豊田合成は、医療機器を開発する早稲田大学発のベンチャー企業のイービーエム社(※1)と、電気で動く次世代ゴムの「e-Rubber」で心臓の鼓動を再現する手術訓練シミュレータ「SupeR BEAT」を共同開発し、発売を開始した。
医療現場では手術の高度化に伴って安全確保の重要性が増し、手術訓練シミュレータの需要が高まっていると云う。特に、一定の研修を履修した医師を専門医として認める心臓血管外科専門医制度では、シミュレータなどでのトレーニングが義務化。
こうした背景から、豊田合成とイービーエム社は、心臓外科医の手技向上に向け実践的なシミュレータの開発と普及を目指し、2017年11月から連携してきた。
今回開発したSupeR BEATは、電圧のオン・オフに速やかに反応して伸縮するe-Rubberを用いることで、手術中の心拍を忠実に再現。
搭載したソフトウェアで数十通りの拍動パターンを組み合わせ、不整脈による複雑な心拍や、幼児の早い心拍など、様々な状況を想定した動作が可能で、実際の冠動脈バイパス手術(※2)に極めて近いストレスフルな手術環境も再現できると云う。
豊田合成とイービーエム社は、今後も医工連携の取り組みを推進(※3)し、医療の発展に貢献していくとしている。
※1:心臓外科領域を中心に手術訓練シミュレータ・人工血管などの開発やトレーニングシステムの構築を国内外で手がける。国内では心臓血管外科施設の約7割で採用され、米国・欧州・アジア諸国への販売実績も持つ。自社の手技トレーニングセンター「FIST」(福島市)を中心に、トレーニングの国際標準化を目指して、ハードとソフトの両面から医師たちと緊密に連携し開発を進めている。
※2:心臓の動脈硬化などで血流(酸素供給)が滞る「狭心症」や「心筋梗塞」を治す手術で、狭くなった動脈に別の動脈をつないで血流を確保する。患者の負担軽減のため、人工心肺を使わず心臓を動かしたまま手術する「オフポンプ式」が増えており、拍動する心筋表面の直径2ミリメートルの動脈を縫い合わせるため、高度な手技が不可欠となる。
※3:微妙な圧力を感知できる「e-Rubberセンサ」を鑷子(せっし:医療用ピンセット)に装着して、手術中の力加減のデータを収集・分析するなど、今後も手技トレーニングの更なる進化を図っていく。
■イービーエム株式会社:https://ebmc.jp/