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2018年7月25日【テクノロジー】

トヨタ自動車、試作型スープラの走りを英イベントで初披露

NEXT MOBILITY編集部

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トヨタ自動車は、7月12日から15日に英国・グッドウッドで開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(Goodwood Festival of Speed)」に参加し、開発中の「スープラ」試作車の走行を公の場で初めて披露した。

 

 

「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」は、今年25周年を迎えた、世界各国のレーシングカーやオートバイなどが走行する、毎年約20万人が集まるモータースポーツイベント。

 

開発責任者の多田哲哉氏と、ニュルブルクリンク24時間耐久レースにも出場経験のあるヘルヴィッヒ・ダーネンス テストドライバーが運転する「スープラ」の試作車は、グッドウッドで最も注目される「ヒルクライム」で、1.9kmの坂道を走行した。

 

 

ステアリングを握った多田は、「スープラのエンジニアとして、どういう運転をすればいい音が出るか一番良く知っています。アクセルオフとブレーキングとの組み合わせで異なる音が出るようになっており、色々な音を楽しんでいただけたと思います。

 

直列6気筒エンジンはバランスの良いエンジンで、その特性を活かすドライブフィールにもこだわっています。ドライバーの感性に訴えるクルマとして、みなさまにお届けできることを楽しみにしています」と語った。

 

 

トヨタの歴史で長らくフラッグシップスポーツカーとして親しまれた「スープラ」は、2002年に生産を中止していたが、今年3月、ジュネーブ国際自動車ショーでレーシング仕様のコンセプトモデル「GR Supra Racing Concept」として復活。

 

伝統を受け継ぎ直列6気筒エンジンとFRレイアウトを採用した「スープラ」は、来年の前半から順次、世界各国で販売される予定だ。

[チーフエンジニア インタビュー]

 

グッドウッドで、多田チーフエンジニアが「スープラ」試作車の走行について語った。(聞き手:英国トヨタ広報 ジェームズ・クラーク)

 

Q:「スープラ」の開発にどのくらいの期間携わっていますか。

 

多田:2012年からなので、ほぼ6年です。長いですね。通常の開発サイクルは3年ですが、このプロジェクトは絶対に成功しなければならなかったため、時間をかけました。

 

Q:長い開発期間を経て、グッドウッドでプロトタイプを走らせたお気持ちは。

 

多田:ここまで来られて、非常に嬉しい。ただそれだけです。このクルマを英国でお披露目することができて、人生最良の日です。グッドウッドのヒルクライムコースを運転したのは、とてもエキサイティングな経験でした。

 

Q:(過去に担当した)「GT86」(※)について以前、「パッション・プロジェクト」と紹介されました。「スープラ」のプロジェクトも同じような感覚だったのでしょうか。(※「86」は、英国では「GT86」として販売)

 

多田:もちろんです。たくさんの情熱が詰まっています。「GT86」が出る前、トヨタは長い間スポーツカーをつくって来なかったので、キャッチアップすることが多くありました。しかし、「スープラ」の開発では「GT86」での経験があったので、ずっと高いレベルから始めることができました。

 

 

Q:「GT86」のお兄さんのようなクルマを生み出そうとしましたか。

 

多田:(豊田)章男さんは、会社として、「GT86」を次男とする3兄弟を出したいと常に言っていました。なので、「スープラ」を圧倒的に優れたものにしようと考えました。

 

例えば、「GT86」は非常に重心が低いのですが、「スープラ」ではさらに低くし、ボディ剛性は「GT86」の2倍を目指しました。実際、カーボンファイバーを使わずに(レクサスの)LFAと同じ剛性レベルを達成したので、より手ごろな価格とすることができそうです。それが最も難しかったですね。

 

新型「スープラ」はトレッドが広く、ホイールベースが「GT86」より短いことに多くの人が気づき、驚かれたかもしれません。でもこのクルマのホイールベースとトレッドは、明確な比率を念頭において開発しており、私たちが目指していたバランスに到達できたと思っています。

 

グッドウッドのヒルクライムのスタートを待つ車列の中で、ダーネンス(「スープラ」のテストドライバー)と成功を喜びました。周りにいる多くのスーパーカーに比べ、おそらく私たちのクルマが一番安いだろうと思っていましたが、一番大きな歓声を得ていたように感じました。

 

 

Q:新型「スープラ」はハードコアなスープラファンにどう受け入れられると思いますか。

 

多田:彼らの反応を楽しみにしています。「GT86」を出した時を思い出してみると、「AE86」の一部のオーナーの方々はご自分の車への愛着も強く、なかなか受け入れていただけませんでした。

 

ですから、このクルマでも似たようなことになるかもしれません。単に新車を出すだけでは納得しない、旧世代のハードコアのオーナーたちが存在することは分かっています。

 

それでも私はオープンな姿勢で、歴代「スープラ」へのリスペクトを見せたいと思っています。その代わり彼らには、受け入れるのに少し時間がかかるとしても、新モデルの全てを素直に見てほしいと思います。

 

 

Q:これが5世代目の「スープラ」となるので、スープラファンに知ってほしい5つのことを教えていただけますか。

 

多田:まず初めに、今までの「スープラ」は全て直列6気筒エンジンを搭載していました。新型でももちろん搭載します。

 

2つ目に、歴代「スープラ」は全てFRでした。これも継承します。

 

3つ目は、デザイン。A80(4代目「スープラ」)からヒントを得て、もちろん同じではありませんが、その要素を取り入れたことで、新型をぱっと見て「スープラ」だと分かるデザインにしました。

 

4つ目は、各世代を振り返ると、それぞれの時代で存在感を見せつけてきました。新型でもそれを実現したいと思っています。来年発売されたら、このクラスで一番fun-to-driveなクルマになると信じています。

 

現在、自動車業界では自動運転や電動化やAIが話題の中心です。規制が厳しくなることで、エモーショナルなクルマをつくることがどんどん難しくなっています。ですから、5つ目としては、新型「スープラ」が純粋なガソリンエンジンによる官能的な音を楽しめる最後のトヨタ車になるのではないかと思っています。

 

以上が私の5つのポイントです。久々の発売となる「スープラ」をみなさんに楽しんでいただきたいと思っています。そして30年後に再会して、どんなにいいクルマだったか話しあえるといいですね。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。