豊田通商は5月26日、グループ会社のCFAO SAS(以下「CFAO」)と、ケニアで保険会社向けにテレマティクス保険システムを提供するAiCare Group, Inc.(アイケア・グループ・インク:以下「アイケア」)へ、出資を決定したと発表した。
なお、この出資は2019年10月に共同で設立したMobility 54 Investment SAS(以下「モビリティ54」)を通じ、新株予約権付転換社債の引き受けにより実施される。
1.背景
ケニアでは自動車保険への加入が義務づけられており、約300万台の車両に自動車保険が付保されている。保険料率の設定は、ドライバーの運転特性にかかわらず、車両価値を基準に、概ね一律の保険料が賦課される状況である。
そのため、優良ドライバーは、自身の運転特性や事故リスクに対して相対的に高い保険料が設定されている。また、ドライバーの運転特性に関係のない一律の保険料設定は、ドライバーが安全運転を行う動機付けとしては機能せず、交通事故の抑止効果も低くなる。その結果、自動車保険は、保険会社にとって他の保険商品に比べてリスクの高い商品となり、積極的な事業拡大を妨げる要因となっている。
こうした課題はアフリカ諸国でも同様に見受けられる。個々の車両の走行距離やドライバーの運転特性に関する情報をリアルタイムに取得し、ドライバーごとに最適化された自動車保険の提供が可能になれば、アフリカの自動車保険産業の変革や交通事故低減につながると期待されている。
2.アイケアについて
アイケアは、AI・機械学習技術を専門的に研究してきた創業者のもと、自動車の走行データや運転挙動データを用いて、自動車保険商品向けにドライバーの事故リスクを算定し、リスクスコアを数値化する技術を自社開発している。保険会社は、一から技術開発をする必要がなく、同スコアを用いて、各社独自のテレマティクス自動車保険商品を提供することが可能となる。
また、アイケアのシステムは、路面舗装状態に起因する振動や急ハンドルの感知は事故リスク算出データから除外するなど、アフリカの独特な道路環境や自動車の使われ方に合わせてデータ分析をしており、現地の実態に即した、適切な事故リスクの算出が可能となる。
3.アイケアへの出資・協業を通じた今後の事業展開
アイケアへの出資は、アフリカの自動車保険産業において、テレマティクス保険を普及・浸透させることを通じて、ドライバーにより上質な保険サービスを提供することを目的としている。また、豊田通商グループのアフリカ域内ネットワークを最大限活用し、アイケアのテレマティクス保険システムを、ケニア以外の国・地域へ積極的に展開していく。
また、テレマティクス保険は、今後アフリカにおいて想定されるコネクティッド事業との親和性も高く、将来的には同事業との連携も図りながら、アフリカの安心安全なモビリティ社会創造を目指していくとしている。
アイケアのシステムイメージ図