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2023年5月27日【イベント】

液体水素を使うカローラ、スーパー耐久レース富士24に参戦

坂上 賢治

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液体水素を燃料として搭載した水素エンジンカローラ

 

トヨタ自動車は、5月26日~28日に行われる「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2023 第2戦 NAPAC 富士 SUPER TEC24時間レース」に液体水素を燃料として搭載した「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(水素エンジンカローラ)で参戦する。

 

なお、この液体水素燃料を搭載した車両を使いレースに参戦すること自体、今回が世界初の試みとなる。ただ、そもそも液体水素を搭載する水素エンジンカローラは、約2カ月前の3月18・19日に行われた「第1戦 SUZUKA S耐5時間レース」で初参戦の予定だった。

 

しかし3月8日に富士スピードウェイで実施した専有テスト走行時にエンジンルームの気体水素配管からの水素漏れで車両火災が発生。この際は、車両の復旧が間に合わなかったため出場を断念した。

 

そして上記、欠場から約2カ月間、安全最優先の考えのもと(1)水素配管を高温部から離す(2)水素配管ジョイントに緩み防止機能と、万が一水素が漏れた際に水素をキャッチして検知器に導く機能を兼ねたセーフティーカバーを装着するなど、先の車両火災の原因となった水素配管の全体設計の変更を行った。

 

エンジンルーム水素配管の改良

 

併せて2カ月前と比較し車重を50kg以上軽量化させて、2021年5月に水素エンジンカローラが気体水素を燃料として初参戦した際のラップタイムを上回る性能も実現した。

 

ちなみに水素エンジンカローラの燃料として使用する液体水素の一部には、川崎重工、岩谷産業などから構成される技術研究組合「HySTRAプロジェクト」として川崎重工業が建造した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」で豪州から輸送した褐炭由来水素を含む豪州製造の液化水素を使用する。

 

またサーキットで使用する移動式液化水素ステーションについては、岩谷産業とトヨタが共同開発した。この移動式液化水素ステーションは、燃料が液体水素になったため、圧縮気体水素をつくる際に必要な圧縮機や水素を冷却するプレクーラーなどの設備が不要になる。

 

結果、設置に必要な面積を気体水素使用時の4分の1程度までコンパクト化。ガソリン車と同じようにピットエリア内で燃料が充填できるようになった。併せて充填時に昇圧の必要がないため複数台連続の充填も可能になっている。

 

 

一方、車体側では燃料が気体水素から液体水素に変わることに伴い、燃料供給装置を液体水素向けに変更。エンジン自体は、気体水素を搭載していた時と同様のものを使用する。

 

車両の性能面では、液体水素に燃料を変更することで体積当たりのエネルギー密度が上がるため満充填からの航続距離は約2倍となったことと、システム構成がシンプルになるというメリットがある。

 

但し液体水素は充填や貯蔵の際に-253℃より低い温度に保つ必要があるので、(A)低温環境下で機能する燃料ポンプ技術をいかに開発するか。(B)タンクから自然に気化していく水素にどう対応するか。(C)車載用液体水素タンクの法規をどのように作り上げていくかなどの複数の課題がある。

 

加えて気体水素と液体水素には、それぞれ異なるメリットや課題があるので特性を生かした使い方をしていくべく、今後も「気体水素」と「液体水素」の両方の開発に力を入れつつ、更なる「もっといいクルマづくり」を目指し、京都大学、東京大学、早稲田大学の3つの大学と課題の克服に取り組んでいくとしている。

 

最後にトヨタ自動車では、5月27日(土)14:00~から開催される富士スピードウェイでの決勝の様子を24時間生配信するとしている。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。