自動車産業の発展のため、事業活動でも垣根を越えて協業が不可欠
日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車会長)は9月21日、オンラインで理事会後の記者会見を開き、約1か月後に迫ったジャパンモビリティショー開催に向け各社のトップを先導に「全力で盛り上げていきたい」と表明した。会期中、100万人以上の来場者を目指すとも述べた。(佃モビリティ総研・松下次男)
記者会見には片山正則いすゞ自動車会長、鈴木俊宏スズキ社長、佐藤恒治トヨタ自動車社長、内田誠日産自動車社長、三部敏宏ホンダ社長、日髙祥博ヤマハ発動機社長、永塚誠一氏(自工会)の各副会長が同席した。
ジャパンモビリティショーは10月26日から11月5日まで、東京ビッグサイト(東京都江東区)を中心に開催する。2022年開催予定だった東京モーターショーはコロナ禍で中止となったため、今回の開催は4年ぶり。
東京モーターショーからジャパンモビリティショーへと衣替えした狙いについて豊田会長は「東京モーターショー改革をさらに進化させる」ことだとアピールした。
世界的にモーターショーの来場者は減り続けており、東京モーターショーも例外ではなかった。
このため、前回開催の2019年東京モーターショーでもCASE革命により「100年に一度」と言われる大変革期に突入する中、「次の100年もクルマはモビリティ社会の主役でいられるのか、突きつけられた命題であった」と受け止め、豊田会長は「人が集まるモーターショーにチャレンジしよう」ということを掲げ、改革に取り組んだ。
ショーには過去最多の400社以上(前回は192社)が参加する見込み
そこで経済界協議会と連携し、日本の最新技術や未来が体感できる「フューチャー エクスポ」、eモータースポーツ大会など、面白いと思う企画のすべてゴーサインを出したという。その結果、130万人(2017年は77万人)の来場者を達成した。
その後、コロナ禍という未曽有の危機に直面し、移動が制限されるなど、新たな生活シーが求められるようになった一方で、オンラインミーティングやフードデリバリーなど、つながるための新しい技術・サービスも進化した。
そこでコロナ危機を乗り越えた今、豊田会長は「東京モーターショー改革」をさらに一歩、前に進めるという決意を込め、今年から「ジャパンモビリティショー」へと進化させると訴え、「クルマからモビリティへ」「東京からジャパンへ」と内容を衣替えし、「日本発」の未来を世界に発信すると表明した。
今回のジャパンモビリティショーには過去最多の400社以上(前回は192社)が参加し、スタートアップ企業と既存の企業のマッチングなど、新しいビジネス機会を提供する。モビリティが実現する未来や街を体感できる「東京フューチャーツアー」や水素エネルギーを使ったエンタメイベントなどの企画も目白押しだ。
ビッグモーターの問題では健全な市場環境を築くため業界一丸で取り組む
豊田会長はこのような新生ジャパンモビリティショーについて「乗りたい未来を、探しにいこう!」をというテーマのもとに、会場に足を運び、楽しんでほしいと呼びかけた。
ジャパンモビリティショー開催に向けた準備状況については、内田副会長から「順調に進んでいる」と述べたあと、主催者プログラムの取り組みなどを紹介した。
事業領域では、日野自動車がトヨタ自動車などが出資する商用車の技術開発会社「CJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)」に復帰することを理事会で了承されたと豊田会長が明らかにした。
日野はエンジン性能試験の不正問題発覚からCJPTを8月に除名されていた。復帰は10月の見通し。
片山副会長はカーボンニュートラル対応や運転者の労働時間が制約される2024年問題などからも国内の「商用車4社の協調領域が拡大し、重要性が増している」と話した。
また、ビッグモーターによる保険金の不正請求問題について三部副会長は「業界全体の信頼を失墜かねない重大な問題と捉えている」としたうえで、「健全な市場環境を築き、持続可能な社会を実現するため、業界一丸となって取り組みたい」と述べた。
電動化に関する国際競争力強化では、第一義的に「お客様に選んでいただけるもっと良いクルマを作る」こととしたうえで、協調領域拡大の重要性と佐藤副会長は訴えた。