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2023年4月24日【特集】

志賀俊之 元日産COOに訊く、「ルノー・日産」新提携の行方

佃 義夫

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ゴーン長期政権は、後半に大きく変貌したことが今回の資本関係見直しに

 

――1999年6月にルノーからゴーンCOO( 当時 )が派遣され、リストラ断行を含めた「日産リバイバルプラン( NRP )」が実行されました。

 

 

ゴーン氏は「日産の救世主」と呼ばれ、2005年にルノー社長CEOにも就任し日産社長CEOと兼ねたことで、志賀さんをCOOに抜擢した。

 

以来、志賀さんはゴーンの右腕としてCOOを続けたわけですが、志賀さんが言うように、どうも志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。

 

ゴーン長期政権が前半と後半で大きく変貌した事が、今回のルノー・日産の資本関係見直しに繋がっているのでしょうね。

 

 

志賀 ▶ 実際、経営者としてのゴーンのマネジメントの凄さは目の当たりにしてきたのですが、私自身、反省するところは反省していますし、忸怩( じくじ )たる思いもあります。

 

既に2019年1月に日産の取締役も退任してからは内情に口を挟むような事は一切していませんが、日産の将来、方向に期待するものは今も当然大きいのです。

 

 

ルノーの事業改革は的を得ており、EV新会社に日産出資を求めた

 

――先の2月6日にロンドンで日産とルノーの日産株出資引き下げの資本関係見直し合意の会見が行われました。

 

 

1999年に資本提携して以来続いてきた〝親子〟の関係が、双方15パーセントずつの出資の対等の関係となります。

 

昨年来の交渉が長引いてきてようやく合意に達した訳ですが、これはルノーの事業構造改革の一環であるルノーの電気自動車( EV )新会社に日産が最大15パーセント出資し、グループの三菱自も参画を検討することが条件であり、会見は3社トップの合同によるものでした。志賀さんはこれをどう受け止めたのですか。

 

志賀 ▶ ルノーのルカ・デメオCEOの戦略を最初に聞いた時は、相当、的を射ているなと思ったんですよ。やはりトヨタとEV事業で先行する米テスラの時価総額をみても大きな開きが出ている。

 

私は現在、投資ファンドの世界に身を置いていますが、いまや伝統的な自動車メーカー( OEM )に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。

 

EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました。

 

もう一つは、43年間の日産での経験から言うと、自動車産業は20年前に国際化からグローバル化へと進んで( 生産や経営が )フラット化されたのですが、ルノーの新戦略は、世界中に工場を作って大量生産で、ばら撒くようなグローバリゼーションのビジネスモデルは終焉を迎えた事を象徴しています。

 

ゴーンは最後に〝量〟を求めたが、むしろ今は地域毎、国毎の戦略が求められて来ているのです。

 

ルノー・日産というクローズな関係だけでなく、新たな提携関係が求められてきたという事なのでしょう。「400万台クラブ」や「1000万台クラブ」などは無くなり、ルノー・日産の資本関係の見直しも起こるべくして起こったのです。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。