日本に自動車が上陸して120年余り。産業としての歩みでも1世紀を超え、創業100年を迎える自動車系企業が相次いでいる。そうしたなか同産業では、「人と自動車との関わり」が大きく形を変えつつある。それは電動化であり、情報化であり、知能化という大きなうねりである。
クルマが変わる、自動車メーカーが変わる、サプライヤーが変わる、そしてバリューチェーンが変わる。そんな「自動車産業革命」とも云える大きな変革の波が押し寄せるなか、トヨタ自動車は2016年4月に『もっといいクルマづくり』と『人材育成』を主眼に、社内カンパニー制をスタートさせた。
そのなかにあって特に注目されるのが「コネクティッドカンパニー」だ。「コネクティッドカー」つまり、つながるクルマはIT(情報技術)からAI(人工知能)へと進化。今後あらゆるモノがクラウドにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)へと向かう発展途上にある。
そこでトヨタの「コネクティッドカンパニー」プレジデントである友山茂樹専務に、トヨタのコネクティッド戦略、そしてそこから見えるモビリティの未来と課題について訊いた。(連載1回目・前半、聞き手:佃モビリティ総研<NEXT MOBILITY主筆>・佃義夫)
友山茂樹氏のプロフィール
– トヨタ自動車株式会社専務役員
– 事業開発本部本部長
– 渉外・広報本部統括
– 情報システム本部本部長
– コネクティッドカンパニープレジデント
– GAZOO Racing Companyプレジデント
友山茂樹氏は1958年生まれ。群馬大学機械工学科卒、1991年トヨタ自動車工業入社。豊田章男社長が係長時代に出会った後、トヨタ生産方式のトヨタディーラー版導入や「GAZOO」導入を手掛け、2004年e-TOYOTA部部長、中国出向を経て2010年・常務役員就任。事業開発、情報システム、IT・ITS本部、モータースポーツ本部など多様な部門を統括し、2015年専務役員に就任し現在に至る。(2018年1月1日付・副社長就任予定)
コネクティッドでクルマの新しい魅力、価値を創造する
——トヨタが社内カンパニー制をスタートさせて凡そ1年半を迎えた。現在、トヨタのコネクティッド戦略はKPIのどの立ち位置に居るのか。
友山 従来の情報系・電子技術系・ITSなどが2016年4月のカンパニー発足で一本化を果たし、コネクティッドカンパニーの統一戦略として加速体制に入る時期にきている。当初、グローバルIT企業が自動車マーケットへ参入する動きをトヨタは「危機」と捉えていた。しかし逆に今はこれをチャンスと捉えている。
例えば、トヨタが毎年数百万台のクルマを世界中に販売しているという事実。これによってトヨタは日々顧客とのリアルな接点を創出し続けている。
そしてこの接点を踏まえコネクティドカンパニーを発動したことを介して、新たなビジネスチャンスを創造していくとするコンセンサスが社内で確立した。トヨタは、この機運に乗ってビジネスに投資し、懸命に走っている段階だ。
——そもそも、「コネクティッドカーカンパニー」の使命とは。
友山 その使命は3つある。まず「コネクティッドでクルマの新しい魅力、新しい価値を創造すること」、次に「お客様の期待を超えるスピードとフットワークでバリューチェーンを拡大し、モビリティ社会の発展に貢献すること」、そして「新たな事業を生み出し、自動車ビジネスを変革させること」だ。