ゴーン長期政権は、後半に大きく変貌したことが今回の資本関係見直しに
――1999年6月にルノーからゴーンCOO( 当時 )が派遣され、リストラ断行を含めた「日産リバイバルプラン( NRP )」が実行されました。
ゴーン氏は「日産の救世主」と呼ばれ、2005年にルノー社長CEOにも就任し日産社長CEOと兼ねたことで、志賀さんをCOOに抜擢した。
以来、志賀さんはゴーンの右腕としてCOOを続けたわけですが、志賀さんが言うように、どうも志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。
ゴーン長期政権が前半と後半で大きく変貌した事が、今回のルノー・日産の資本関係見直しに繋がっているのでしょうね。
志賀 ▶ 実際、経営者としてのゴーンのマネジメントの凄さは目の当たりにしてきたのですが、私自身、反省するところは反省していますし、忸怩( じくじ )たる思いもあります。
既に2019年1月に日産の取締役も退任してからは内情に口を挟むような事は一切していませんが、日産の将来、方向に期待するものは今も当然大きいのです。
ルノーの事業改革は的を得ており、EV新会社に日産出資を求めた
――先の2月6日にロンドンで日産とルノーの日産株出資引き下げの資本関係見直し合意の会見が行われました。
1999年に資本提携して以来続いてきた〝親子〟の関係が、双方15パーセントずつの出資の対等の関係となります。
昨年来の交渉が長引いてきてようやく合意に達した訳ですが、これはルノーの事業構造改革の一環であるルノーの電気自動車( EV )新会社に日産が最大15パーセント出資し、グループの三菱自も参画を検討することが条件であり、会見は3社トップの合同によるものでした。志賀さんはこれをどう受け止めたのですか。
志賀 ▶ ルノーのルカ・デメオCEOの戦略を最初に聞いた時は、相当、的を射ているなと思ったんですよ。やはりトヨタとEV事業で先行する米テスラの時価総額をみても大きな開きが出ている。
私は現在、投資ファンドの世界に身を置いていますが、いまや伝統的な自動車メーカー( OEM )に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。
EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました。
もう一つは、43年間の日産での経験から言うと、自動車産業は20年前に国際化からグローバル化へと進んで( 生産や経営が )フラット化されたのですが、ルノーの新戦略は、世界中に工場を作って大量生産で、ばら撒くようなグローバリゼーションのビジネスモデルは終焉を迎えた事を象徴しています。
ゴーンは最後に〝量〟を求めたが、むしろ今は地域毎、国毎の戦略が求められて来ているのです。
ルノー・日産というクローズな関係だけでなく、新たな提携関係が求められてきたという事なのでしょう。「400万台クラブ」や「1000万台クラブ」などは無くなり、ルノー・日産の資本関係の見直しも起こるべくして起こったのです。