公正取引委員会( 公取委 )は、日産自動車( 神奈川県横浜市西区 )が「割戻金」の名目で下請け業者に代金の引き下げを迫っていたとして3月7日、下請法違反(減額の禁止)を認定。再発防止や順法体制の整備を求める勧告を出し、過去最高となる30億円の減額も認定した。なお日産自動車は、減額分を既に下請け業者へ支払い、割戻金の運用も廃止したという。
より具体的に公取委は、少なくとも2021年1月から2023年4月の期間、日産自動車が取引先企業36社に対して事前に決めた支払金額を一方的に減額した事柄に対して調査を行ってきたところ、下請代金支払遅延等防止法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に違反する行為が認められたことから、標記同日、下請法第7条第2項の規定に基づき同社に対し勧告を行った。公取委が記した、その違反概要は以下の通り。
1.違反行為者の概要
法 人 番 号:9020001031109
名 称:日産自動車株式会社
本店所在地:横浜市神奈川区宝町2番地
代 表 者:代表執行役 内田 誠
事業の概要:自動車等の製造販売
資 本 金:6058億1373万4035円
2.違反事実の概要
(2−1)日産自動車は、資本金の額が3億円以下の法人たる事業者(以下「下請事業者」)に対し、自社が販売する自動車の部品等の製造を委託している。
(2−2)日産自動車は、令和3年1月から令和5年4月までの間、自社の原価低減を目的に、下請代金の額から「割戻金」を差し引くことにより、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じていた。減額した金額は、総額30億2367万6843円である(下請事業者36名)。
(2−3)日産自動車は、令和6年1月31日、下請事業者に対し、前記(2−2)の行為により減額した金額を支払っている。
3.勧告の概要
(3−1)日産自動車は、次の事項を取締役会の決議により確認すること。
ア.前記2(2−2)の行為が下請法第4条第1項第3号の規定に違反するものであること。
イ.今後、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じないこと。
(3−2)日産自動車は、今後、下請法に違反することがないよう、次の行為を行うなど経営責任者を中心とする社内遵法管理体制の整備のために必要な措置を講ずること。
ア.法務担当者による下請法の遵守状況についての定期的な監査。
イ.役員及び発注担当者に対する下請法遵守のための定期的な研修。
(3−3)日産自動車は、次の事項を自社の役員及び従業員に周知徹底すること。
ア.減額した金額を下請事業者に支払ったこと。
イ.前記(3−1)及び(3−2)に基づいて採った措置。
(3−4)日産自動車は、次の事項を取引先下請事業者に通知すること。
ア.減額した金額を下請事業者に支払ったこと。
イ.前記(3−1)から(3−3)までに基づいて採った措置。
(3−5)日産自動車は、前記⑴から⑷までに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること。
4.業界団体に対する周知・啓発活動
自動車製造業に於いては、近年、本件と類似の違反行為が生じ、公正取引委員会が下請法に基づく勧告を行っている。また、下請法に違反するおそれのある行為についても継続して生じており、指導等の対象ともなっている。
公正取引委員会としては、このような状況を踏まえ、引き続き、自動車製造業における下請法違反行為に対し、厳正に対処していくと共に、改めて業界団体への周知等を通じた啓発活動を行っていくこととしている。
なお上記の商習慣は、公取委によると今回認定した2年間を超えて長年、習慣的に行われていた懸念があり、日産自動車側は、本件の違法性を認識していなかった可能性がある。そのため先の通り、公取委は日産自動車に対して法律順守の管理体制を整備するよう強く求めた。
関連ファイル
( 公取委/令和6年3月7日 )日産自動車株式会社に対する勧告について pdf文書ダウンロード( 490 KB )