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2023年2月8日【ESG】

経団連、第2回「モビリティ委員会」を開催

坂上 賢治

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経団連(日本経済団体連合会/十倉雅和会長)は2月8日、東京・大手町の経団連会館で「モビリティ委員会(十倉雅和委員長、豊田章男委員長、有馬浩二委員長)」の第2回目となる会合を開催した。

 

このモビリティ委員会は、国際競争力の強化を通じて日本経済全体の成長を目指すべく2022年6月に新設された。そして先の9月22日にキックオフ会合を開催。その日はオンラインを含めて約400人が参加し、モビリティを軸とした成長ビジョンについて意見交換が行われた。

 

限られた資源の中でムダを減らし資源を有効活用するべき

 

これを踏まえた第2回会合では、東京・大手町の経団連会館でオンライン含めて510名が参加。カーボンニュートラル(CN/炭素中立)の実現に向けて意見交換が行われた。

 

また併せてトヨタ・リサーチ・ インスティテュート最高経営責任者のギル・プラット氏を講師に招いた特別講演が実施された。

 

登壇したプラット氏は「リーン生産方式の教訓を気候変動問題に活用」と題した公演で、BEV製造に係るリチウム資源問題を提起。

 

その概要は、電池工場は2〜3年の期間を掛ければ建設出来る。しかし鉱山の開発には10〜15年の期間が必要なため、このままではいずれ電池の需要に供給が追い付かなくなるだろう。いずれはリチウム資源は、今後10〜20年で30〜50%の不足が見込まれるようになる。

 

従ってCNに係る課題解決の本流は、〝限られた資源の中でムダを減らし、資源を有効活用する〟事が鍵だ。先のダボス(世界経済フォーラム)でも世界のリーダーやメディアは同じ見方をし始めている。

 

これを受けて日本でも、多様な電動車の選択肢を提供すべきであり、そうなれば個々の地域事情に関わらず、誰もが炭素中立へ向けて貢献出来るようになる。

 

また仮に、電池資源や充電インフラの制約が発生したとしても、他の手段とは異なり、CO2の総排出量を最大規模で削減出来るようになる。

 

つまりG7に向けては、新車のゼロエミッション車(ZEV)の登録目標値などではなく、足下での具体的なCO2削減目標こそが必要である。そうした流れから客観的なデータや事例を踏まえたCO2削減目標達成への〝多様な選択肢〟の必要性について説いた。

 

モビリティ産業の国際競争力強化が日本の持続的成長の鍵

 

十倉雅和 氏(経団連会長 ・住友化学会長)モビリティ委員会委員長は、「本委員会は、裾野の広いモビリティ産業の国際競争力の強化こそが日本経済全体の持続的成長のカギを握るという認識の下、昨年6月に発足し、9月にはキックオフ会合を行い、モビリティを軸とした成長ビジョンなについて意見交換を行った。

 

その後、委員を対象に関心分野や政府への要望事項についてアンケートを実施している。その後11月には、岸田総理をヘッドに官邸主催による政府関係閣僚との懇談の機会を得た。

 

そこで先のアンケートで示された委員各位の意見を踏まえ、各省の縦割りを排して、政府・与党のリーダーシップの下、省庁横断的な取組みを進めていく事への期待について岸田総理に要望を伝えた。

 

併せて、自民党の各種勉強会でも本委員会の問題意識を説明した。そもそも本年は広島でG7サミットが開催され、2025年には大阪・関西万博を控えている。

 

この機会を捉えて我が国も、2050年のカーボンニュートラル実現への責務を果たす事を国際的に発信を行っていくべきだ。そのためにはモビリティ産業を始め様々な産業が一緒になって社会実装を加速していく事が必要だ」と述べた。

 

科学的な見地から日本らしいカーボンニュートラルの実現へ

 

続いて豊田章男(日本自動車工業会会長・トヨタ自動車社長)モビリティ委員会委員長は、「今年は日本でG7が開催されるため、日本らしいカーボンニュートラルについて各国首脳へ理解頂く良い機会になると思う。

 

もとより日本は、世界トップレベルの省エネ国であり、グローバルで比較しても日本は同じ価値を産み出すために必要とするエネルギーが主要国で最も低いという実績がある。

 

これはエネルギー効率で言うと、世界平均の2倍以上だ。そしてそれを支えているのが、各企業の優れた省エネ技術である。

 

一方で、エネルギーを〝つくる・運ぶ・使う〟という一気通貫での取り組みは、まだ始まったばかりだ。

 

例えば、日本で1年間に販売している480万台の新車を全て電気自動車(EV/BEVに置き換えようとすると、その電力を賄うため毎年、原子力発電所を1基新設する事が必要だ。

 

それに対し、欧米やアジアは既に官民一体となって自国の未来の絵姿を描き、具体的な産業政策に繋げている。このままでは日本は世界から取り残されかねない、日本をなんとかしたい、そんな危機感を強くしている。

 

このモビリティ委員会には200社の企業に参加頂いており、私たち企業の強みは〝行動力〟と〝実現力〟だと思う。そして、その大前提となっているのは〝今、何が起こっているのか〟という事実を正しく理解する事だ。

 

本日は、科学的な見地から日本らしいカーボンニュートラルを進める上でベースとなる事実を共有する場にしたい。そしてその共通認識で、日本の未来、地球の未来のために、どのような行動を起こすべきか、議論させて貰えればと思う」と締め括った。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。