経団連(日本経済団体連合会/十倉雅和会長)は2月8日、東京・大手町の経団連会館で「モビリティ委員会(十倉雅和委員長、豊田章男委員長、有馬浩二委員長)」の第2回目となる会合を開催した。
このモビリティ委員会は、国際競争力の強化を通じて日本経済全体の成長を目指すべく2022年6月に新設された。そして先の9月22日にキックオフ会合を開催。その日はオンラインを含めて約400人が参加し、モビリティを軸とした成長ビジョンについて意見交換が行われた。
限られた資源の中でムダを減らし資源を有効活用するべき
これを踏まえた第2回会合では、東京・大手町の経団連会館でオンライン含めて510名が参加。カーボンニュートラル(CN/炭素中立)の実現に向けて意見交換が行われた。
また併せてトヨタ・リサーチ・ インスティテュート最高経営責任者のギル・プラット氏を講師に招いた特別講演が実施された。
登壇したプラット氏は「リーン生産方式の教訓を気候変動問題に活用」と題した公演で、BEV製造に係るリチウム資源問題を提起。
その概要は、電池工場は2〜3年の期間を掛ければ建設出来る。しかし鉱山の開発には10〜15年の期間が必要なため、このままではいずれ電池の需要に供給が追い付かなくなるだろう。いずれはリチウム資源は、今後10〜20年で30〜50%の不足が見込まれるようになる。
従ってCNに係る課題解決の本流は、〝限られた資源の中でムダを減らし、資源を有効活用する〟事が鍵だ。先のダボス(世界経済フォーラム)でも世界のリーダーやメディアは同じ見方をし始めている。
これを受けて日本でも、多様な電動車の選択肢を提供すべきであり、そうなれば個々の地域事情に関わらず、誰もが炭素中立へ向けて貢献出来るようになる。
また仮に、電池資源や充電インフラの制約が発生したとしても、他の手段とは異なり、CO2の総排出量を最大規模で削減出来るようになる。
つまりG7に向けては、新車のゼロエミッション車(ZEV)の登録目標値などではなく、足下での具体的なCO2削減目標こそが必要である。そうした流れから客観的なデータや事例を踏まえたCO2削減目標達成への〝多様な選択肢〟の必要性について説いた。
モビリティ産業の国際競争力強化が日本の持続的成長の鍵
十倉雅和 氏(経団連会長 ・住友化学会長)モビリティ委員会委員長は、「本委員会は、裾野の広いモビリティ産業の国際競争力の強化こそが日本経済全体の持続的成長のカギを握るという認識の下、昨年6月に発足し、9月にはキックオフ会合を行い、モビリティを軸とした成長ビジョンなについて意見交換を行った。
その後、委員を対象に関心分野や政府への要望事項についてアンケートを実施している。その後11月には、岸田総理をヘッドに官邸主催による政府関係閣僚との懇談の機会を得た。
そこで先のアンケートで示された委員各位の意見を踏まえ、各省の縦割りを排して、政府・与党のリーダーシップの下、省庁横断的な取組みを進めていく事への期待について岸田総理に要望を伝えた。
併せて、自民党の各種勉強会でも本委員会の問題意識を説明した。そもそも本年は広島でG7サミットが開催され、2025年には大阪・関西万博を控えている。
この機会を捉えて我が国も、2050年のカーボンニュートラル実現への責務を果たす事を国際的に発信を行っていくべきだ。そのためにはモビリティ産業を始め様々な産業が一緒になって社会実装を加速していく事が必要だ」と述べた。
科学的な見地から日本らしいカーボンニュートラルの実現へ
続いて豊田章男(日本自動車工業会会長・トヨタ自動車社長)モビリティ委員会委員長は、「今年は日本でG7が開催されるため、日本らしいカーボンニュートラルについて各国首脳へ理解頂く良い機会になると思う。
もとより日本は、世界トップレベルの省エネ国であり、グローバルで比較しても日本は同じ価値を産み出すために必要とするエネルギーが主要国で最も低いという実績がある。
これはエネルギー効率で言うと、世界平均の2倍以上だ。そしてそれを支えているのが、各企業の優れた省エネ技術である。
一方で、エネルギーを〝つくる・運ぶ・使う〟という一気通貫での取り組みは、まだ始まったばかりだ。
例えば、日本で1年間に販売している480万台の新車を全て電気自動車(EV/BEVに置き換えようとすると、その電力を賄うため毎年、原子力発電所を1基新設する事が必要だ。
それに対し、欧米やアジアは既に官民一体となって自国の未来の絵姿を描き、具体的な産業政策に繋げている。このままでは日本は世界から取り残されかねない、日本をなんとかしたい、そんな危機感を強くしている。
このモビリティ委員会には200社の企業に参加頂いており、私たち企業の強みは〝行動力〟と〝実現力〟だと思う。そして、その大前提となっているのは〝今、何が起こっているのか〟という事実を正しく理解する事だ。
本日は、科学的な見地から日本らしいカーボンニュートラルを進める上でベースとなる事実を共有する場にしたい。そしてその共通認識で、日本の未来、地球の未来のために、どのような行動を起こすべきか、議論させて貰えればと思う」と締め括った。