安全・安心に活用できる土壌を整えることを目的に「生成AIパスポート」発行へ
9月に第1回試験を実施
生成AI活用普及協会(略称GUGA、東京都千代田区)は7月13日、東京都内で記者会見を開き、生成AIの社会実装を目指す活動方針を公開した。その第一歩となるのが基礎的な資格試験として提供する「生成AIパスポート」の発行で、9月に第一回目の試験を実施する。(佃モビリティ総研・松下次男)
GUGAは2023年5月10日に設立したばかり。チャットGPTをはじめとした生成AIの社会認知が急速に高まってきたのにあわせ、安心・安全に生成AIが活用できる土壌づくりをサポートする狙いで発足した。法人形態は一般社団法人。
その初代理事長に日本で最初にFP(ファイナンシャルプランナー)の専門会社設立などを手掛けた井畑敏氏が就任。
井畑理事長は「戦略発表会」と銘打って開いた記者会見の冒頭、同協会のミッションについて「生成AIを社会に実装する」の一言だとアピールした。
急激な進化を遂げる生成AIは「産業革命に匹敵する影響力を持つテクノロジー」とも言われており、井畑理事長は生成AIを活用することで、新たなイノベーションが生まれると訴える。
これにより「社会とともに、産業を再構築し、日本の未来を強くする」ことをビジョンに掲げ、そのためのスキルの習得や可視化の推進を取り組む戦略として打ち出す。
昨年以降、急速にチャットGPTが社会に認知されるに伴って、自動車分野を含め各産業界とも生成AIの活用に注目するが、どのように導入すればよいかがわからない、ルールなく使っているというのが現状。
GUGAの花島晋平理事は帝国データバンクの調査を引用し、生成AIの導入を検討している企業は半数強に上ると説明。しかし、その中の70%強は導入イメージがわかず、導入の具体例を持ち合わせていないというのが実情だと指摘する。
さらに導入済みの10%弱の企業をみても、約85%がルールなく利活用しているのが実態と話す。詐欺や権利侵害などの悪用ケースへの対応も課題だ。
そこで、GUGAは技術的・学術的な側面でなく、個人の活用、組織導入の側面で、生成AIを取り扱う組織の必要性を認識したうえで、個人のリスニング支援、法人・団体への人材育成支援を起点に、幅広い活動を行う方針を打ち出す。
このため、行政や大学研究機関、有識者と連携・協業し、公正かつ安全な生成AI活用の普及を目指す。
生成AIの社会実装に向けた具体的な戦略では、「生成AIリテラシー強化・マインドセット構築」「生成AIコミュニティ形成」「第三者評価による良質な生成AI関連サービスの可視化」「企業・自治体の参考となる生成AI導入事例の創出」などに取り組むとした。
その第一歩となるのが生成AIパスポートの提供で、8月10日に公式テキストを発売した後、9月15―16日の二日間、第1回試験を実施する。
GUGAによると、企業が生成AIを導入するに当たって重要な「ガイドラインの必要性」を社員・職員が認識できていないのが大きな課題と指摘。
このため、資格を取得することにより利便性とリスクの両面の理解を深め、安全に生成AIを活用するためのマインドセットが構築できるとした。
資格試験では、AIの基本的な仕組みやチャットGPTをはじめとした生成AIの変遷から現在の動向、基本理念と社会原則、テキスト生成AIがプロンプト制作など生成AI活用の前提となるリテラシー・モラルの理解度を可視化するための内容が網羅されている。
このほか、試験対策講座、認定講習会、ガイドライン作成委、企業導入サポートなどのサービスも提供する。会員は法人、自治体、学校・研究機関、特別・一般個人の各会員で構成し、法人以外は年会費も無料で参加できる。