トヨタ紡織はジャパンモビリティショー 2023(JMS2023/一般公開日10月28日~11月5日)に出展中だ。今回はトヨタ紡織が考える未来のモビリティライフを展示テーマとし、自動運転を想定した近未来の移動空間や電動化対応製品などを展示している。また10月26日にはプレスブリーフィングも実施した。
ブリーフィングには、白柳正義社長とリチャード チャンCBOが登壇。自社のビジョン並びに今展示品のMaaSシェアライド空間コンセプト「MX221」、シートがユーザーにあわせて自在に変形するコンセプトシートモデル「XODY2.0」、電動化に対応したサーマルコンフォートシートなどを披露した。
そんな同社の多様な出展のなかで、今回は特にEVの室内温度上昇を防ぐ「バイオミメティクス遮熱表皮」を紹介したい。
一般に夏場のみならず春先や秋口に於いても、室内の温度上昇は、ドライビング空間を適温に保つため空調の力を得なければならず、今後、車両が電動化していくなかで、室温調整のエネルギー消費は大きな課題だ。
実際、内装の表面温度は時に80℃辺りまで上昇する場合もあり、その分、空調に要するエネルギーが増えてしまう。
今回、同社が提案する「バイオミメティクス遮熱表皮」は、可視光や近赤外線を吸収せず拡散反射する仕組みとなっている。
そのヒントとなったのは、灼熱の砂漠で昆虫がどのように体温を抑えて生息しているかのメカニズムを研究したことにあるという。
そもそも昆虫も、人と同じく外殻内の臓器はタンパク質で構成されているため、体内温度が高温になると最終的には死に至る。
実際、気温が摂氏70度に達することもあるサハラ砂漠などに生息する昆虫は、独特の形状をした体毛によって太陽光や熱を制御し、酷暑を生き延びていることが明らかになったという。例えば砂漠に巣穴を掘るアリであれば、その体温を常に自身の限界温度である53.6度以下に保たなければならない。
そこで背中と体側の横断面を三角形をした体毛に覆われる構造として、この毛が広い範囲の太陽光スペクトル(可視光線および近赤外線の波長領域)の反射率を変化させ、過剰な熱を熱放射を使って体外へ排出するという。
ちなみにこの冷却効果は晴天の炎天下で機能し、体毛を持たない場合と比べ体温を約5~10度低下させる効果がある。今回、同社が出展した「バイオミメティクス遮熱表皮」は、その構造を模倣。表皮上に微細な毛羽を持つようバイオミメティクス(生物模倣)技術によって開発したと説明する。
従って同表皮を車室内の内装材に張ると、外から差し込んでくる直射日光が当たっても、その熱自体を跳ね返して温度上昇が抑える。疑問なのは、その跳ね返した熱自体の行方にある。当然、跳ね返した熱は同じ室内空間に留まる筈だからだ。
しかし反射熱は、音の音調効果と同じく跳ね返された後、空中を漂うなかで減衰されるという。従って車室内の喰空間が、直射日光熱と同じ熱量で、車室内が温められることを避けられるという。トヨタ紡織の出展場所:西4ホール、ブース番号 W4201