EVへの遅れは、日本自動車産業の構造転換の遅れと警鐘を鳴らす
――まずは、EVシフトに対して日本車の出遅れがよく指摘されています。
カーボンニュートラルの実現、脱炭素に向けては色々な見方がありますが、大きなうねりとして世界はEVシフトへと突き進んでいる。
EV化についてこれだけ大きな流れが出来ている中で、志賀さんは、日本の出遅れに警鐘を鳴らしていますね。
志賀 ▶ 国内事業の将来に関しては、いくつか心配している分野があります。その中でも一番心配しているのは自動車産業の行方です。
私は、自工会の会長を拝命した時に東日本大震災も経験していますが、そこで実感したのは日本の自動車産業の強みはORM( 自動車メーカー )だけのものではなく、部品産業のティア1、2、3、4など、広大な自動車産業の裾野を数多の企業が支えているという事実です。
今は、スタートアップを支援している立場ですから、ティア2、あるいはティア3企業のトップと議論する機会も多く、彼らからは「これから( 自動車産業は )どうなっていくのですか?EVシフト・EV化は本当に起きるのですか?」と聞かれます。
――内燃エンジン搭載車から、主力の販売対象がEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点へと約3分の1に減ると言われています。関連部品企業は、その方向が良く見えない事で不安視しているのでしょうね。
志賀 ▶ そこなんです。仮に今後、未来のお客様がEVを選ぶという事になれば、充電のインフラ網が整備され、航続距離を稼ぐためのコストも下がり、結果、EVの価値が認められるようになってEVが売れるという話になる。
しかし真のEVシフトとは、そうした事ではない。購買行動に伴う製品選択のシフトと言うよりも、産業構造自体のシフトである訳なので、将来の大きな産業転換点を見据える必要があります。
つまり私が心配しているのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱えている国内自動車産業全体の構造転換が、やってきたその時に本当に間に合うのですか。と言う事であり、そこに警鐘を鳴らしているのです。