NEXT MOBILITY

MENU

2023年10月14日【イベント】

自工会・二輪車委員会、第7回メディアミーティングを開く

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

日本自動車工業会の二輪車委員会は「ジャパンモビリティショー2023」の開幕を控えた10月13日、東京都港区の自動車会館に報道陣を募り〝第7回メディアミーティング〟を開いた。( 坂上 賢治 )

 

開催テーマは〝二輪車委員会メンバーと語る、ジャパンモビリティショーと二輪車の未来〟と題して、二輪車委員会メンバーとメディア関係者との議論の場として設けられた。なお同ミーティングには、日本自動車工業会・副会長兼二輪車委員会の日髙祥博委員長(ヤマハ発動機社長)も出席した。

 

さて、そもそも前名称の東京モーターショーは、1954年(昭和29年)に全日本自動車ショウとしてスタート。海外メーカーが参加した1964年(昭和39年)に東京モーターショーへ改められて以降、55年後の2019年まで行われた。

 

そんな歴史を踏まえた上で、今回からは自動車業界の枠を超えオールジャパンでつくる「未来の日本」を提案する場となったジャパンモビリティショーとなった訳だが、今回はこの装い新たなショーへ託した想いも併せて語られた。

 

 

まずミーティングの皮切りは各社のブース展示を順次紹介。まず本田技研工業は〝Honda DREAM LOOP〟をテーマに据え、夢を具体的な形に変えていくモビリティとして2機種の世界初公開モデルを出展するのに加えて、市販電動モデル1機種を展示する。

 

「Pocket Concept」(世界初公開)「SC e: Concept」(世界初公開)

 

そのうちの1台は資源の循環利用を標榜し、地球環境の保護と共に自由な移動の喜びを将来にわたって両立させることを目指して開発された「Pocket Concept(ポケットコンセプト)」。

 

もう1台は、再生可能エネルギーの利用を広げる交換式バッテリーを搭載した「SC e: Concept(エスシーイーコンセプト)」。これに市販モデルのEM1 e:が加わる。なお二輪車ブース展示に関わる出展概要であったのだが、実際には同社の二輪ブースの出展枠は多岐に亘っており、その他には、航空機などの空のモビリティなども出展される予定だ。

 

 

次にヤマハ発動機は、ブーステーマを〝「生きる」を、感じる〟と題して3機種の世界初公開車と、ハイブリッド3輪駆動車1機種を出展する。

 

不倒状態を保つバランス制御技術やオーナーの意思をくみ取る画像認識 AIなどが搭載された実験モデル「MOTOROiD2」(世界初公開)「ELOVE」(世界初公開):上記のスタンダードモデルに加え、原付スクーターで通学する離島の高校生や、プロ車いすプレーヤーとの共創活動で生まれた車両の 2台を展示

“電動モビリティの楽しさの探求”を目的に、若手エンジニア有志が楽しみながら開発したファミリーで楽しめる電動ミニバイク「E-FV」(世界初公開)

車両実験部の有志が考案したLMW初のオフロードアドベンチャーモビリティ「TMW」(参考出展)

 

世界初公開モデルの1台目は、人とマシンのインターフェースを検証する実験モデルとして、かつて2017年に公開されたMOTOROiDの進化モデルとなる「MOTOROiD2」だ。

 

2台目は〝Game changing !〟をコンセプトに安定化支援システムを搭載した電動スクーター「ELOVE(イーラブ)」。3台目は、電動アシストマウンテンバイクのパワーユニットを搭載した電動ミニバイク「E-FV(イーエフブイ)」。これに参考出品モデルと3台の市販モデル、2台の競技モデルが加わる。

 

 

続いてスズキは〝世界中に、ワクワクの、アンサーを〟として、折り畳み電動モペッド「e-PO(イーポ)」、電動アシスト自転車の電動ユニットを使用した近距離モビリティの「e-choinori(イーチョイノリ)」、水素エンジンを搭載した二輪技術展示車「水素エンジンバーグマン(試験車両)」の3機種に2台の市販モデルが出展される。

 

折り畳み電動モペッド「e-PO(イーポ)」(世界初公開)近距離モビリティとして親しまれたチョイノリの電動版「e-choinori(イーチョイノリ)」(世界初公開)原付二種相当のバッテリー交換式 電動スクーター「e-BURGMAN」市販モデルであるバ―グマン400 ABSに水素タンクと水素エンジンを搭載した試験車両「水素エンジンバーグマン」

 

またカワサキは、〝伝統と革新〟をテーマに、世界初のストロングハイブリッドモーターサイクルの「Ninja 7 Hybrid」、初の電動モーターサイクルの「Ninja e-1」。

 

世界初のストロングハイブリッドモーターサイクル「Ninja 7 Hybrid」(日本初公開)カワサキ初の電動モーターサイクル「Ninja e-1」(日本初公開)

 

これに加えて2019年に共同の販売会社Bimota S.P.A.を立ち上げ、カワサキ傘下となったBIMOTAブランドから2台のスーパースポーツ。その他、市販モデルと歴史車としての6台のモデルが追加出展される。

 

 

最後に日髙祥博 二輪車委員長は、「二輪車メディアミーティングについては、過去6回、多様なテーマで開催してきましたが、今回はジャパンモビリティショー2023の開催目前でもあり、4年振りに開催される同ショーにしたいとする想いをお伝えしたいと思います。

 

今回は〝モビリティの未来を皆で体感し、モビリティ産業から日本を元気にさせる〟そんな強い想いを日本の全産業で手を結んで実現するショーにしたいという想いがあります。

 

そんな自工会イベントも、これまでの東京のモーターショーから、ジャパンモーターショーに装いも新たとなり、これと同時に自工会も大きく変わりました。

 

その想いの根底にあるのは、将来に向け国内自動車産業の危機感と豊田会長の強いリーダーシップがありました。事実、このまま〝予定調和〟の自工会を続けていって、どうなるんだという議論もありました。

 

 

もし自動車が家電メーカーの二の舞になった時には、この国はどうなってしまうのか。そんな危機感を前提に我々自身が変わっていかなきゃ駄目だよねと。〝予定調和型〟から〝課題解決型〟の自工会になっていかなければならない。

 

そこで、まずは日本の自動車産業が生き残るために、我々がどう変わっていけばよいのか、しかしそうした取り組みは我々(内々)の自動車産業だけでは実現できないことは分かっていたので、新たに経団連の中にモビリティ委員会を設けて頂き、今後は、自工会の〝自動車〟に拘らず、様々な産業と手を取り合い、日本の競争力を維持していきたいという考え方が背景にあります。

 

そこから東京モーターショーは新たにジャパンモビリティショーとなり、モビリティを中核に据えた日本全体のインダストリアルショーというところへ脱皮し、皆で力を合わせて日本の産業力、日本の競争力を高めて、それから日本のGDPを維持・強化していこうという考え方が、開催名が改まった〝ジャパンモビリティショー〟に表れているのです。

 

さて、これを前提にモビリティの未来を語る際、我々の足元のCN(カーボンニュートラル)化についてどう進めていくか。この大テーマについて我々、自工会は長らく〝マルチパスウェイ〟の考え方を発信し続けています。

 

 

二輪車に於いても、その大きな流れとして車両のバッテリーEV化がありますが、製品(スポーツ・趣味目的や、あくまでも実用性を中核に置く車種)や、地域特性毎(都市と郊外、里山での使用など)に様々な条件や制約がある中で、我々としては、〝多様な選択肢を準備することこそが、真に効率的なCNの道である〟という主張です。

 

例えば国内の二輪車市場については、コミューターと言われる小排気量車の場合は通勤や通学など主な用途が絞られることもあり、バッテリーEVへ置き換わっていく可能性は高いと考えられます。

 

一方、趣味のツーリングやスポーティーな走りが魅力となる中大型車は、バッテリーの製造コスト、4輪車と異なる限られた蓄電能力にゆえに多くの充電インフラを必要とするなどの様々な課題があります。

 

また現行車両の内燃エンジン特有の走行音や、振動といったライダーの感性に関わる要素も、とても重要であると認識しています。

 

 

対してもちろん、バッテリーEVにしか出せない良さも沢山あり、製品そのものを洗練させていくこと、インフラ・利用環境を改善していくなど、これから社会全体で、電動車を走らせる環境を育てていくことも重要です。

 

しかし、それに加えてCNフリー燃料を用いた内燃機関や、HEVといった多様な選択肢も二輪車にとっても大切なのではないかとも考えています。

 

従って我々二輪メーカーも、これらの諸環境に添うよう様々な対応を個社なり、また共同開発という形も採りつつ進めています。

 

 

記者の皆様に於かれては既にご承知の通りで、先日、水素エンジンの研究組織〝HySE〟も設立して具体的な研究活動をスタートさせました。

 

併せてバッテリーEVの普及促進についても、既に台湾などでは常識となっている交換式バッテリーのストックスルステーションを街中や道路沿いに設けるインフラ整備について、共同実証の〝Gachaco(ガチャコ)〟で進めています。今後も、我々は二輪車メーカーとして、CNの達成に向けた様々な活動に引き続き取り組んでいきたいと思います。

 

今回のジャパンモビリティショーでは、そうした考え方や取り組みを踏まえ、日本の自動車産業が世界で一定のポジショニングを維持していくべく国内全てのインダストリーと一緒になって、大きな壁を乗り越えていく契機となるショーだと思っていますので、是非共、皆さんも足を運んで頂ければと思います」と語った。

 

写真左から順に、日本自動車工業会・常務理事の江坂行弘氏、二輪車委員会 委員の田中強氏(スズキ 二輪事業本部長)、二輪車委員会 委員の安部典明氏(本田技研工業 執行役常務 二輪・パワープロダクツ事業本部長)、副会長兼二輪車委員会 委員長の日髙祥博氏(ヤマハ発動機 社長執行役員)、二輪車委員会 委員の甲斐誠一氏 (カワサキモータース執行役員 MCディビジョン長)、二輪車委員会 委員の大谷到氏(ヤマハ発動機 上席執行役員 ランドモビリティ事業本部長 兼 ランドモビリティ事業本部MC事業部長)

—————————————

さて以下は筆者のひとりよがりの印象かも知れないのだが、ジャパンモビリティショーに於ける二輪車出展にあたっては、日髙祥博 二輪車委員長も〝協調領域と競争領域を明確にした上で取り組んでいかなければならない〟と語っていた通りで、自工会参画メーカー各社は、ショー出展に於ける〝競争領域と協調領域の切り分けの難しさ〟があるように思われ、少なくとも二輪車の出展内容に関しては、各社毎の事業戦略の想いが色濃く現れているように見える。

 

ここで一旦、立ち止まって考えてみると、これまでオフィシャル感を強く打ち出してきた〝東京モーターショー〟では、極めてお行儀の良いオフィシャルなメーカーの立ち位置を伝えることに終始し、これと相対して〝東京オートサロン〟は乗り物の愉しさやエキサイティングな魅力を伝えることで棲み分けてきた。

 

今回の二輪車展示では、それと同じく〝ジャパンモビリティショーではオフィシャルなメーカーの立ち位置を伝えることに終始〟し、一方で〝リアルで現実的な二輪の愉しさを伝えるのはモーターサイクルショーで〟という切り分けが、実のところ各社の想いとして横たわっているのかも知れない。

 

 

しかし装いを改めたジャパンモビリティショーでは、日本の全インダストリー分野を巻き込んだ自工会として、近未来のモビリティ社会を見せるものである筈だ。

 

そうした意味で例えば昨今、〝特定小型原付〟が一定の市民権を得ようとしている中で、様々な製造・販売企業が、其れ其れの考え方の中で拡張的に多彩な戦略モデルを披露している。では自工会としては、そうした新たモビリティをどのように社会に浸透させていけば良いと考えているのかは、やはり知りたいところ。

 

筆者としては、大きく拡張した世界を見せている新たなモビリティ達は、近未来の社会でどのような存在であるべきか、それを語るべき役割が自工会には必要ではないかと思ってしまう。そうした提案は、未来の交通社会の一翼を担う自工会ゆえの矜持ではないかと。

 

また二輪車ブースへの車両出典にあたっては、リアルで身近なモーターサイクルショーと切り口は大きく異なるとは思う一方で、より華やかな未来表現が欲しい。

 

実際4年前の東京モーターショーに於いて、エッジの効いた最新鋭の中・大型二輪車を見て、二輪の魅力を再認識したかつては若者だったドライバーもいたのではないかと思う。ショー展示には、そうした思いもよらない出逢いを創出する役割もある。但し、今はジャパンモビリティショーは開幕前の段階であり、ショー開幕後に、筆者のそうした危惧が思い違いの個人的な懸念であったと思いたい気持ちだ。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。