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2023年6月1日【イベント】

アウディ、来年のダカールに向け早くもテストを実施

坂上 賢治

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チーム・アウディスポーツは、ダカールラリー2023の挑戦直後の段階でサスペンションとタイヤの問題を分析するため、逸早くテスト準備を整えた。

 

 

その理由は、先のダカールラリー2023で、電動ドライブトレインとエネルギーコンバーターというユニークな組み合せを使用したアウディRS Q e-tronが、延べ15日間に亘って合計14回の表彰台を獲得した一方で、想定外の様々なトラブルに遭遇した事にある。

 

というのはダカールラリー2023に於いて、アウディRS Q e-tronの駆動システムは完璧に機能した。

 

それにも関わらずタイヤ側に於ける問題が発生した事により、マティアス・エクストローム選手/エミール・ベリークヴィスト選手、ステファン・ペテランセル選手/エドゥアール・ブーランジェ選手、カルロス・サインツ選手/ルーカス・クルス選手の各チームは、上位争いからの後退を余儀なくされたからだ。

 

 

そこで当該チームは1月から緻密に検証して来た分析結果と、5月31日のサウジアラビアで実走テストを組み合わせて、一連の原因調査を完了した。

 

アウディモータースポーツ部門を率いるロルフ・ミヒェル氏は、「チーム自体は明確な数値目標を持っており、私たちの技術・チーム・選手達は、優勝争いに参加出来るだけのポテンシャルを秘めています。それぞれのステージでの結果は、それを内外に向けて証明するものでありました。

 

 

しかしタイヤのパンクやその他の小さなトラブルで順位が後退してしまった。従って、それらのトラブルの原因をつぶさに調べ上げて、各々の解決策を見つける必要がありました。

 

これを踏まえ今回、私たちが体系的に計画・実施したテストに於いて理論的な分析が行えた事が、来年に向けての重要なステップとなると考えたのです。

 

 

こうした下準備を経てアウディのダカールラリー参戦パートナーであるチームQモータースポーツと共に我々は、3台のアウディRS Q e-tronのステアリングを握るマティアス・エクストローム選手、カルロス・サインツ選手、ステファン・ペテランセル選手と、5月の第3週目にサウジアラビアで数日間に亘るテストに参加した。

 

我々は、公式タイヤサプライヤーであるBF Goodrichの2種類のタイヤを使用してパフォーマンスを比較。1月のレースで発生した状況を再現するために多彩なテストコースを試走しました。

 

 

またエンジニア達は、グラベル(砂利)と砂を含む約13kmの高速コース上でのパフォーマンス調査を行い、石の多い約11kmのコースでは、耐久性とダメージの種類に重点を置いたテストに臨みました。

 

この際シャシー部分は、荒れた路面を効率よくトレースする必要があるため、ショックアブソーバーに焦点が当てられ、シャシーに設置された荷重および加速度の測定センサーが同分析を担うための役割を果たしました」と述べた。

 

その成果についてQモータースポーツチームのスヴェン・クヴァント代表は、「今回のテストは、非常に過酷な条件下で実施されました。アウディスポーツがこのテストプログラムを完璧にサポートしてくれた結果、走行中のタイヤのパンクを再現することが出来ました。

 

 

というのは、これらの知見により、1月のレース中に発生した状況をより細かく分析する事が可能になったからです。より具体的にはサスペンションの設定が、タイヤのトラブルに密接に関係していることが判明。それらの部分に変更を加えました。

 

そうは言っても、まだ100パーセント完璧な解決策を見出した訳ではありません。しかし今回のテストの実施は大きな価値があり、私たちは正しい方向に進んでいまることが分かっています。

 

 

ちなみに1月のアクシデントで負傷したカルロス サインツ選手は順調に回復。コ・ドライバーのルーカス・クルス選手と共に今回のテストに参加しました。テストではステファン・ペテランセル選手もルーカス・クルス選手とコンビを組みました。

 

また1月に負傷したステファン ペテランセル選手のコ・ドライバー、エドゥアール・ブーランジェ選手は参加を見送りました。彼の体調はまだ万全ではないため、更なる治療のため、過度なストレスは禁物です。これは正しい判断だと思います。

 

マティアス・エクストローム選手は、ペアを組むコ・ドライバー、エミール・ベリークヴィスト選手とテストに参加しました。結果、走行テストには3名のドライバー全員と2名のコ・ドライバーが参加しました」と話す。

 

 

そのテスト実施の結果に伴う手応えついて先のアウディモータースポーツのロルフ・ミヒェル氏は、「サウジアラビアテストでのチームアウディスポーツの各選手は、最高42℃の気温と度重なる強風に見舞われるなど、肉体的に非常に過酷な環境に立ち向かう事になりました。

 

しかしアウディRS Q e-tronは問題なくテストを消化しました。2568キロメートルに亘り高い信頼性を示したRS Q e-tronは厳く過酷な日程の中でもプログラムを体系的に完了させる事が出来たのです。

 

 

この結果、技術的な調査から得られた成果に加えて意思決定や運転スタイルの面でも貴重な洞察を得る事が出来ました。

 

これからチームは本拠地に戻り、記録した全てのデータの包括的な分析を行う予定です。我々は2024年のダカールラリー参戦に向け、順調に次のステップへの準備に取り組んで行きます」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。