NEXT MOBILITY

MENU

2024年7月26日【テクノロジー】

ヤマハ発動機、自動変速機構「Y-AMT」を開発

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
MT-09 Y-AMT。

ヤマハ発動機・ロゴ

ヤマハ発動機は7月26日、二輪車の発進・変速操作等を高度な制御で自動化する新たな機構「Y-AMT(ワイ・エーエムティ)」を開発し、年内に国内発売予定の新製品「MT-09 Y-AMT」に搭載すると発表した。

 

クラッチレバーとシフトペダルを廃した新開発の自動変速トランスミッションである「Y-AMT」は、シフト操作を手元のレバーに集約することで、より直感的なギアチェンジを可能とし、ライダーをクラッチとシフトペダルの操作から解放し、意のままに二輪車を操る楽しさや人機一体感の向上に貢献。また、ハンドシフトによるMTモードに加え、変速を自動化するATモードを備えることで、街中、高速道路、ワインディングロードなど異なる道路環境や、ライダーのコンディション、天候の変化等によるモード選択も可能。両モード共に素早いレスポンスで、スポーティな機能・性能をスポイルすることなく、エキスパートレベルの変速を安定して実現すると云う。

 

ヤマハ発動機では、2006年に世界初の二輪車用自動化MTシステムである「YCC-S」を開発・実用化して以来、同様の機構をROV(四輪バギー)製品にも搭載するなど、開発を継続してきたが、今回、より高いスポーツ性と利便性を両立させた新機構を採用した「Y-AMT」を新開発した。

 

同社は、この新技術を通じて、人機一体感の向上など、二輪車を操る楽しさを増幅させるほか、景色や道路状況を観るゆとり、さらには操作に対する安心感の向上など、二輪車の楽しさの可能性とユーザー層を拡げていきたいとしている。

 

[主な特長]
クラッチレバーとシフトペダルを廃した自動変速トランスミッション。簡単なレバー操作でエキスパートレベルのスムーズかつ素早いギアチェンジができるため、デイリーユースやツーリング、スポーツライディングまで、幅広いシーンで〝快適〟で〝スムーズ〟かつ〝スポーティ〟な走りを実現。また、発進時のクラッチ操作も不要であることから、エキスパートレベルの滑らかな発進が容易に行える。

 

これにより、楽しさあふれる新たなライディング体験を提供。ライダーは、クラッチとシフト操作から解放されることで、スポーツライディングの魅力の根幹を成す〝減速〟と〝旋回〟、〝加速〟に集中できる。

 

(1)小気味よく、素早く、ショックが少ない変速機構

MT車でのギアチェンジは、左手によるクラッチ操作と、左足によるシフト操作によって行うが、「Y-AMT」では、これらのアクションをアクチュエーターが担う、ギアチェンジを自動化したシステム。ベースとなるMT車の変速機構に大きな変更を加えることなく、人の操作をメカニズムが代替するため、MT車の魅力であるダイレクトな変速フィーリングや小気味よさはそのまま引き継がれる。

 

スプリング内蔵シフトロッドの断面図(*1)。 スプリング内蔵シフトロッドの断面図(*1)。

 

ギアチェンジに際しては、ECU(エンジンの制御を司るエンジンコントロールユニット)とMCU(アクチュエーターの制御を司るモーターコントロールユニット)が通信で連携。ECUは、シフトアップ時のエンジン点火/噴射、シフトダウン時の電子制御スロットルなどをコントロールし、またMCUは、最適なシフト操作/クラッチ操作をアクチュエーターに指示する。

 

高回転時にはクラッチを完全に切らない状況に応じた最適な制御や、シフトロッド内へのスプリング挿入による変速時間の短縮、前述のエンジン制御とクラッチ制御の協調等により、素早いギアチェンジと変速ショックの低減を両立。ライダーの意思に沿った自然な変速フィーリングを実現した。

 

(2)快適性とスポーツ性を高次元で両立

ハンドシフトによる「MTモード」に加え、変速を自動化する「ATモード」を備えている。なお、モードの変更は、ハンドルスイッチボックスに備えた切替ボタンで行う。

 

左ハンドルのシフトレバー。 左ハンドルのシフトレバー。

右ハンドルの切替ボタン。 右ハンドルの切替ボタン。

 

■MTモード:
クラッチとシフトペダルの操作からライダーを解放し、MT車と同等以上にスムーズかつ素早いギアチェンジを可能に。アクセルを開けたままシフトレバーを操作するだけで、エンジン性能を最大限に生かした爽快な加速が得られる。また、変速ショック抑制によるコーナリング中の安定感向上、シフトペダル操作不要による下半身でのホールド感向上、ライディングポジションの自由度向上などにも貢献する。

 

■ATモード:
車速やアクセル開度に応じて自動的に最適なギアが選択されるため、ライダーはアクセルとブレーキ操作に集中できる。これにより、頻繁なギアチェンジが必要だった市街地走行や、ロングツーリングなどでのライダーの負担が大幅に軽減される。

 

(3)軽量・スリム・コンパクトなユニット

ベース車両のMT変速機構に、シフト操作を行うシフトアクチェーターとクラッチ操作を行うクラッチアクチュエーターなどを搭載した基本構成のユニット重量は約2.8kg。軽量かつスリム・コンパクトな設計で、ベース車両本来のスタイリングやハンドリングへの影響を最小限に抑えた。

 

Y-AMT搭載レイアウト(*2)(左がシフトアクチュエーターで右がクラッチアクチュエーター)。 Y-AMT搭載レイアウト(*2)(左:シフトアクチュエーター。右:クラッチアクチュエーター)。

 

※1/※2:画像はCGによるイメージであるため仕様が一部異なる場合がある。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。