NEXT MOBILITY

MENU

2018年12月18日【テクノロジー】

トヨタ5大陸走破プロジェクト、アフリカを経て最後の大陸アジアへ

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

トヨタ自動車の「5大陸走破プロジェクト」が、先月、南アフリカのダーバン工場でアフリカ大陸走破のゴールを迎えた。

 

これにより、2014年に始動した同プロジェクトは、4大陸を走破。5大陸最後となるアジア大陸に向け、2019年春、中東を出発する。

 

 

 

アフリカ大陸走破では、2か月間に渡り、スズキ、日野自動車、トヨタ車体のメンバーを含む76名が1万600kmを走破。

 

参加メンバーは、多種多様なアフリカ特有の道を走り、過酷な車両の使用環境を感じ、また自動車ユーザーの声を直に聞くことで、アフリカで求められる「もっといいクルマ」について1人1人が考え、意見を交わしながらクルマと向き合う時間を過ごしたと云う。

 

 

そこでは、深い凸凹、尖った石、波状路、砂漠等の様々な過酷な未舗装路の走行を通じ、信頼性、耐久性、乗り心地の大切さを身を持って経験。

 

また、舗装路においても、長い直線、頻繁に道路を横断する動物、急に現れる大きなポットホール(*1)やスピードブレーカー(*2)、多くの過積載大型トラックの追い抜きといった特殊な環境での走行を通じて、ブレーキ性能、高速安定性、パワー・トルクの重要性も再認識したと云う。

 

 

5大陸走破プロジェクトは、TOYOTA GAZOO Racingの一環(*3)として、グローバルトヨタ及び関連会社の従業員が自らステアリングを握り、世界中の自動車ユーザーが日常的に使用する道を現地現物で走行。

 

世界の道を知り、ユーザーの声を聞き、各国の文化に触れ、多くの課題・困難にチームで解決策を見出す経験の中で、デスクワークやテストコースでは得られない「もっといいクルマづくり」に向けたセンサーを磨く、人材育成を目的としている。

 

 

2014年のオーストラリア大陸走破を皮切りに、2015年北米・2016年南米のアメリカ大陸、2017年ヨーロッパ大陸、2018年アフリカ大陸走破を通じ、延べ556人の国内外メンバーが、9万9,600kmを399日かけて走破。

 

参加メンバーからは、「車両の評価項目の見直しに反映し、日々の業務でも生かしている」、「クルマづくりへの“誇り”と“責任”を再確認できた」、「もっといいクルマづくりには、自機能ばかりにとらわれず、クルマ全体で考えなければならないことが解った」、「自分の感覚とお客様の感じ方には乖離がある事を改めて感じ、今まで以上にお客様の声に意識を向けて素直に見つめ直すきっかけになった」など、現地現物で得られた知見をもとに、自らがトヨタのもっといいクルマづくりの原動力になるという意欲が芽生えてきていると云う。

 

5大陸走破プロジェクトは、2019年春、5大陸最後のアジア大陸走破に向け、中東を出発する。

 

*1:アスファルト道路の表層がはがれて出来る穴、凹み。

*2:強制的にクルマを減速させるため、道路にわざと凸をつくったもの。
*3:クルマを極限状態に置く「レース」への挑戦を通じて「人づくり」を行ってきており、モータースポーツ活動そのものが「もっといいクルマづくり」の主軸であるとする考え方。

 

 

5大陸走破プロジェクトのアフリカ大陸の走破に際して、トヨタ自動車・代表取締役社長の豊田章男 氏は、以下のように語っている。

 

『本年のアフリカ大陸走破においても、メンバーが、安全に健康に戻ってくることができ、安心しました。走破から戻った皆さん、お疲れ様でした。無事に戻ってきてくれて、ありがとう。

 

この5大陸走破プロジェクトは、『もっといいクルマをつくるトヨタになりたい。そのためには、もっと、世界の道を知る必要がある…』という想いで2014年からスタートしました。

 

当初は、技術部門が中心となるメンバーでスタートした活動でしたが、5年間、走り続ける中で、営業、調達、人事、経理といった様々な部署も参加するようになり、若手社員の参加者も増えてまいりました。現地の事業体からの参加者も増え、『もっといいクルマづくり』に真剣に向き合う輪が、部署、役職、役割、そして国籍など、あらゆる垣根を越えて広がったと実感しています。

 

私自身も、このプロジェクトの一環として、それぞれの大陸の道を走ってきました。今年は、トヨタ車体(株)のダカールラリー参加チーム『チームランドクルーザー』の走行テストに参画させていただき、モロッコにおいて、初めて砂漠を走る経験をさせていただきました。

 

砂漠の真ん中では、何度もスタックし、前にも後ろにも進まず、アクセルを踏めば、更にランドクルーザーは砂の中に沈んでいく、という経験もしました。チームメンバーに救出してもらい、再び走り出すことが出来ましたが、その時、強く感じたことは『クルマは、命を運ぶものだ』ということです。

 

『ここで止まったら、ここで壊れたら、命が失われてしまうこともある…』走破から戻ってきたメンバー達も、アフリカの地で様々な道を走り、同じようにクルマの大切さを感じたと報告してくれました。

 

どこの部署で、どんな役割であろうと、トヨタで働くことのミッションは、もっといいクルマをつくることです。

 

社長であっても、新入社員であっても、技術職であっても、技能職であっても、事務職であっても、そこに垣根はなく、ミッションに変わりはありません。

 

今まで、普通にやってきた各々の業務を、これからはアフリカの道での経験を想像しながら、ひとつひとつやってみる…そうすることで、ひとつひとつの仕事が、本当にお客様に笑顔になって頂けるもっといいクルマづくりのための、プロの仕事に近づいていけると思います。

 

そして、走破経験をした人の仕事が変わっていけば、その周りも少しずつ変わっていきます。地道かもしれませんが、そうしてもっといいクルマをつくるトヨタに進化していけると信じています。メンバーの皆さん、よろしくお願いします。期待しています。

 

今回は、私どもトヨタ自動車だけではなく、スズキ、日野自動車、トヨタ車体のメンバーとも一緒に走りました。

 

『お客様に笑顔になっていただける“もっといいクルマ”をつくる。そして、モビリティの未来を創っていく』その想いを共有する仲間の皆さまです。もちろん、そこにも垣根はありません。

 

一緒に、道の厳しさを知り、お客様の声を聞いてきました。この経験が、未来に繋がります。共に、もっといいクルマづくりを進めていきましょう。そして、一人でも多くのお客様に笑顔になっていただける未来を目指しましょう。』

[過去の走破概要]

 

<年、大陸、距離、日数、特徴>

– 2014、オーストラリア、約20,000km、72日間、世界の様々な道が凝縮されていると言われる砂漠や悪路などの過酷な道を走破。

 

– 2015、北米(アメリカ)、約28,000km、109日間、夏季と冬季に分け、デスバレーなどの酷暑地や、アラスカ・カナダの寒冷地の厳しい環境下を走破。

 

– 2016、南米(アメリカ)、約20,000km、84日間、熱帯の泥濘路や、標高5,640mの高地山岳路、砂丘などを走破。

 

– 2017、ヨーロッパ、約21,000km、85日間、自動車発祥の地で欧州車と比較し、走行データの収集・分析を強化。夏季と冬季に分け、高速道路、長距離移動での走破。

 

– 2018、アフリカ、約10,600km、49日間、一般生活道路に加え、未舗装路、高地山岳路、サファリ、砂漠などのアフリカ特有の道。

 

 

■(TOYOTA GAZOO Racing)TOYOTA 5大陸走破・アフリカ:https://toyotagazooracing.com/pages/special/fivecontinentsdrive/africa/

 

■(TOYOTA GAZOO Racing)TOYOTA 5大陸走破:https://toyotagazooracing.com/pages/special/fivecontinentsdrive/

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。