ボルボ・カーズは11月19日(現地時間)、最新のゲーム技術を活用した画期的な複合現実シミュレーターを使用していると明らかにした。
ボルボ・カーズのエンジニアが「究極のドライビングシミュレーター」と呼ぶこのシミュレーターは、微調整可能な運転席、触覚フィードバックのあるステアリングホイール、透き通ったバーチャルリアリティヘッドセットを備えたセットアップで、現実とシミュレーションの境界をシームレスにするというもの。
2019年、ボルボ・カーズはフィンランドのバーチャルおよびミックスリアリティの専門家であるVarjo(バリヨ)と共同で、複合現実ヘッドセットを装着したまま実車の運転を可能にした。現在、このコラボレーションは、最先端のリアルタイム3D開発プラットフォームであるUnity(ユーニティ)と全身触覚スーツメーカーのTeslasuit(テスラスーツ)にも拡大されている。
実物に酷似した高精細3Dグラフィックス、拡張現実感を生み出すヘッドセット、仮想世界からの触覚フィードバックを提供する全身スーツ型デバイス「テスラスーツ」を組み合わせ、身体の反応をモニタリングすることで、実際の道路で実際の車を運転しているかのように感じられるという。
このソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより、ボルボ・カーズのエンジニアは、新しい安全性、運転支援、自動運転機能の開発のために、人と車の相互作用に関する知見を蓄積できる。テストドライバーは、想像されるアクティブ・セーフティ、運転支援機能、今後の自動運転ユーザーインターフェース、将来のカーモデル、その他多くのシナリオに触れ、実際のテストコースの道路やテストラボで使用することができる。
ボルボのオープンイノベーションアリーナのユーザーエクスペリエンス担当シニアリーダーのキャスパー・ウィックマン氏によると、このシミュレーターにより、ボルボ・カーズでは安全な環境下で本物の人間の反応を研究することができ、実際のテストにかかる費用を何分の一かに抑えることができるとしている。
衝突回避技術のような自動車の安全システムを開発する場合、テストは非常に重要となるが、実際にシステムをテストするには危険が伴い、時間と費用もかかる。しかし、バーチャルシミュレーションや複合現実シミュレーションを使えば、物理的なプロトタイプを作ったり、複雑なシナリオを設定したりすることなく、実際の環境で完全に安全なテストが可能となる。同社では、この最先端の技術を使用することで、私たちは将来の安全な車づくりを模索していくとしている。
【ドライビングシュミレーターに使用された技術】
■Varjoミックスリアリティヘッドセット
ボルボ・カーズは2019年、Varjoと共同で、複合現実ヘッドセットを装着しながら実車を運転できるように設定。Varjo XR-1 Developer Editionヘッドセットは、ビデオカメラを使用して複合現実を可能にし、高精細な解像度で複合現実または仮想現実を提供する。Varjo XR-1 ヘッドセットを使用することで、Unityyで作成したオブジェクトや環境を現実世界とシームレスに統合する。
■テスラスーツ
ハプティック技術(触覚技術)は、力、振動、または運動を応用することで、仮想世界と対話する際の触覚体験を再現する。Teslasuiの先進的な全身触覚スーツを着用することで、ボルボのシミュレーション・テスターは、実際に危険な状況を体験することなく、衝突時に受けるであろう衝撃の小規模な再現を体感できる。ボルボのエンジニアは、ストレス下で筋肉、ストレスレベル、心拍数がどのように反応するかをテストでき、この研究結果をリスクの高い状況の回避と緩和を目的とした次世代の安全システムの開発に応用できる。
■Unityシミュレーションエンジン
ビデオゲーム開発の分野で、世界で最も人気のある開発プラットフォームのひとつであるUnity社の最新のリアルタイム3Dソフトウェアを使用して作成。ボルボ・カーズのエンジニアは、Unityを使用することで、シミュレーションで使用する仮想環境を作成し、その仮想環境に正確に設計されたボルボ車の3Dモデルを配置し、設計の評価ができるようになる。