多様な危機を正しく捉え・乗り越えた、その先の未来へ
――多様な危機を正しく捉え、適切に解決して行くという事ですね。
山本 ▶ はい。しかし、そのような危機に対して、なぜ真っ先に〝東京都が取り組み、頑張って克服しなければならない〟のか。
そうした大きな危機は、政府や国連のような大きな枠組みで担って行けば良いのではないかとする考え方もあるでしょう。
しかし一旦立ち止まって、皆さんの足元を見回して欲しいのです。
私たちが暮らす東京は、職・住・学・遊の機能が高度に集積する世界でも有数の大都市です。まずは率先して、この都市の基礎体力を強靱にして行く事。それこそが私たちの社会を足元から、より良くして行くための第一歩でもあると我々は考えているのです。
加えて今日に於いては、世界規模で都市部への人口集中が加速しています。現段階でも約40数億人、世界人口の約55%が都市部で暮らしていると推計されます。
今後2050年には、その頃の世界人口(97億人)の68%。およそ66億人が都市で暮らすとみられており、世界有数の大都市として多くの市民を抱える事になる東京は、迫り来る危機を大局的に捉え、どのような策を以て難関を突破して行くかを考えなければならない。そうした切迫感も、このプロジェクトを始動させた事の理由の1つです。
従って、このような時代に起こり得るだろう都市問題を考えた際、先の感染症に係る課題も、私たちの前に大きく立ちはだかる深刻な難関として浮上してきます。
例えば今日、自動車や飛行機などのモビリティ技術の発達によるスピードアップで、移動時間という視点で見ると私たちが暮らすこの世界は本当に小さくなりました。今から過去50年間を切り取って遡ると、陸や海、空が隔てていた個々の生き物たちの生息空間は、急速に縮小し続けている事が分かります。
それは里山のみならず、都市に於いても同様で、もはや人間とそれ以外の生き物たちの暮らす世界が想像以上に接近してしまった事で起きた事故や事件が度々発生しています。
つまり人と動物が暮らす世界は確実に狭まって来ており、その分、新たな感染症への危機も高まっています。