ZF LIFETECは6月5日(ドイツ発)、ステアリングホイール上の運転席エアバッグを再設計した。1980年代に運転席エアバッグが導入されて以来、エアバッグはステアリングホイールの中央・ハブに常設されている。
その結果、長年ステアリングホイールは、ステアリングコマンドを伝達するためのドライバーと車のインターフェイス以上のものとなり、事故が発生した場合の保護機能にもなった。実際、約30年間、運転席エアバッグはほとんどの車の標準装備となり、命を救い、負傷を減らすのに役立っている。
更に近年のステアリングホイールは、エンターテイメント機能とアシスタンス機能のコマンドセンターにもなっている。そうしたなかでZF LIFETECは、未来志向のインテリアコンセプトのデザインの可能性を広げる新世代のステアリングホイールを設計した。
今日、多くの運転席エアバッグは、ステアリングホイールの中心から外れた前方に展開される。対してZF LIFETECが設計した新たな運転席用エアバッグは、事故が発生するとステアリングホイールの上部からステアリングホイールの上部リムを通って運転者に向かって展開する。
この新しい取り付け位置により、ハブを含む水平スポークはスマートフォンのようなシームレスなデザインになる。車両のエンターテイメント機能とアシスタンス機能の力感知コントロールは、連続した表面の背後に統合した。
このデザインは、現代のデジタル設計ダッシュボードにシームレスに溶け込む。ZF LIFETECで開発責任者を務めるHarald Lutzは、「この新しいコンセプトにより、安全性を損なうことなく、ステアリングホイールのデザインの自由度を実現しています」と説明した。
近年ますます人気が高まっているシームレス デザインへのトレンドは、現代の自動車の内装にもよく見られる。メーカーは内装の継ぎ目や隙間をなくす傾向が強まっているのだ。
これは、自動車の内装全体に統合された照明オプションやディスプレイにも反映されている。そうした流れから、こうしたトレンドは、将来のステアリング ホイールにも引き継がれるという。
新たな運転席エアバッグのシームレスなデザインは、新しい素材や形状の使用だけでなく、機能面でも多くの可能性を開く。
オンデマンド機能(自由に割り当て可能なフィールド)、タッチディスプレイ、または中央スクリーンも考えられる。但しステアリングホイールは車両の安全関連コンポーネントでもあるため、ユーザーフレンドリーであることが最も重要となる。
それを踏まえると同コンセプトでは、ハイブリッドソリューションも実装できる。例えばステアリングホイールにアンカーポイントとして統合された力感知および触覚表面と交互に回転するスイッチを組み合わせて、ドライバーがシステムを安全に操作するということも考えられる。
また未来のステアリングホイールで必須コンポーネントとなるハンズオン検出と組み合わせることもできる。革の表面の下にある静電容量センサーは、ドライバーが単にホイールに触れているのか、安全に握っているのかも認識できる。このテクノロジーは、自動車の安全な制御技術を積み上げるための格好のモジュールとなるだろうと結んでいる。