法体系・制度面で克服するべき課題にも取り組む
――最先端テクノロジーの社会実装にあたっては、技術面の克服と並んで、法制度上の課題があると思います。東京湾での実証実験では、これらも視野に入れて取り組む事になるのでしょうか。
山本 ▶ 東京都としては、法体系・制度面の課題を克服して社会実装させて行く事自体がチャレンジングなテーマとなります。
東京のベイエリアは羽田空港に隣接しており、現段階ではドローンが飛ばせない空域があります。実際、現地に行けば離着陸する飛行機も見える位の近さですから、空飛ぶクルマを飛ばすための難易度はとても高いのです。
それゆえどのように法制度と折り合いをつけるのか、何らかの規制緩和を働き掛けるのか、いずれにしても空飛ぶクルマを、東京のベイエリアで飛行させるための仕組みづくりを整備しなければなりません。仕組みを所管する国との丁寧な調整が今後必要となります。
とは言っても、今すぐ飛ばせる環境になる訳ではありません。ただ2025年の大阪万博に合わせて空飛ぶクルマの運用が検討される中、いずれ国内の様々な地域でも同様の動きが出てくるのではないかと考えています。
そこで東京のベイエリアで、どのように空飛ぶクルマが展開できるか、準備・検討を進めています。
――空飛ぶクルマに関しては駐機場・整備場などでも課題がありますね。
山本 ▶ 今回の東京都に於ける空飛ぶクルマの実用化計画では、米国などと同じく乗り合いタクシーとしての活用案が考えられます。
実際、タクシー車両のように至る所で飛び、気軽にリーズナブルな料金で利用出来る乗り物を整備するという前提を踏まえると、東京の空を飛ぶための駐機場や整備場を用意する事自体は克服するべき大きな課題となります。
――先にお話頂いた通りで、空域も課題となりますね。
山本 ▶ まずは東京の都市中心部で、空飛ぶクルマをどのように利活用出来るかを検討・協議しなければなりません。
例えば、羽田空港から都下の都市領域、または隣県の都市への移動用があると思います。また、災害時や緊急医療に於ける輸送、島嶼での観光用など、様々な用途・切口が考えられます。
そのためにも、まずは都民の方々に〝空飛ぶクルマが持つ可能性〟を広く知って頂く事が大切だと思っています。
行政的な見地では社会受容性こそが最も重要です。
――空飛ぶクルマを運行させて行くのであれば、ベイエリア周辺の海上ルートも魅力的ですね。
山本 ▶ 確かに海上を使えば、羽田からディズニーランドへも短い時間で行けますね。または品川に出来るリニアモーターカーの駅へ素早く移動する目的でも便利になります。そうなると駐機場、エアータクシーで言うとビルの屋上に駐機出来るスペースが求められるでしょう。
しかし現段階で都内中心部をみても、ヘリポートがあるビルは僅かです。空飛ぶクルマが普及した社会では、そうしたエアポートがあるかどうかで不動産の価値も変わるかも知れません。
先にも申し上げましたが、そのためにも、まずは都民の皆様に空飛ぶクルマの魅力や、ワクワクする気持ちをお持ち頂き、いずれは東京に新しいモビリティを迎える準備をしたい。それはこの東京ベイeSGプロジェクトでの大切な要諦の1つです。