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2024年10月2日【トピックス】

自工会、自動車関係税制の改革案を示す

松下次男

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写真向かって左から日本自動車工業会 理事・高橋信行 事務局長、日本自動車工業会 後藤収 税制部会長

 

日本自動車工業会は10月2日、自動車関係諸税に関する説明会を開き、新しい時代に相応しい税制の抜本的改革案を提案、表明した。現行税制は複雑で高負担すぎるとし、改革案では取得時は「消費税」に一本化し、保有時は「重量」ベースに、「環境性能」の増減を加味した仕組みを示した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

説明会では「令和7年度税制改革・予算要望及び自動車税制抜本見直しの改革案」の2つのステップで、政府などへ要望する考えを説明した。 

 

ただ、令和7年度の税制改正・予算への要望は期限切れとなる租税特別措置の延長や電動車などの車両購入・インフラ整備に関する補助金の拡充・延長などにとどめ、要望の主体は自動車関係諸税の抜本的見直しの議論を進めていくことを求めた。

 

EV(電気自動車)など電動車へ税対応が課題になっていることなどから、昨年の税制改正議論の中で自動車関係諸税の抜本的見直しを来年末までの約2年間程度かけて検討することが取り上げられ、議論が本格的に動きだすことになった。

 

本来なら、来年度の税制改正で大枠の議論が進め見通しだったとしたが、石破茂内閣の発足に伴う衆議院選挙などの政治日程が重なることから、後藤収税制部会長は議論が「少し後ろにずれ込むだろう」との見通しを示した。

 

自動車関係諸税の抜本的見直しを進める背景として、自工会では自動車産業は100年に一度の大変革期の中にあるとし、新興国メーカーとの競争激化や少子高齢化に伴う日本市場の規模・地位の低下などで、自動車産業の存続が困難となる危機に直面していると指摘。

 

さらに自動車産業が基幹産業として、今後も日本経済・社会に貢献するには、従来の枠組みを超え、バリューチェーン全体で「モビリティ産業」へと変革し、「モビリティ産業への発展による新しい価値創出」が必要と訴えた。

 

これを踏まえ、自動車分野のカーボンニュートラル実現に向けては、「マルチパスでのCO2(二酸化炭素)削減」の加速化が急務とし、自動車産業がかつてない変化を求められている中、現行の自動車税制の税体系や課税根拠は社会の変化スピードに適応できておらず、抜本的な見直しが必要との考えを示した。

 

このため、抜本見直しに当たって、一案としてあがっている走行距離/出力課税への論点についてはEVなどへの局所的な課税に過ぎず、包括的な抜本的見直しとして議論すべきと反対を表明。

 

環境激変への適応や魅力ある日本市場の形成・活性化を図っていくためにも、新たなモビリティ社会を踏まえた公平簡素な税制の実現を求め、国民的な議論を深めていくべきと言及した。

 

 

具体的には、抜本見直しの改革案として「取得時」「「保有時」「モビリティの受益に応じた新たな課税・負担の枠組み」の3本柱を提案。 目指す姿はパワートレイン間で公平・普遍かつ簡素な税制、保有ベースでCO2を削減し、国内市場の活性化を目指すものだ。

 

取得時は「消費税」に一本化し、簡素化の観点から環境性能に関わる税は保有時に集約する。これまでの環境性能割は廃止し、二重課税を解消することで、国内市場を活性化させる。

 

保有時は「重量」ベースで課税標準を統一し、「環境性能」に応じた増減の仕組みでCO2を削減する。電動化に伴い現行の自動車税の排気量に応じた課税は普遍的な指標とならないという。

 

加えて、保有時の課税標準を「重量」に統一し、ガソリン車からEVや燃料電池車(FCV)まで共通の物差しで課税。課税標準が同じとなる自動車税と重量税を統合し、簡素化する。50年以上継続している暫定税率を廃止し、負担軽減を図ることを求めた。

 

保有ベースでのCO2削減では、環境性能に応じて負担が増減する仕組みを導入し、一定期間後既販車にも適用して保有段階でのCO2削減・環境性能の底上げを図る。

 

利用に応じた負担の適正化では、モビリティの受益に応じた新たな課税・負担の枠組みを提案。モビリティによる受益の拡大を踏まえ、保有者に偏る負担を見直し、自動車所有者以外の受益も考慮した公平で、持続的な課税のあり方の検討を掲げた。

 

こうした取り組みにより、モビリティ時代に相応しい公平で持続的な税制を目指すべきとの考えを打ち出す。詳細な課税ベースについては、政府および自民党などの与党の税制調査会での議論に委ねるとした。

 

令和7年度の税制改正要望では、期限切れとなるバリアフリー車両や先進安全技術を搭載したトラック・バスなどの租税特別措置(自動車税環境性能割)の延長や水素ステーションの特例措置延長、BEV/FCV改造車両に対するエコカー減税適用要件の見直しなどを要望する方針。

 

予算関連では、電動車の普及の要となる車両購入/インフラ補助金をユーザーが確実に補助を受けられるようシームレスな予算を確保できるよう要望する。

 

具体的には、CEV(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)の拡充・延長、商用電動車(トラック、バス、バン、タクシー)補助金の拡充・延長、充電インフラ設備・V2H/外部給電器補助金・水素ステーション設備への支援などを求めていく方針。

 

 

説明会での主な質疑応答は次のとおり。

 

――走行距離課税に反対する背景を教えてください。
「昨年までの議論ですと、走行距離課税については燃料課税の対象とならないEVのみを検討するということでしたので、その前提ですと、簡素化を求めている我々としてはますます複雑化し、逆方向になります。しかも抜本的見直しを求めている中で、その部分だけを取り上げるというのはおかしいと持っています。それについて議論するなというのではなく、あくまでも全体の中で議論すべきだと考えています」

 

――現行の環境性能割を廃止すべきという理由は。
「世界的に見て、日本の自動車関係諸税は負担が重く、負担を軽減すべきという考えから廃止を求めており、実現するかは税当局との議論になります」

 

――代わって、保有時に一本化し、環境性能に応じた増減の仕組みということを提案しておりますが、例えばガソリン車などは高くなるのでしょうか。
「議論として、今年大枠を決めてもらい、具体的な課税その他の階段部分については次年度以降の議論となります。今の段階で、確定したものがあるわけではありません」

 

――揮発油税に関してはどのように考えているのでしょうか。
「燃料課税については、私どもは意見を出しておりません。その分については、燃料課税の議論が動いているのを見守りたいと思っています」

 

――重量ベースの課税の考え方は。例えば、EVであっても負担が増えるケースも考えられるのでしょうか。
「重たいバッテリーを搭載する車両や大型車などでは高くなるでしょう。一方で、環境性能を加味するわけですから、その分、負担は下がります。階段部分の議論は来年度以降になると思いますが、環境性能に優れるといってすべてが負担ゼロになるわけではありません」

 

――保有時の環境性能を反映した税制という点では、新車への代替を促進させることになるのでしょうか。
「保有時の環境性能の導入というのは、カーボンニュートラル実現に向けてCO2削減を目指すものであり、環境性能の悪い古いクルマは良いものに乗り換えていただくのが望ましいということであります。だからと言って、古いクルマであっても環境性能の良いクルマはそのままお乗りいただければよいわけで、一律に高経年車を高くする必要はないと考えています」

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。