未来都市・東京を目指す具体的ロードマップとは
――更なる未来を見据えた東京ベイeSGプロジェクトですが、今後は、どのようなステップを踏むのでしょうか。
山本 ▶ 最終的には、ゼロエミッションを完全実現させた上で、最先端技術がシッカリと実装された地域でなければなりません。
また単なる〝技術実証の場〟というだけに留まらず、最先端技術の着実な実装を目指して行きます。将来的には、世界中のスタートアップやESGに積極的に取り組む企業が集積する未来の街を想定しています。それゆえこうした街を支える未来の交通も必要になるでしょう。
これらの構想は、先から申し上げている通り50年、100年先を見据えた非常に息の長いプロジェクトとなり、この実現に向けて3つのステップを設けて、未来の都市造りへの青写真を描いています。
――既に精緻なロードマップが描かれているのでしょうか。
山本 ▶ 全く新たな都市づくりを目指すのは確かですが、現段階では、50年・100年全体を精緻に包括出来るような絵は描き切れていません。
一方で、都市機能が既に固まっている都市中枢地域とは異なり、対象とするエリアは現時点では多くの更地が広がっており、〝後発ゆえの優位性〟もあると思います。
そこでまずは、我々自身が現段階で投入出来る最先端技術を現場に持ち込んで、都民の方々に様々な体験をして頂いた上で、未来へ向けた第1章のイメージをお示ししたいと考えています。従って今は、そのための準備段階としての先行プロジェクトがスタートしたばかりのフェーズと言えます。
――現段階では、どのようなプランが敷かれているのでしょうか。
山本 ▶ 令和4年11月に9件の実施プロジェクトが採択された事を発表したばかりです。
「先行プロジェクト」と名付けた実施事業には3つのジャンルがあり、「次世代モビリティ」「最先端再生可能エネルギー」それに「環境改善・資源循環」が加わるラインナップとなっています。
多彩な企業が未来を目指した実証に相次いで参画
――それぞれのジャンル毎に実施事業が決まった段階という事でしょうか。
山本 ▶ はい。その中でも次世代モビリティ分野で筆頭に挙げているのは、いわゆる〝空飛ぶクルマ〟の実証運用になります。
第1フェーズにあたる今回は、グループ単位でエントリーして頂いており、代表事業者はNTTコミュニケーションズ株式会社となっています。
〝空飛ぶクルマ〟にあたる機体については、2011年に電動垂直離着陸機として世界で初めての有人飛行を行った独・航空機製造のスタートアップ企業ボロコプターの機体を飛ばす事を想定しています。
飛行は、1人または2人乗りでペイロード200キログラム規模の空飛ぶクルマや、同程度の重量輸送用ドローンを使って検証します。
モビリティ分野で、もうひとつ採択したのが水空合体ドローンです。
これを選んだ背景は、プロジェクトのフィールドを活かして陸からドローンを飛ばして、1つの機体で空と海中の調査を同時に行う事も想定しています。
これにはKDDIグループ( KDDIスマートドローン株式会社 )が取り組まれます。都は、この実証環境のベイエリアを管理しており、我々としては海との関わりも大変重要だと考えています。
これまで海だけのドローン、空だけのドローンはありましたが、両方を合体した水空合体ドローンでの実証は、我々が世界に先駆けて取り組んでいると思われます。
――他のジャンルでは、どのような取り組みがあるのでしょうか。
山本 ▶ 最先端の再生エネルギー分野で、洋上浮体式太陽光発電があります。これは水に浮かべた太陽光発電で、日本でもこれまでダムや、ため池に装置を浮かべて発電する実証が行われて来ました。
しかし、国内に於ける海上での実証は今回が初めてです。海では塩や波の影響がありますが、事前にヒアリングしたところ、各社共に、これまで実証するフィールドや機会が無かったようです。
そこで、これを機に東京ベイエリアで検証する事になりました。この領域での取り組みには、三井住友建設株式会社と東急不動産株式会社のグループが採択されています。
更に発電分野では、地面に埋め込む舗装式太陽光発電もあります。海外では既に実証例がありますが、日本国内では事例が少なく、東亜道路工業株式会社が採択されました。
加えて風力発電分野では、垂直軸型の風力発電でスタートアップの株式会社チャレナジーと、三鷹光器株式会社が採択されています。
実は風力発電分野の技術で、既存のプロペラ式の風力発電は、台風到来の際に負荷が高くなるため停止させなければならないのですが、垂直軸型の風力発電は、旧来のプロペラ式とは構造が異なるため、例えば台風が到来しても発電を止めずに連続稼働させる事が可能です。
この他、水質改善の株式会社イノカ、水面清掃ロボットを開発しているスタートアップ企業の炎( ほむら )重工株式会社が採択されています。