東京ベイエリアに50年、100年先の東京の姿を描く
――東京都が立案した東京ベイeSGプロジェクトは実に壮大な計画ですね。
山本 ▶ プロジェクトの最終目的は、東京のベイエリアに描く50年、100年先の東京の姿であり、我々は遥か先を見据えた未来都市の創造を目指しています。
翻(ひるがえ)ってみれば通常、行政や県庁などが打ち出す長期計画は、5年・10年単位が多い。と言うのは10年単位であれば、ある程度社会環境の推移も見通し易いからです。
しかし、気候変動といった歴史的な転換点を迎えている今こそ、直面する様々な危機を乗り越えたその先を超えた未来を見据えていく事。
そんな遥か遠くを俯瞰し、子供たちに明るい将来を残すべく、我々は全く新しいプロジェクトを始めたのです。
――具体的にどのような危機を想定しているのでしょうか。
山本 ▶ 現時点では、3つ大きな危機を想定しています。まずその1つが〝気候変動の危機〟です。今後も、私たち人類が具体的な切迫感を持たず、いたずらに時を消費し続けて行けば気温上昇は下げ止まらず、早晩、深刻な環境危機を迎える事態となります。
また別の切り口では、新たな〝感染症の危機〟がいつか到来するかも知れません。今の新型コロナウイルス感染症は、いずれ克服されるでしょう。しかし私たちが地球上の生態系の一員として生活する限り、新たな感染症の危機からは逃れられないのかも知れません。
加えて、2022年に顕在化したロシアのウクライナ侵攻に伴う〝エネルギー危機〟も、私たちが直面したリアルな現実です。目下、この危機が今日のエネルギーコストの高騰に繫がっています。こうした危機にも対処出来ないと明るい未来は残せません。
では私たちが一致団結して、このような危機を乗り越えたその先で、未来の子供たちが住んでみたい、暮らしてみたい東京の姿とは一体どのような都市なのだろうかと考え、その結果を皆で共有して、現在の東京へ実装して行こうとする取り組みが今回の〝東京ベイeSGプロジェクト〟です。
例えば、気候変動問題で、今後、全く何も対処しないのであれば2100年の東京の平均気温が40度超になり、800hPA( ヘクトパスカル )台という猛烈な勢力の台風が到来するとした試算があります。
こうした危機に、どう対応すれば良いのか。そのためには今から、様々な危機に強い都市づくりに取り組まねばなりません。