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2023年4月24日【特集】

志賀俊之 元日産COOに訊く、「ルノー・日産」新提携の行方

佃 義夫

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ソフトウエア対応は人材も含めて今後のカギを握る

 

――EVシフトと共に、この100年に一度の大変革に於けるCASE関連で、産業構造の転換を促す中核技術がソフトウエア分野だと言われています。
EVと自動運転は親和性が高いし、繫がるクルマなども含めてソフトウエアがカギを握る。

 

 

志賀 ▶ はい。もう一つの日本自動車産業の向かうべき方向で、私も心配しているのがソフトウエア分野です。

 

独VWなども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えており、自動運転技術も含めて、自社の競争力をどう維持・強化して行けるのかという事になって来ています。

 

今のままでは日本は弱過ぎる。内燃機関の関連技術が競争の原理で淘汰されて行く中で、自動車メーカーも従来のメカニカルエンジニアから、ソフトウエアエンジニアを如何に増やしていくのか。人的な構造的シフトも求められて来ます。

 

あるいは最近流行りのリスキリングでしょうか(笑)。いずれにしても本当に、これらに心配りしつつ、加速していかないと間に合わなくなる。この領域も大きな警鐘の一つです。

 

 

欧米に比べ、スタートアップ支援の規模が小さい日本だが、これからは

 

――日本の自動車メーカーは、乗用車8社にトラック4ブランドが生き残って来た世界でも稀なケースではありますが、その分、自動車メーカーの牙城が強くスタートアップがなかなか育たない状況です。

 

 

志賀 ▶ 日本国内でもEV系のスタートアップ企業は何社か出て来ていますが、そうした企業のフタを開けてみると、実は資金調達や投資が間に合っていない。

 

米国などでは、テスラの他にもリヴィアン( Rivian )やフィスカー( Fisker )、ルシード( Lucid )などが出てきており、相当量の資金が流れています。

 

その一方で日本は、乗用車と商用車で12ものブランドがあり、大企業エコシステムがデカくてなかなか隙間がない。新たなイノベーションが起こらない一つの理由です。

 

それでも我々のような官民ファンドも含めてベンチャーキャピタルで彼らを応援をしているのですが、欧米に比べるとまだまだ規模が小さい。

 

それでもソニー・ホンダのような新たなフォーメーションも出てきています。( 日立オートモティブシステムズと、ホンダ系部品3社が統合した日立アステモがEVシフトを睨んで工場投資をするために、官民ファンドのJICキャピタルが出資し支援する事が3月30日に発表された )。

 

――日本のEV市場も、中国のBYDや韓国・現代自が参入し、昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなどで、ようやく「EV元年」のスタートと言われました。

 

 

志賀 ▶ 軽EVは本当に「漸く(ようやく)」の感があります。
私が日産COO最後の年の2013年6月に、三菱自動車工業との共同開発で軽デイズの新車発表を三菱の水島工場で実施しましたが、その時に益子氏( 故益子修三菱自工元社長 )と「次は軽EVをやろう」と言っていたのに、あれから丸10年掛かりました。結果、日本のEVは、やっと緒に着いたばかりです。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。