液体水素を燃料として搭載した水素エンジンカローラ
トヨタ自動車は、5月26日~28日に行われる「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2023 第2戦 NAPAC 富士 SUPER TEC24時間レース」に液体水素を燃料として搭載した「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(水素エンジンカローラ)で参戦する。
なお、この液体水素燃料を搭載した車両を使いレースに参戦すること自体、今回が世界初の試みとなる。ただ、そもそも液体水素を搭載する水素エンジンカローラは、約2カ月前の3月18・19日に行われた「第1戦 SUZUKA S耐5時間レース」で初参戦の予定だった。
しかし3月8日に富士スピードウェイで実施した専有テスト走行時にエンジンルームの気体水素配管からの水素漏れで車両火災が発生。この際は、車両の復旧が間に合わなかったため出場を断念した。
そして上記、欠場から約2カ月間、安全最優先の考えのもと(1)水素配管を高温部から離す(2)水素配管ジョイントに緩み防止機能と、万が一水素が漏れた際に水素をキャッチして検知器に導く機能を兼ねたセーフティーカバーを装着するなど、先の車両火災の原因となった水素配管の全体設計の変更を行った。
エンジンルーム水素配管の改良
併せて2カ月前と比較し車重を50kg以上軽量化させて、2021年5月に水素エンジンカローラが気体水素を燃料として初参戦した際のラップタイムを上回る性能も実現した。
ちなみに水素エンジンカローラの燃料として使用する液体水素の一部には、川崎重工、岩谷産業などから構成される技術研究組合「HySTRAプロジェクト」として川崎重工業が建造した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」で豪州から輸送した褐炭由来水素を含む豪州製造の液化水素を使用する。
またサーキットで使用する移動式液化水素ステーションについては、岩谷産業とトヨタが共同開発した。この移動式液化水素ステーションは、燃料が液体水素になったため、圧縮気体水素をつくる際に必要な圧縮機や水素を冷却するプレクーラーなどの設備が不要になる。
結果、設置に必要な面積を気体水素使用時の4分の1程度までコンパクト化。ガソリン車と同じようにピットエリア内で燃料が充填できるようになった。併せて充填時に昇圧の必要がないため複数台連続の充填も可能になっている。
一方、車体側では燃料が気体水素から液体水素に変わることに伴い、燃料供給装置を液体水素向けに変更。エンジン自体は、気体水素を搭載していた時と同様のものを使用する。
車両の性能面では、液体水素に燃料を変更することで体積当たりのエネルギー密度が上がるため満充填からの航続距離は約2倍となったことと、システム構成がシンプルになるというメリットがある。
但し液体水素は充填や貯蔵の際に-253℃より低い温度に保つ必要があるので、(A)低温環境下で機能する燃料ポンプ技術をいかに開発するか。(B)タンクから自然に気化していく水素にどう対応するか。(C)車載用液体水素タンクの法規をどのように作り上げていくかなどの複数の課題がある。
加えて気体水素と液体水素には、それぞれ異なるメリットや課題があるので特性を生かした使い方をしていくべく、今後も「気体水素」と「液体水素」の両方の開発に力を入れつつ、更なる「もっといいクルマづくり」を目指し、京都大学、東京大学、早稲田大学の3つの大学と課題の克服に取り組んでいくとしている。
最後にトヨタ自動車では、5月27日(土)14:00~から開催される富士スピードウェイでの決勝の様子を24時間生配信するとしている。