世界のEVシフトに日本が取り残されることになる
――つまり日本は、エンジン部品を軸とした自動車サプライチェーン( 供給網 )に於いて産業構造の転換を急ぐべきだと。
志賀 ▶ EVシフトが遅れるという事は、それだけ産業構造の転換が遅れる事になるのであり、ひいては日本が世界から取り残される事になる。これを懸念しているのです。
それと動力源が、電気モーターを搭載したEVに置き換わると部品点数が大幅に減ると、多くの方々から言われるのですが、実際はそうではないのです。
未来の自動車は、コネクテッド技術の加速に伴う自動運転を筆頭とするCASE対応でむしろ、その構造や使われる技術は複雑になります。こうした新機能を持たせた部品類の様々なモジュール化で、おのずと新たな技術と製品が必要になって来ます。
――日本のモノづくりを管轄する経産省はどう見てるんでしょうか。また、世界を俯瞰した場合、EVシフトに伴う構造転換へのロードマップについても、どのように見ているのでしょうか。
志賀 ▶ 経産省も地方の経産局とも連動して「味方プロジェクト」なるもので動き出しています。率直なところ、部品企業の多くは、本当に皆さん迷われている訳ですから。
一方で海外では、こうした構造転換に際して特に欧州は割り切って進めています。例えばマフラーやトランスミッションなどの部品企業達は、開発・製造体制の集約や残存者利益を分け合い、新規事業への構造転換へと積極的に動いています。そうした意味で日本は、一言で言うと「じれったい」というのが本音です。
国全体が2035年、2040年をしっかり見据えていくべき
――では日本の自動車産業はどうすれば良いのでしょう。
志賀 ▶ 今後、自動車分野は日本国内の市場だけをみていては食っていけない、日本だけではガラパゴスになってしまう。
世界のトレンド、マーケットの動向をウオッチして、それに対抗してやっていかねばならないのです。ただOEMサイドは、そうした障壁を何とか乗り越えてしまう可能性が高いのかも知れません。
しかし一方で部品系企業は、この先どうすれば良いのか。例えば現段階では2035年の欧米では、エンジン車の販売が出来なくなる訳ですが( 欧州は合成燃料限定でエンジン車容認に転じた )、日本ではハイブリッド車が含まれる流れなので内燃エンジン車は残ると、されています。
エンジン車の販売停止が20年先なら、今は何もしなくていい、と言う考え方になってしまいます。結果、国全体で2035年、2040年が見え難く、判り難いのが問題なんです。
そもそも日本のマーケット自体も縮んでおり、約500万台の内で2035年にEVが4割、2040年には8割となると、そこに向かって対応しなければならない、と言う事です。