両社で半導体製造の共同研究開発センターをドイツ国内に設立
ウルフスピード(WOLF/Wolfspeed, Inc.)とZFは2月1日、産業・エネルギー用途の先端半導体開発と製造を目的に戦略的パートナーシップを締結した。( 坂上 賢治 )
これには、ウルフスピードによる独国内で建設予定の200mmシリコンカーバイドウェーハ製造拠点の実現に加え、Eモビリティと再生可能エネルギーシステムの実現を視野とした当地に於けるイノベーションラボの設置に係るZFの大型投資も含まれる。
ウルフスピードとZFによる半導体拠点設置の予定地域と想定映像
ウルフスピードは独・ザールランド州ザールルイ地区のエンスドルフに、世界最先端の200mmウェーハ製造工場を建設する。一方ZFは、ウルフスピードの普通株式取得による数億ドル規模の投資を行い新工場建設を支援する。
同投資によりZFは当該工場の少数株主となり、新工場全体の運用と管理権限はウルフスピードに帰属する。なお両社は、シリコンカーバイドインバーターを用いた産業界をリードする高効率電動コンポ開発のための戦略的パートナーシップを2019年に発表済みであり、今発表は更なる次世代イノベーションに係る開拓姿勢を示している。
つまり同コラボレーションが担う最終目的は、半導体チップからシステム実現までのバリューチェーン全域を網羅するイノベーションを開発する事にある。
それゆえ共同設置の研究開発センターでは、全てのモビリティ区分(消費者、商業、農業、産業用車両、産業用および再生可能エネルギー市場)の各要件を満たすイノベーションの実現を目指す。
より具体的には、半導体デバイスの高効率性の追求、それに伴う電力密度の向上、電動ソリューションの高性能化などの飛躍的進化を視野に据えている。
但し、これらはマイクロエレクトロニクスと通信技術のフレームワークのための「欧州共通利益の重要プロジェクト(IPCEI:Important Projects of Common European Interest)」の一部として位置付けられており、欧州委員会の補助金許諾の認可を得て実行される運びだ。
両社の取り組みが欧州に於ける半導体に係る戦略目標を後押しする
ZFのCEOを務めるホルガー・クライン博士は「この取組みは、欧州の産業の変革に向けた大きな取り組みです。これらは欧州に於ける半導体の供給回復力を強化し、同時に欧州グリーンディールと「デジタル化の10年(Digital Decade)」戦略目標を後押しする事になるでしょう」と述べた。
ZF・CEOのホルガー・クライン博士
対してウルフスピードの代表取締役兼CEOのグレッグ・ロウ氏は「私たちは互いに強力なパートナーを見つけました。
ウルフスピードの代表取締役兼CEOのグレッグ・ロウ氏
これによりZFは電動モビリティ向け部品の量産化をリードし、シリコンカーバイドシステムとパワーデバイスのイノベーションを加速させるための知見を得る事になるでしょう。
またこのパートナーシップは、半導体技術に係る欧州の世界的影響力を高め、欧州全域の躍進を後押しする事になると確信しています」と語った。
更にZF取締役会メンバーのシュテファン・フォン・シュックマン氏は「ウルフスピードには35年以上に亘るシリコンカーバイド技術があり、ZFには乗用車・商用車に関わる基礎技術から建設機器、風力発電、産業用途に至るまで多様なシステム分野での深い知見があります。
ZF取締役会メンバーのシュテファン・フォン・シュックマン氏
つまり両社は、パワーエレクトロニクスと同システムアプリケーション分野で世界でも類を見ない専門知識を持ち併せているのです。
従って今回の戦略的パートナーシップは、製造工場と研究開発センターの緊密な協力を踏まえ、今の最先端技術を超越する画期的なイノベーションを、欧州の利益のために生み出す事になるでしょう」と結んでいた。