NEXT MOBILITY

MENU

2024年10月22日【ケミカル】

米DOS、ブリヂストンの非化石燃料系合成ゴム開発を支援

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

ブリヂストン アメリカス インク(BSAM)は10月22日(米国テネシー州ナッシュビル発)、非化石燃料の合成ゴムに係る研究を支援する米国エネルギー省(DOE)産業効率・脱炭素局から、助成金を受領されたことを明らかにした。これは、温室効果ガスの排出を削減し国内環境を実質ゼロ経済に近づける取り組みに対して授与されたもの。( 坂上 賢治 )

 

これを受けてブリヂストンは、エタノールからブタジエンを生成する取り組みについて、持続可能かつ費用対効果の高いアプローチを推進するパイロットプラントの設計・構築・運営を担う。もとよりブタジエンは、今日のタイヤの主要成分で化石燃料から得られる合成ゴムの成分の中で、通常は第 1 位 (体積比) を占めている。

 

そこで、このブタジエンをエタノールから得る手段と、化石燃料からの変換から得る手段との経済的実現可能性を評価。結果、エタノールに変換の経済性が証明されれば、化石燃料から得るエタノールを、持続可能な手段から得るエタノールへと置き換えることができる。

 

ちなみにブリヂストンは去る2022年の4月、二酸化炭素をエネルギーや化学品に転換する独自の技術を有するLanzaTech NZ, Inc.(LanzaTech/ランザテック エヌジー インク)と使用済タイヤのリサイクル技術の開発で独占的パートナーシップを締結。使用済タイヤをリサイクルして原材料に「戻す」新たなビジネスモデルの構築も試行してきた。

 

こちらはLanzaTechの持つ炭素回収およびガス発酵技術を用いて、使用済タイヤから化学品のエタノールを製造。これを独自の微生物を用いた発酵技術を介してタイヤの材料の一つで合成ゴムの素原料となるブタジエンの生成へと繋げ、使用済タイヤの原材料から新品タイヤの原材料に転換する資源循環の実現を目指すもの。

 

なおエタノール抽出には、他にもバイオマスの糖質から抽出するバイオエタノールもあり、こうしたタイヤ原材料の取得の多様性を活かすことで、新規に高性能ゴム材料を開発する手段にも取り組んできている。

 

さて当該プロジェクトでは、エタノールをブタジエンに変換することの経済的および商業的実現の可能性、および炭素フットプリントを評価。生産したブタジエンをタイヤの原料として利用できるかどうかの更なる研究と確認に活用する予定だ。

 

ブリヂストンでコアポリマーサイエンス担当エグゼクティブディレクターを務めるマーク・スメール博士は、「今回のプロジェクトは、業界をより持続可能にするための科学技術の進歩に役立ちます。

 

当社のエンジニアはタイヤメーカーがより自然に優しい方法でブタジエンを得る方法について新たな可能性を模索し続けています。我々はこの新たなプロセスへの挑戦に心を躍らせており、この度のエネルギー省の支援に感謝しています」と述べた。

 

今回のプロジェクトでブリヂストンは、パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)と提携。同プロジェクトでは、PNNLとの共同研究の中から開発された独自の触媒システムを活用する。これにブリヂストンが持つプロセスエンジニアリングを組み合わせることで、エタノールをブタジエンに熱化学的に変換。同技術が商業的見地から持続的に実現可能かの探る構えだ。

 

仮にプロジェクトが成功すれば、タイヤ原材料生成の新たな可能性が生まれるため、中長期的な原材料調達の一手段として規模拡大を目指す。同プロジェクトは今月正式に開始され、少なくとも3年間に亘る計画となる。

 

1年目 – パイロットプラントの設計
2年目 – パイロットプラントの構築(オハイオ州アクロン)
3年目 – パイロットプラントのスタッフ配置と運営

 

ブリヂストンでは、この革新的な新たなプロセス技術の開発が自社の持続可能性を目指す取り組みを進める上で大きな一歩となり、仮に成功した暁には2050年までに世界中のタイヤに100%持続可能な原材料を使用するという同社の目標の達成に向けて前進することになるとしている。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。