ソフトウエア対応は人材も含めて今後のカギを握る
――EVシフトと共に、この100年に一度の大変革に於けるCASE関連で、産業構造の転換を促す中核技術がソフトウエア分野だと言われています。
EVと自動運転は親和性が高いし、繫がるクルマなども含めてソフトウエアがカギを握る。
志賀 ▶ はい。もう一つの日本自動車産業の向かうべき方向で、私も心配しているのがソフトウエア分野です。
独VWなども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えており、自動運転技術も含めて、自社の競争力をどう維持・強化して行けるのかという事になって来ています。
今のままでは日本は弱過ぎる。内燃機関の関連技術が競争の原理で淘汰されて行く中で、自動車メーカーも従来のメカニカルエンジニアから、ソフトウエアエンジニアを如何に増やしていくのか。人的な構造的シフトも求められて来ます。
あるいは最近流行りのリスキリングでしょうか(笑)。いずれにしても本当に、これらに心配りしつつ、加速していかないと間に合わなくなる。この領域も大きな警鐘の一つです。
欧米に比べ、スタートアップ支援の規模が小さい日本だが、これからは
――日本の自動車メーカーは、乗用車8社にトラック4ブランドが生き残って来た世界でも稀なケースではありますが、その分、自動車メーカーの牙城が強くスタートアップがなかなか育たない状況です。
志賀 ▶ 日本国内でもEV系のスタートアップ企業は何社か出て来ていますが、そうした企業のフタを開けてみると、実は資金調達や投資が間に合っていない。
米国などでは、テスラの他にもリヴィアン( Rivian )やフィスカー( Fisker )、ルシード( Lucid )などが出てきており、相当量の資金が流れています。
その一方で日本は、乗用車と商用車で12ものブランドがあり、大企業エコシステムがデカくてなかなか隙間がない。新たなイノベーションが起こらない一つの理由です。
それでも我々のような官民ファンドも含めてベンチャーキャピタルで彼らを応援をしているのですが、欧米に比べるとまだまだ規模が小さい。
それでもソニー・ホンダのような新たなフォーメーションも出てきています。( 日立オートモティブシステムズと、ホンダ系部品3社が統合した日立アステモがEVシフトを睨んで工場投資をするために、官民ファンドのJICキャピタルが出資し支援する事が3月30日に発表された )。
――日本のEV市場も、中国のBYDや韓国・現代自が参入し、昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなどで、ようやく「EV元年」のスタートと言われました。
志賀 ▶ 軽EVは本当に「漸く(ようやく)」の感があります。
私が日産COO最後の年の2013年6月に、三菱自動車工業との共同開発で軽デイズの新車発表を三菱の水島工場で実施しましたが、その時に益子氏( 故益子修三菱自工元社長 )と「次は軽EVをやろう」と言っていたのに、あれから丸10年掛かりました。結果、日本のEVは、やっと緒に着いたばかりです。