NEXT MOBILITY

MENU

2023年4月24日【特集】

志賀俊之 元日産COOに訊く、「ルノー・日産」新提携の行方

佃 義夫

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

対等出資での新提携で日産の技術力は自由度を増し、スピード化期待

 

――ルノーもフランス、というより欧州に於ける立ち位置や業績面の打開が求められて事業構造改革に踏み切ったという事もあるのでしょう。
これを受けて日産サイドはルノーEV新会社「アンペア」への出資を決める一方で、ルノーとの資本関係を15パーセントずつ出資する対等関係を認めさせました。今後、日産はどうなるのででしょうか。

 

 

志賀 ▶ 私は2019年に日産取締役を退任してから経営とコンタクトしていないし距離を置いているのですが、〝感じ〟としては、従来の資本関係で日産は結構窮屈だった事も事実です。

 

例えば「e-POWER」( エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン )などは早く日本市場に出したかった。しかしアライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産の技術がなかなか使えない状況もあった。

 

いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していける事になる。

 

もちろん、20数年間やってきたアライアンスの経験の中では良いものも沢山あるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を活かし共にやって欲しいとの期待感を持っています。

 

 

三菱自動車は、3社連合新提携をうまく活用していけば

 

――三菱自動車についても伺いたい。私は三菱自も長らく取材してその変遷もしっかり見てきましたが、1970年に三菱重工業から独立して以降 、三菱グループにおける〝親の役〟は同社でした。

 

しかし、2018年に三菱商事が三菱重工から株を買い取り保有比率を20パーセントに引き上げてから、ここへきて三菱商事が後見人の立場に代わってきた。

 

2019年には日産が三菱自を傘下に収め、一時は三菱商事がルノー保有の日産株を半分買い取る構想も水面下であったとm聞きます。それぞれの歴史の変化の中で、3社連合に於いて三菱自はどうするのでしょうか。

 

 

志賀 ▶ 三菱自動車さんは、この3社連合の新たな関係をうまく利用していけばいいと思いますよ。何と言っても東南アジアは、三菱自の〝牙城〟です。これは間違いない。

 

私もかつて日産で東南アジアを経験( ジャカルタ事務所長を歴任 )していますから。ここは、日産は弱いしルノーも殆ど手掛けていませんが、市場の成長性は高い。そうは言っても販売地域は東南アジアだけではないので、欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい。

 

三菱自動車の3社連合のポジションは、CASE投資が必要なところでいいところ取りをすればいいと思います。

 

 

この日仏アライアンスが次のレベルでの変革に期待

 

――いずれにしても今回のルノー・日産・三菱自の3社連合は、新たな関係で再出発ということですが、いろいろな課題を抱えています。

 

 

かつては「ルノー・日産統合論」から「日産・ホンダ合併案」、「三菱商事のルノー保有株半分買取り案」などが水面下で揺れ動きましたが、今回実に23年振りに対等な形の日仏新連合になったという事で、どうなるかが注目されます。

 

志賀 ▶ 自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったという事ですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、〝アップルカー〟などになる。

 

日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています。

 

 

PROFILE
志賀 俊之(しが としゆき)
INCJ(旧産業革新投資機構)代表取締役会長/CEO
1953年(昭和28年)9月16日生まれ、69歳。1976年(昭和51年)大阪府立大学経済学部卒、同年日産自動車入社。アジア大洋州営業部ジャカルタ事務所長、企画室長を歴任し、1999年(平成11年)に日産がルノーと資本提携しCOOとなったカルロス・ゴーンの下、アライアンス推進室長として日産リバイバルプラン(NRP)の立案、実行を進めた。2000年(平成12年)日産常務執行役員、2005年(平成17年)日産COO(最高執行責任者)・代表取締役就任。2010年(平成22年)日本自動車工業会会長、2013年(平成25年)日産代表取締役副会長。2015年(平成27年)産業革新機構会長に就任。現在、INCJ代表取締役会長の他、ダイナミックマップ基盤社外取締役なども務める。

 

 

同記事のトップページに戻る

1 2 3 4 5 6 7 8 9
CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。