ヤマハ発動機は7月26日、二輪車の発進・変速操作等を高度な制御で自動化する新たな機構「Y-AMT(ワイ・エーエムティ)」を開発し、年内に国内発売予定の新製品「MT-09 Y-AMT」に搭載すると発表した。
クラッチレバーとシフトペダルを廃した新開発の自動変速トランスミッションである「Y-AMT」は、シフト操作を手元のレバーに集約することで、より直感的なギアチェンジを可能とし、ライダーをクラッチとシフトペダルの操作から解放し、意のままに二輪車を操る楽しさや人機一体感の向上に貢献。また、ハンドシフトによるMTモードに加え、変速を自動化するATモードを備えることで、街中、高速道路、ワインディングロードなど異なる道路環境や、ライダーのコンディション、天候の変化等によるモード選択も可能。両モード共に素早いレスポンスで、スポーティな機能・性能をスポイルすることなく、エキスパートレベルの変速を安定して実現すると云う。
ヤマハ発動機では、2006年に世界初の二輪車用自動化MTシステムである「YCC-S」を開発・実用化して以来、同様の機構をROV(四輪バギー)製品にも搭載するなど、開発を継続してきたが、今回、より高いスポーツ性と利便性を両立させた新機構を採用した「Y-AMT」を新開発した。
同社は、この新技術を通じて、人機一体感の向上など、二輪車を操る楽しさを増幅させるほか、景色や道路状況を観るゆとり、さらには操作に対する安心感の向上など、二輪車の楽しさの可能性とユーザー層を拡げていきたいとしている。
[主な特長]
クラッチレバーとシフトペダルを廃した自動変速トランスミッション。簡単なレバー操作でエキスパートレベルのスムーズかつ素早いギアチェンジができるため、デイリーユースやツーリング、スポーツライディングまで、幅広いシーンで〝快適〟で〝スムーズ〟かつ〝スポーティ〟な走りを実現。また、発進時のクラッチ操作も不要であることから、エキスパートレベルの滑らかな発進が容易に行える。
これにより、楽しさあふれる新たなライディング体験を提供。ライダーは、クラッチとシフト操作から解放されることで、スポーツライディングの魅力の根幹を成す〝減速〟と〝旋回〟、〝加速〟に集中できる。
(1)小気味よく、素早く、ショックが少ない変速機構
MT車でのギアチェンジは、左手によるクラッチ操作と、左足によるシフト操作によって行うが、「Y-AMT」では、これらのアクションをアクチュエーターが担う、ギアチェンジを自動化したシステム。ベースとなるMT車の変速機構に大きな変更を加えることなく、人の操作をメカニズムが代替するため、MT車の魅力であるダイレクトな変速フィーリングや小気味よさはそのまま引き継がれる。
スプリング内蔵シフトロッドの断面図(*1)。
ギアチェンジに際しては、ECU(エンジンの制御を司るエンジンコントロールユニット)とMCU(アクチュエーターの制御を司るモーターコントロールユニット)が通信で連携。ECUは、シフトアップ時のエンジン点火/噴射、シフトダウン時の電子制御スロットルなどをコントロールし、またMCUは、最適なシフト操作/クラッチ操作をアクチュエーターに指示する。
高回転時にはクラッチを完全に切らない状況に応じた最適な制御や、シフトロッド内へのスプリング挿入による変速時間の短縮、前述のエンジン制御とクラッチ制御の協調等により、素早いギアチェンジと変速ショックの低減を両立。ライダーの意思に沿った自然な変速フィーリングを実現した。
(2)快適性とスポーツ性を高次元で両立
ハンドシフトによる「MTモード」に加え、変速を自動化する「ATモード」を備えている。なお、モードの変更は、ハンドルスイッチボックスに備えた切替ボタンで行う。
左ハンドルのシフトレバー。
右ハンドルの切替ボタン。
■MTモード:
クラッチとシフトペダルの操作からライダーを解放し、MT車と同等以上にスムーズかつ素早いギアチェンジを可能に。アクセルを開けたままシフトレバーを操作するだけで、エンジン性能を最大限に生かした爽快な加速が得られる。また、変速ショック抑制によるコーナリング中の安定感向上、シフトペダル操作不要による下半身でのホールド感向上、ライディングポジションの自由度向上などにも貢献する。
■ATモード:
車速やアクセル開度に応じて自動的に最適なギアが選択されるため、ライダーはアクセルとブレーキ操作に集中できる。これにより、頻繁なギアチェンジが必要だった市街地走行や、ロングツーリングなどでのライダーの負担が大幅に軽減される。
(3)軽量・スリム・コンパクトなユニット
ベース車両のMT変速機構に、シフト操作を行うシフトアクチェーターとクラッチ操作を行うクラッチアクチュエーターなどを搭載した基本構成のユニット重量は約2.8kg。軽量かつスリム・コンパクトな設計で、ベース車両本来のスタイリングやハンドリングへの影響を最小限に抑えた。
Y-AMT搭載レイアウト(*2)(左:シフトアクチュエーター。右:クラッチアクチュエーター)。
※1/※2:画像はCGによるイメージであるため仕様が一部異なる場合がある。