23年年間の輸入EV販売台数は2万台の大台乗せも見えてきた
日本自動車輸入組合(JAIA)の上野金太郎理事長(メルセデス・ベンツ日本社長)は7月25日、東京都内で定例記者会見を開き、2023年の輸入EV(電気自動車)の販売台数で「2万台の大台も見えてきた」と述べるなどEVの急拡大に期待を寄せた。(佃モビリティ総研・松下次男)
輸入EVは2022年、1万4341台販売し、初めて1万台を突破。さらに2023年上半期(1~6月)の販売実績でも9239台に達し、前期の約1・8倍の伸びとなった。
政府による補助金などの支援策やメンバー各社がEVのラインナップを16ブランド95モデルまで拡充したのが伸びた要因だ。
上野理事長は引き続き下期にかけてもインポーター各社から魅力的なEV投入が計画されるなど、市場活性化をEVが主導するとの見解を示し、倍々ゲームに近い伸びでEVの販売がわずか1年で1万台から2万台の大台乗せとなる可能性が出てきた。
外国メーカー車の登録台数は4ブランドが過去最高を記録したものの、2023年上半期の輸入車総計は前期上半期と比べて0・6%減の15万3034台にとどまった。
ただし、会員インポーター各社の状況はおおむね回復基調にあると考え、EVの販売が着実に伸びることにより「輸入車市場がさらに活性化され、全体の販売台数がコロナ禍前の水準に近づくことを期待している」と述べた。
JAIAの主要活動では、まず電動車の普及、拡大に向け、補助金制度などの要望活動のほか、普及イベントの開催、充電インフラの環境整備、バッテリーリサイクルなどの取り組みを進めていることを掲げた。
このうち、普及イベントでは2021年から輸入電動車普及促進のプラットフォームを展開しており、今年も7月14日から15日の二日間、神戸で「JAIA輸入電動車普及促進イベント」を開催。四輪インポーターから10社28台、二輪インポーターから1社3台が展示された。
今年のイベントには政府関係者やメディアのみならず、一般にも参加枠を広げて、輸入電動車の魅力を知っていただく機会を提供。上野理事長は個人的見解としながら「すでに輸入電動車の認知度は高く、実際に、確認する場として来場した人も少ななかった」と述べた。
さらに今年10月末に東京で開催されるジャパンモビリティショーに個社の出展とは別途に、輸入電動車の魅力を広く紹介するためのブースを会員メンバーの参加を得て開設する予定だと表明した。
充電インフラ拡充に関する横断的なチームをJAIA内に立ち上げ
電動車の普及のためには誰にでも使いやすい充電インフラの充足が不可欠だ。このため、経産省が進める2030年に向けた充電インフラのロードマップ策定のために官民連絡会の議論の進展に期待するとともに、充電インフラに関する幅広い課題に対応するため、JAIA内にも横断的なチームを立ち上げ、検討を進めていることを明らかにした。
上野理事長は「6キロワット超の普通充電器への補助金適用など高出力化への支援、超急速充電が実現するような電圧規制の緩和などの環境整備が重要な課題」と話すともに、高速道路上の充電インフラの充実、集合住宅への充電器設置などを求めた。
税制改正要望では、引き続き過重な自動車関係諸税の負担の更なる軽減と税制の簡素化・公平化を求める要望活動を展開。加えて、日本市場における電動車普及が十分に軌道に乗り、カーボンニュートラル政策に沿って諸外国と同等のレベルに達するまで、全ての電動車が税制の優遇を受けられるよう政策的支援の継続を求めた。
このほか、安全・環境性能を確保した輸入車を日本の消費者へ追加コストをかけずに提供していくための相互承認制度の拡充への取り組みや7月からコネクテッドカーなどの車両安全確保のために重要となる車載システムのサイバーセキュリティ(CS)/ソフトウエア・アップデート(SU)の法規が輸入車にも本格的に適用となったことなどと説明した。
また、喫緊の課題となっている整備人材の不足では自動車整備専門学校・大学校との連携や外国人人材の活用検討などを掲げて、JAIA内に設置した「自動車整備人材関連情報連絡会」などを通じて働きかけていく考えを示した。
モーターサイクルでは、2023年上半期の輸入小型二輪車の新規登録台数が1万3925台と前年同期比べ7・3%増加し、4期連続の増加となった。
好調の要因として、コロナ禍の影響を受けた「3密を回避した移動手段」や「密を避け一人で楽しめるツーリングキャンプ」などの趣味性の高まり、かつ個性的な輸入二輪車に目が向いたことなどを掲げた。
モーターサイクルに関する活動では、二輪車高速道路料金の独立化や二輪駐車場の拡充、二輪免許制度の見直しの要望などに取り組む考えを示した。