トヨタシステムズ(TS)と日本アイ・ビー・エム(日本 IBM)は、アプリケーション開発、運用、モダナイゼーションの各工程で、生成AIを活用してコードや仕様書を生成する実証実験を行い開発効率の向上を確認。これを踏まえ実業務への適用開始を発表した。
さてまず上記の取り組みを詳しく説明する前に、トヨタグループ傘下のITソリューション・カンパニーであるトヨタシステムズは、トヨタグループのITソリューション企業として、ITで、街づくり、車と移動の快適な未来実現のため、顧客目線での提案と抜群の技術力を介して最適なITソリューションの提供を目指している。
対して日本IBMは、世界175カ国以上でビジネスを展開するIBMコーポレーションの日本法人だ。その実務は、基礎研究を筆頭に、ビジネス・コンサルティングから、ITシステムの構築、保守まで一貫したサービスの提供を通じて、顧客企業の技術変革やデジタル・トランスフォーメーションを支援している。
そんな両社は7月10日、ビジネスのためのAIおよびデータ・プラットフォームであるIBM watsonx (watsonx)を活用。COBOLやJavaのアプリケーション・プログラムの仕様書の情報を基にソースコードを生成する「コード生成」、既存ソースコードの情報をもとに仕様書を生成する「仕様書生成」等の実証実験を2023年12月から開始。
上記実証実験の結果、有識者関与率の削減や開発生産性向上に寄与する成果が得られたことから、2024年7月から実業務への適用を行っていくことに着手した。
ここで一旦、今日のアプリケーション・プログラムの世界を振り返ってみると、多くの企業では自社の基幹システムを維持する上で、旧来からのノウハウを受け継ぐテクノロジー継承者の育成や関連人材の確保が急がれる。
それらの裏を返すと、自社システムを熟知した有識者への依存体質という課題可決、また脈々と引き継がれてきた社内スキルの継承なども大きな課題となっている。
また今日の企業の基幹システムには、長きに亘る運用に次ぐ、更にそれを上書きする運用が繰り返された結果、古いままの仕様書や使われなくなったソースコードなどが混在し、システム改修やモダナイゼーションを加速化させる上での課題となっている。
実際、トヨタシステムズでも、COBOLの維持・改修に対応できる要員が不足し、ワークロードが逼迫していることから、業務アプリケーションの知見やノウハウの継承、最新技術の獲得が急がれていた。
そこで、トヨタシステムズと日本IBMの2社は、「IT変革のためのAIソリューション」を活用し、アプリケーション開発から運用、モダナイゼーションに生成AIを適用し、有識者依存からの脱却と生産性向上による余力の創出に取り組んだ。
これを踏まえた現場に於ける実証実験で、トヨタシステムズは、複数の開発部門をまたがる生成AI検証チームを編成して、実際の開発案件を題材とした「コード生成」および「仕様書生成」の実証実験を推進した。
一方の日本IBMは、大規模かつ複雑なシステム・アーキテクチャーの構築と運用やAIを含む先進テクノロジーを活用したIT変革の推進の実績を踏まえ、当該の実証実験を支援。
こうした双方の実証実験の結果、有識者関与率の削減や開発生産性向上に寄与する成果が得られた他、生成AIを最新技術を活用することで若手社員がレガシー言語にも興味を持ち、積極的に活動に取り組むという効果も確認できたという。
こうした成果を受けて両者は、有識者の知見の生成AIの大規模言語モデル(LLM)への移植、プロンプト・チューニングによる出力結果の精度向上、トヨタ独自の開発標準書式での仕様書の出力を進めた。
その手順は、仕様書からの「コード生成」とソースコード情報からの「仕様書生成」を2024年7月から実業務に適用し、アプリケーション開発の新しい業務プロセスの検討を進めていくもの。
加えて、ユーザーの利便性を高めるために、生成AIとその他の技術とを統合するオーケストレーターを活用して出力結果の精度を高め、更なる生産性向上も目指す。
また将来的には、生成AIの活用による更なる省人化、自動化を進め、大規模基幹システムのモダナイゼーションの促進、ひいてはシステム開発を抜本的に見直し、新たなアプリケーション開発のあり方を含むデジタル・トランスフォーメーション(DX)の実現にむけて、共創していくと結んでいる。