
公正取引委員会は3月24日、独占禁止法の規定( 不当な取引制限に係る独占禁止法違反 )に基づき、機械式駐車装置メーカーら5社に対し排除措置命令を発表した。そのうち4社には計5億2613億円の課徴金納付命令を出した。また当該5社は、商業施設などに設置される機械式駐車場の工事に関わり受注調整を繰り返していた。
排除措置命令を受けたのは、新明和工業並びに住友重機械工業子会社の住友重機械搬送システム( 所在地:東京都品川区、代表取締役社長:斎藤信也 )、日精( 所在地:東京都港区、代表取締役社長:川畑淳一 )、当該製品代理店のフジパスク( 所在地:東京都世田谷区、代表取締役社長:小林秀行 )、日本コンベヤ( 所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:梶原浩規 )の4社。課徴金納付命令は日本コンベヤを除く4社。
公取委の発表によると、各社は2017年6月以降、車両を水平循環方式で駐車する機械式駐車場や、エレベーター方式の機械式駐車場の受注獲得で、担当者が見積り価格を事前に協議して特定企業が受注できるよう調整していた。
より具体的には、建設業者から確認申請図に基づく設置工事の見積依頼があった場合に、それぞれで互いに連絡を取り合い確認申請図採用メーカー以外から供給意欲が示されない限り、当初の確認申請図の採用メーカーを供給予定者とする。
機械式駐車場メーカーが製品代理店の下請として工事を請け負う予定の場合に、代理店が提示価格を定めておき、特定外のメーカーは提示額以上の見積価格を提示する。
建設業者から確認申請図に基づき駐車場設置工事の見積依頼があった場合に、複数の参画メーカー間で連絡を取り合い、建設業者から特段の供給意欲が示されない限り、予め談合していた供給予定者が受注する仕組みとするなどの事前調整を行っていた。
なお排除措置命令が出た5社の他にも3社が立ち入り検査の対象企業となっており、IHI運搬機械( 所在地:東京都中央区、代表取締役社長:赤松真生 )は違反が認められたものの、課徴金減免制度を通じて違反を自主申告したため今回は処分を免れた。
また日本ケーブル( 所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:大久保俊吾 )と日成ビルド工業( 所在地:石川県金沢市、代表取締役社長:木村明文社長 )は受注調整への関与がなかったとされた。なお排除措置命令や課徴金納付命令を受けた企業は、各々社内に於いて、関係役員の報酬減等の処分を発表している。
違反事業者、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者、課徴金額
(1)特定地下式PS設置工事
(2)特定エレベーター方式PS設置工事
加えて今審査過程で、立体駐車場工業会(所在地:東京都中央区、会長:中野恭介)で複数企業の営業担当者が広報委員会・委員を務めていたことを重く見た公取委は、当該工業会に対して適切に組織運営に留意するよう以下の趣旨を踏まえ要請した。
本件では、立体駐車場工業会の会員である日精、住友重機械搬送システム、新明和工業及び日本コンベヤ並びに同工業会の会員であったIHI運搬機械及びエヌエイチパーキングシステムズの6社を含む違反事業者による違反行為が行われた。
また本件審査の過程に於いて、同6社のうち複数の会社の営業担当者が、同工業会の広報委員会の委員を務めることで他社の営業担当者と関係を築き、互いに連絡を取り合うなどして違反行為に関与していた事実が認められた。
以上のことから、公正取引委員会は、今後、立体駐車場工業会の会員が営む機械式駐車装置に関する事業に於いて同様の行為が行われることがないよう、 同工業会に対し、独占禁止法の遵守について会員事業者に周知徹底すると共に、同工業会の広報委員会等の組織に於いて会員各社の営業担当者が構成員になることなどによって、 これらの者の間で営業情報について連絡を取りやすい関係が生じ得ることにも留意し組織運営を適切に行うよう要請する。