豪開催のBWSC2023に先駆け、ソーラーカーの可能性を討論
ブリヂストンは8月29日、最もサステナブルな電気自動車(EV)であるソーラーカーに関するイベントを東京・小平市のブリヂストンイノベーションパークで開いた。10月末に豪州で開催する世界最高峰のソーラーカー・レースに先駆けて、ソーラーカーの可能性を討論するとともに、参戦チームの車両を公開した。(佃モビリティ総研・松下次男)
イベントは「ブリヂストン・ソーラーカー・サミット2023」と題して実施。
豪州で行われる世界最高峰のソーラーカー・レースは「2023ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(BWSC)」で、開催期間は10月22日から29日まで。
BWSCは豪州のダーウィンからアデレードまでの3000キロを約5日間かけて競うソーラーカー・レースであり、2年に1回開催されているが、前回の2021年大会はコロナウイルス感染症のため、中止された。
このため今年のBWSCは4年ぶりの開催となる。参加チームは43チームで、日本からは東海大学、工学院大学、和歌山大学、呉港高校などが参戦する。
ブリヂストンはエンライトン技術搭載タイヤをモータースポーツに初投入
こうした最もサステナブルなEVであるソーラーカー・レースの車両にブリヂストンは2013年大会からタイヤを提供。最初は1チームのみへの提供だったが、今回の大会では日本をはじめ世界の35チームに拡大。
さらに再生資源・再生可能資源比率63%のエンライトン(ENLITEN)技術搭載タイヤを今回のBWSCを皮切りに、モータースポーツに初めて投入する。
太陽光による限られた電力で3000キロの長距離を走り切るというBWSCの過酷な条件下で求められる低転がり抵抗や耐摩耗性能、軽量化に特化して、各チームにカスタマイズさせて、提供する予定だ。
ソーラーカーの最新技術や未来を語るイベント「ソーラーカー・サミット2023」は二部構成で実施。
第一部はBWSC23に参戦する東海大学の木村秀樹教授や工学院大学の濱根洋人教授、レースカーに炭素繊維を供給する東レ・カーボンマジックの奥明栄社長などが登壇し、近年のソーラーカーの動向やBWSCの特徴などを解説、披露した。
例えば、ソーラーカーでいえば過去の車体と比べて著しく技術が進化したとし、ソーラーパネルもサイズが半分になったにも関わらず発電効率は上回るなどと説明した。平均車速も大幅にアップしているという。
また、タイヤも当初は自転車用などの軽量なものを搭載していたが、今や専用タイヤを搭載。ブリヂストンは、初めてモータースポーツに投入するエンライトンについてレースで磨かれた技術を市販車にも生かし、よりEVに最適なタイヤへと進化させたいと述べた。
さらに炭素繊維などの車体の軽量化技術についてもまずソーラーカーで試されることが多く、その後F1カーなどへ広がっているのが実例と話す。
BWSC参戦チームの東海大学の参戦体制および参戦車両も公開
一方で、ソーラーカーの市販化については木村、濱根の両教授とも2040年、50年頃までは「難しいだろう」と指摘。短い距離ならば可能性があるが、長距離用としては電力が足りないとの見解だ。
むしろソーラーパネルを一部の電力用などにハイブリッドとして使うのが実用的とし、実際に、このような実例は始まっているとした。
第二部では、BWSCで過去に2度優勝した東海大学が今年の大会への参戦体制を発表。同時に、新たな参戦車両「Tokai Challenger」を公開し、テストコースで試走を報道陣に披露した。
東海大学チームの今回の参戦車両は車体のレギュレーションが大幅に変更されたことから前2,後ろ1つのエンライトンの3タイヤ(前回は前後2つの4タイヤ)方式を採用した。
車体には一段と軽量化を実現した東レの炭素繊維「トレカ」を採用。さらに素材の一部には難しいとされていたリサイクル材も使われている。
チームは9月30日に先発隊が日本を出発し、現地で整備などを行ったあと、大会で3度目の優勝を目指す。