国内自動車産業の成熟に伴い自動車・製品メーカーとの関わりも親密に
――どのようにモビリティ分野の事業が拡大したのでしょうか。
平澤 1980年後半からトヨタさんのレクサス・ブランドを中心に展開し、それらを契機に多くの自動車メーカーと取り引きして頂けるようになりました。ホンダさん、マツダさんなどの多くの自動車メーカーのクルマに本革素材を採用して頂きました。
それから、今はもう企業名が変わっているのですが、カナダのシュクラ社、ドイツのWET社などからも、多様な製品を取り扱うようになりました。
例えば、シュクラ社で言えばランバーサポート製品があります。これについては人間工学的な理論で作られており、3点支持で体を支え、運転中に疲労軽減や集中力が散漫になる事を防止する製品です。
構造的には、シートの背中部分に入っている黒子的な製品であり、今は大半が電動で作動します。オンにすると樹脂板が前にせり出してきて腰を支えてくれます。
実は米国や欧州では、このランバーサポート装備が付いているのか、付いていないのか。また機能が良いのか、悪いのかが、車種選択時の重要な購入基準になります。広域なエリアを走る場合、クルマを5時間、6時間と運転する際を考えるとその大事さが分かります。
もうひとつのWET社はシートヒーターの製造会社で、ここからはシートを温める製品を取り扱っています。結果、当初の本革関連の製品提供を皮切りに、ランバーサポート、シートヒーターなど販売対象の拡大は1990年代から始まっています。
――製品は、直接、自動車メーカーに納入するのでしょうか、それとも部品メーカーに供給するのでしょうか。
平澤 当初は、自動車メーカーに直接に提案し、評価を経て、採用を決めて頂く事も多かった傾向です。もしくは採用自体は早々に決まったものの、細かなスペック変更やデザイン変更では、我々ならではの知見を活かすというケースもあります。
特に本革素材に関しては、お客様がクルマをお使い頂く際、最初に触り、目に入る重要な部分という事から、触感、色、デザインも含めて現在も自動車メーカーから直接、ご指示頂くケースは多いです。対してランバーサポートやシートヒーターなどについては、現在はシートメーカーに納入させて頂くケースが大半です。