホイールは、マクラーレンモデルの中でも独特で、F1マシンからインスピレーションを得て、狭いシングルシーターのサーキット専用モデルに合わせて、ディスプレイと基本的な操作系がステアリングに一体化されている。ステアリングの向こう側はガラスのバブルが覆い、ヘイロー型コックピット保護装置が組み込まれている。そこに設置されたリアビュー・ディスプレイには、ロールフープ内の広角カメラからの映像が表示される。ドライビングポジションが中央のため、180度見渡せる左右対称の視界が開けるそうだ。
また、マクラーレン・オートモーティブによると、ソーラスGTのオーナーにさらなる興奮を味わってもらうために、ドライビングシートは各オーナーの体型に合わせて型取りするほか、FIA認可のレーシングスーツ、ヘルメット、HANSも各オーナーに合わせて特注する。さらにドライバー育成指導プログラムも提供する。
文字通り、1台1台のソーラスGTは唯一無二の存在と言っていいだろう。そのほか、開発プログラムの進捗状況も定期的に各オーナーにアップデートされ、プロトタイプのテスト走行にも参加でき、製造前にドライビング特性などについて要望を伝える機会も用意されている。現在、サーキットでテスト走行を行っており、2023年からデリバリーを開始する予定だ。