本田技研工業(ホンダ)は7月4日、銀行6社・損保4社保有のホンダの普通株式2億5987万9700株を売り出すことについて同日開催した経営会議で承認した。併せて3898万1900株を上限にしたオーバーアロットメント(需要に応じて行う追加売り出し)による売り出しも含めた2億9886万株も承認されている。
上記に係るホンダの普通株式の売り出しは、昨年12月、金融庁から損保4社が企業向け保険料を事前調整したとして保険業法に基づく業務改善命令を受けた際、政策株の保有多寡が契約シェアに影響したと指摘。これを踏まえ損保4社は、年が改まって以降、政策株を段階的に削減する方針を打ち出していた。
今回はそれが、円高が1ドル=160円台を大きく超える段階へまで進行している時点で行われた。それらは大手保険会社と自動車会社との間の市場力学の変化も影響したようだ。また併せて当該の自動車産業界に限らず、日本国内に於ける株式持ち合い慣行の解消を目指す傾向が加速化しているためでもあり、損保各社は株式市場でコーポレートガバナンス体制を保つべく、政策保有株式を整理する動きにより、その姿勢を示した。
ちなみに損保4社では2024年3月末時点で、広域でおよそ9兆円相当の政策株を保有しているが、そこから東京海上日動火災保険が持つホンダの85,108,200株を筆頭に、三井住友海上火災保険、損害保険ジャパン、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、日本カストディ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ銀行、あいおいニッセイ同和損害保険、埼玉りそな銀行、みずほ銀行、野村信託銀行など10社などが保有するホンダの普通株式を売り出す。
これを受けてホンダでは、「当社は、経営の最重要課題のひとつとして、コーポレートガバナンスの充実化に取り組んでいます。
企業を取り巻く環境が大きく変革する時代においても、企業価値の向上を実現するために、(1)事業の変革フェーズに応じた戦略的な資源配分、(2)資本コストを意識した経営などガバナンスの強化、(3)ステークホルダーの皆さまとの積極的な対話を通じた更なる経営の質の向上、を進めています。
一方、株式市場に於いても、コーポレートガバナンスの充実を実現する観点から政策保有株式を見直す動きが進んでいます。今般、当社は一部の株主と継続的な議論を重ね、当社株式に係る政策保有株式を早期に縮減させると共に、株主層の裾野の拡大および多様化により、当社の企業経営に対する規律を一層高めるべく、本売出しの実施を決定しました。
本売出しを通じて、当社の企業活動を中長期的にご支援いただける幅広い投資家の方々と協創することで、強いブランド・事業基盤を構築し、更なる企業価値向上を実現することを目指します」と述べており、政策保有株式を早期に縮減させて、事業基盤の安定化を目指す構えだ。