米電子計測器メーカー大手のキーサイト・テクノロジーの日本法人社長に就任した寺澤紳司氏が8月2日、東京都内で新社長就任記者会見を開き、半導体のイノベーションを加速する最先端ソリューション提供強化に注力すると表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)
特に、ここ1年ほど自動車をはじめ多様な分野で導入が拡大する「AI(人工知能)の展開を加速する」と話した。寺澤氏は8月1日付で、日本法人のキーサイト・テクノロジー社長およびグループ会社のキーサイト・テクノロジー・インターナショナル合同会社職務執行役社長(半導体テストソリューション事業部長を兼務)に就任。
前任のチエ・ジュン氏は米国キーサイト・テクノロジー・インクに戻り、コア・プロダクト・マネジメントのバイスプレジデントに就任した。寺澤氏は日本法人で「初の開発出身の社長だ」と自身を紹介。
キーサイトは電子計測器が祖業の米ヒューレット・パッカード(HP)からスピンアウトした会社だが、その前身の横河ヒューレット・パッカードに入社。以降、エンジニアとして同グループ一筋に勤務し、HPの風土をもつキーサイトについて「風通しがよく、新しいことに挑戦させてくれる企業」と評価した。
2018年にはキーサイト・テクノロジー・インクのバイスプレジデントおよび半導体テストソリューション事業部長も歴任した。こうした経歴を踏まえ、寺澤新社長はキーサイト日本法人の取り組みに当たり、今や自動車にも欠かせない半導体の進化に、半導体メーカーとともに推進する考えを表明した。
日進月歩の半導体をめぐっては、最先端化の競争が激化。これを勝ち抜くには、いち早く最適な半導体の製品化が求められている。これに対し、キーサイトは最先端の半導体の開発に向け、スピード感のある設計支援、評価テストなどの環境ソリューションを提供する。
寺澤新社長はこうした最先端の半導体の開発支援に「我々は半導体メーカーと協業しながら取り組んでおり、それも最先端の一歩先を行くソリューションを目指している」と話す。
また同社のソリューションを活用することで、半導体の開発期間が半減したケースもあるという。自動車分野では、自動運転の取り組みを例に掲げて、車載レーザーセンサーが検出するレーザー反射をエミュレートする史上初の技術、アルゴリズムトレーニングを支援するソリューションを紹介。
特に自動車分野は「信頼性の高い情報、品質が重要」として、顧客と一体になったテスト環境を提供推進する方針を示す。EV(電気自動車)などへ搭載が急ピッチで拡大しているシリコンカーバイト(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などの次世代パワー半導体向けにも、革新的なテストソリューションを今年後半に発表する予定という。
日本事業については、HPが海外で最初に開発拠点を設けたのが現在のキーサイト日本法人の本社となっている東京・八王子とし、その時から多くの新技術が日本から発信されていると強調した。
半導体でいえば、企業の数は減ったものの、今も素材から製品まで「日本発の技術は少なくない」と顧客との一体感をアピール。このため、日本法人も「開発部門と営業部門の連携を強化」し、日本の半導体の拡大に寄与すると表明した。
なお日本には東京・八王子と神戸の2カ所に拠点を持つ。キーサイトはパラメトリックテスト分野で世界トップだ。そんなキーサイト・テクノロジーは8月2日、ソリューション・計測器を展示する「キーサイト・ワールド」を東京都内で開催し、自動車関連では「自動運転・機能安全の検証」「充放電テスト、バッテリー開発を加速」「回生型直流電源、小型、軽量」「EV充電評価」などのテスト環境を披露した。
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寺澤社長の略歴
1988年4月横河ヒューレット・パッカード入社、2009年7月半導体パラメトリックテスト事業部マーケティング部部長、2018年11月半導体テストソリューション事業部長。(なお横河ヒューレット・パッカードは1999年11月に日本ヒューレット・パッカードに、2014年8月にアジレント・テクノロジーに社名変更し、2014年同社電子事業部門がキーサイト・テクノロジー合同会社に分割、2018年7月に同株式会社へ組織変更した)