商社機能を活かす自動車産業向け事業は三洋貿易の独自モデル
新谷社長 従って商社機能を生かした我々の自動車内装材事業は、当社の最も特徴的なビジネスモデルの一つと言えるでしょう。
加えてもう一つ、絶対欠かせない強みとしては、当社がどことも組みしていない独立系商社である事です。それゆえ日系の全ての自動車メーカーと取り引き出来る訳です。
例えば、海外に良い内装部材があった時、彼らが日系全メーカーに提案したいと言えば、我々の出番となります。実際、そのような形で現在進行中のものも決して少なくありありません。
――新たな分野で言えば、ルクセンブルクのIEE社と提携し、子供の車内置き去り防止センサーの日本導入を発表しました。これ以外にも、自動車分野で新たなプロジェクトが進行中ですね。
平澤 目下、主に展開中なのはランバーサポートやシートヒーター、空調シートなどです。それに加えて定番の本革関連が加わります。
しかしこれから40年・50年が経過した場合、当社の競合は確実に増える事になります。その結果、コスト競争がライバルとの対抗軸になる可能性も有り得ます。そうなると厳しさが加速度的に増して行く事になります。
そこで当社ならではの付加価値を高めるため、新しい商材を見つける取り組みを約10年前から始めています。具体的には、私が事業部長の時に新分野・新商品の開発グループを作り、既存のものとは全く異なる分野や製品にもチャレンジしている最中です。
この中から、既に花開いているものもあります。その一つにCaresoft社の製品があります。
これはX線で車1台を丸毎スキャンし、部品のデータが画面上でチェック出来るものです。この結果、例えばA社、B社のドアミラーが比較出来、それはどのような構造なのか、開発・製造コストはどうなのか、などVA(仮想現実)上に於いて考察・提案出来るものです。
このシステムを使えば、競合車を購入して来て、分解するなどの人海戦術が不要となります。こうした製品はここ2~3年で引き合いが増えています。
もう一つは、岐阜県の瑞浪で、廃校を利用した展示場を開設している事があります。
これはリアルの車両と、対象車を分解した部品群を紹介する言わば車体構造を知り・研究するための展示センターです。
現在は3車種を展示しています。一つは宏光という中国の50万円のEV(電気自動車)。それとジャガーのI―PACE、テスラのモデルYです。
このようなデータ自体やVAシステムの提供・提案に加え、リアルの展示場も開設する事で、ベンチマーキングのソリューションプロバイダー事業を確立させる事を目下構想中です。
この他にもフリクションダンパーなども手掛けています。SUVの後ろのドアを開ける時に、ゆっくり立ち上がるダンパーがいわゆる〝フリクションダンパー〟ですが、近年は受注量が増えています。それ以外にも守秘義務の関係で申し上げられないものが沢山あります。