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2021年12月27日【オピニオン】

半導体不足でも過去最高のトヨタ、お騒がせ企業でも〝BIG3〟入り

福田 俊之

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トヨタ自動車・ロゴ

 

– MOBILITY INSIGHT –
本記事は平素、雑誌版に上稿頂いている識者によるNEXT MOBILITYの連載コラムです

 

もはや半分忘れかけていたが、新型 コロナウイルスの感染爆発にビクビク しながらも前代未聞の無観客という異 例ずくめの「東京五輪・パラリンピッ ク」が開かれた令和3年(2021年) も師走に入り、この時期は1年を振り 返ることが多くなる。秋以降、恐れて いた変異株も一時落ち着き、緊急事態宣言が全面解除となり、大規模イベントの人数制限も撤廃された。ただ、ようやくコロナの闇から小さな光が見えてきた矢先に、新たな「オミクロン株」への感染懸念もあり、今年も忘年会などの宴会を控える企業も少なくない。

 

検査不正が相次ぐ三菱電機、 システム障害続出のみずほ

 

宣言解除後に東京商工リサーチが全 国の約8000社の企業を対象に実施 した調査では、7割以上の企業が「忘年会や新年会を開催する予定がない」 と回答したという。昨年の同様の調査 では「開催しない」が9割を超えていたそうだが、やや復活の兆しはみられるものの、感染防止の意識が高まり、まだまだ警戒心を解くに至らないことに加え、宴会そのものを控えるムードが広がっていることが読み取れる。

 

忘年会とは読んで字の如く、今年1年の嫌なことや、苦しかったことを忘れて、新たな気持ちで新年を迎えようと、年末の飲食を伴う「親睦会」だが、しばらく会えなかった人と日ごろの不義理を果たすにも好都合だ。歴史を紐解けば、庶民の間で酒を酌み交わし、どんちゃん騒ぎしながら憂さ晴らしする習慣が始まったのは江戸時代のようで、明治になってから役人や寮生活の学生の間で年中行事として定着したらしい。

 

ではこの1年を振り返って、そんな 憂さ晴らしでもやって〝厄払い〟をしなければ年が越せそうもないようなお騒がせの〝謝罪〟企業とは、どんな会社なのだろうか。まず浮かぶのは創立100周年という記念すべき大きな節目の年にもかかわらず、鉄道車両向け製品の偽装データによる検査不正や品質問題などが相次いで発覚した三菱電機。しかも一連の不正が30年以上にわたり、組織的に隠蔽されていたというから罪深い。

 

次いで今年だけでも8回のシステム障 害が発生し、金融庁から業務改善命令を受けたメガバンクのみずほフィナンシャルグループも呆れ返るばかりだ。お家の一大事が露呈した三菱電機同様に、みずほの経営トップも引責辞任に追い込まれるほどの危機的状況に直面している。

 

今年のトヨタは過去「最高」と「最悪」の二刀流で〝MVP〟

 

そして、まるで「厄年」かのように、グルーブ会社を含めて〝イエローカード〟が積み重なったのがトヨタ自動車だ。企業業績は好調で業界全体を悩ます半導体などの部品不足による減産を強いられた中でも9月の中間決算は、円安の追い風もあり売上高、営業利益、純利益とも中間期として過去最高となった。

 

しかしながら「好事魔多し」で、6月には、若手社員の自殺が上司のパワハラが原因として労災認定され、トヨタも因果関係を認めて和解が成立。豊田章男社長が遺族に直接謝罪したことが明らかになった。さらに、7月以降、直営店や系列ディーラーによる不正車検が発覚したほか、部品共販会社でもパワハラ問題などが取り沙汰された。8月には五輪開催中の選手村では、トヨタが提供した自動運転中の巡回バスが視覚障害の柔道選手と接触事故を起こして大騒ぎとなった。

 

また、10月に入り、日本製鉄が特殊材の特許権侵害でトヨタと中国の宝山鋼鉄を提訴する予期せぬ〝事件〟も勃発。目下係争中のため、軽々に論ずることはできないが、日本経済をけん引するトップ企業同士の関係に微妙な亀裂が生じているのが気掛かりだ。わ ずか数カ月の間にこれほどの不祥事が続出した年も珍しいが、過去「最高」と「最悪」との「リアル二刀流」の〝MVP〟ではコロナ下の好業績も台無しになる。

 

KHK大河ドラマ『晴天を衝け』でも話題を集めた渋沢栄一が、『論語と 算盤』に「名を成すは常に窮苦の日にあり。敗事の多くは得意の時による」 と記している。順調な時でも奢らずに失意の時だからといってめげずに大きな志を忘れるなという教えである。新しい年はネジを巻き直して汚名返上を果たせるか、お騒がせ〝ビッグスリー〟 の振る舞いをしかと見届けたい。

 

福田 俊之
1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。